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りりなの midnight Circus

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 フェイトは驚きつつも、懐かしい顔ぶれに破顔し、
「久しぶり、アグリゲット。元気そう」
「先輩は少しお疲れのように見えますね」
 フェイトとアグリゲットはそうして久方ぶりの再会を祝いあった。
「そうかな、自分ではそうでもないと思うけど」
「得てしてそういうことは、自分では分からないものです。これから航海ですか?」
「いいえ、今戻ってきた所」
 フェイトはそういって自分の艦を見下ろす。
 その透明な高強度樹脂の窓の外には先程まで慌ただしく動いていたロボットアームの姿が消えていた。
『安全点検終了。スタッフは最終確認の後撤収せよ』
 ドックに整備責任者と思われるもののアナウンスが入り、〈ホークアイ〉の整備が終了したことを知らせた。
「なるほど。点検中でしたか。なら、今はお暇と言うことですか?」
 アグリゲットもその様子を知り、新造艦〈ホークアイ〉のその優美な船体を眺めた。船体前部に突き出された二門のアルカンシェルの発射口を包み込むように曲線美にあふれる船体がそれを支えている。
 最終点検の一環としてエンジンにも火が入れられ、アイドリング状態となったそれは固定柵から船体が飛び出さない程度にノズルを開いた。
 そこから見えるものは地上の航空機のような赤い炎ではなく、人の目では移すことの出来ない特殊な微粒子が放出されている。いや、微粒子という表現にも語弊がある。
 そもそも時空間の海ではむき出しの通常物質は存在できないとされていた。それでも時空航行船がそこに存在できるのには、多次元空間上に三次元、時間を含めば四次元のディメンションを船体周囲に固定させる事が出来るからに他ならない。
 その技術は、残念ながらフェイトにとっては複雑すぎて理解できなかったが、多くの船乗り、特別に勉強をしている技術者達を除くと、殆どのものが理解していないだろう。
 船の周囲に固定化させた四次元空間内で幾らブースターを吹かして、その反動を得たとしても移動できるのはその四次元空間内に限定されてしまう。確かに、敵と接触し、その空間を共有することで戦闘をする場合はそういったものも必要となるが、多次元空間上を移動するには、多次元空間で存在できる物質を放出するしか方法が見つからなかったらしい。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪