りりなの midnight Circus
クロノは時空管理局本局の出世頭として順調にキャリアを積んでいる様子だった。執務提督官として多くの事件を影ながら解決に導き、仲間達を温かく支援する彼は今となっては民放番組にもよく顔を出すようになった。
そんな多忙を極める兄が、その合間を縫ってわざわざ紙に書かれた(多分、これは彼女の母親であるリンディ・ハラオウンの差し金だなとフェイトは推測した)手紙を書いてくれたのだから、今度の休日は久しぶりに親元に帰省してもいいと考えるようになった。
よく思い出すと、なのはもヴィヴィオもここしばらくの間、リンディやクロ、と義姉のエイミィとその子供達と会っていなかった。
(なのはとヴィヴィオも誘って、帰るのもいいな。予定が合えばだけど)
フェイトは次の休日が何時になるか、頭の中で目算しながら艦橋にたどり着いた。
「あ、艦長。ようこそ」
艦橋では艦長席の側に立つシャーリーがフェイトを迎え入れた。
「後どれぐらいで着く?」
フェイトはその席に座り、彼女にお茶を差し出した下士官の男に一言例を言ってそれに口をつける。
「もうまもなくです、既に肉眼で確認できるほどの距離ですので」
フェイトは正面にでかでかとそびえるモニターに目を移し、そのセンターに映し出された奇妙な形をした構造体が徐々に大きくなっていくことを確認した。
時空航行艦、時空管理局本局警備部所属、L級巡洋警備艦〈ホークアイ〉は2週間の航海任務を終え、本局へと戻ってきた。
フェイトは自分の艦がドックに接舷され停泊準備が整ったことを確認し、就労人員以外の一時下艦を許可した。
アースラ型L級巡洋警備艦の後継艦として新造された、ラーバナ型L級巡洋警備艦は前型に比べると幾分かコンパクトな様相を示していた。
実際、アースラもその内部の様子に比べ外観は小さいイメージを抱いていたのだが、ラーバナ型はその更に上を行く小ささだとフェイトは感じていた。
フェイトはすでに、航海日誌を元にして作成した報告書を先任執務官であるシャーリーと共に司令部に提出し終えていた。
シャーリーはどうやら友人との待ち合わせがあったらしく、報告書を提出し終えた後すぐに別れ、今はおそらく本局の上部に位置するカフェでお茶などを飲んでいる頃だろう。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪