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りりなの midnight Circus

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 スコープに表示される値には、その移動量はまだ不足していると表示されているが、エルンストはそれを無視した。

「捉えた」

 エルンストは答えた。

「よし、いつでも撃て」

 ニコルも答えた。この任務を受領した時点で、彼らはリカルドの殺害許可を与えられている。通常ならいちいち司令部に確認を取らなくてはならないこともこの環境においては省略できる。

(あんたには恨みはないが、あんたが生きていると何かと不便な連中が居るらしい。黙って死んでくれ)

 情け容赦なく。という言葉が最も当てはまるだろう。エルンストは、ライフルの引き金を、まるでスイッチと言っても良いような形状の引き金を正に文字通り押した。
 火薬の炸裂音はしない。そもそもこのライフルは火薬を必要としない。
 搭載された発射体である円錐状の特殊合金は、発射体勢を整えた瞬間に薬室内で宙に浮き、高速で回転を始める。そして、引き金を引くことでそれが加速され、マズルより投射される頃にはおよそ音速の5倍近い速度までたっする。
 まるでそれはレールガンのような形ではあるが、その飛翔体の加速には魔法技術が使用されている。
 音速の五倍で飛翔する発射体は、2.3km程度であれば僅か2秒足らずで駆け抜ける。その飛翔体が纏う衝撃波はその斜線上にある木の葉や塵粒子をはねとばし、僅かに遅れて甲高い衝撃音が響き渡る。
 銃床から殆ど反動を感じず、ライフルも跳ね上がらない。エルンストはそのままリカルドの命の行方を見守った。2秒後、リカルドの身体がはじけ飛んだ。
 体内に侵入した弾頭はその速度故に殆ど変形することなく人体を貫通するはずだが、それが纏う衝撃波によって人体はいたく傷つけられ、弾頭の芯に刻まれた『エクスプロード』の魔法が侵入と共に体内で小爆発を起こす。
 身体の中身を周囲にまき散らしながら、その場に倒れ込んだそれを見て、エルンストはそれがまるで使い古したボロ布のように見えた。

「ターゲット排除確認。任務完了……。ようやくこれで帰れるな」

 ふう、と言ってニコルは双眼鏡から目を外すといつものような首をコキコキとさせて立ち上がろうとした。
 エルンストもスコープから目を外そうとライフルを持ち上げるが、その視界の隅になにやら不吉なものが映ったような気がしてすぐに構え直した。

「何だ?」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪