りりなの midnight Circus
しかし、ここで自分が撃墜されれば残りの二人は事実上目を失うこととなる。おそらくあの二人のことだから、それでも何とか善戦するだろう。しかし、それでも攻撃の精細は欠くことになるかも知れない。二人の技能は信頼しているが、包囲され大規模飽和攻撃を加えられればさすがに撃墜は免れないはずだ。
戦闘開始から既に30分が経過していた。この訓練は、自分たちがCPの設定した敵の規定撃墜数を超えるか、40分以上持ちこたえる、もしくは撃墜されるまで続くだろう。
(随分と期待されたものだ)
視界の端で、再び増援を確認したエルンストはその数が5であることを確認した。先程のパターンから、CPは戦場に常に30〜40程のガジェットを常に配備させるようにシステムを設定しているように思える。
(まだ規定数には達していないと言うことか)
今出現したガジェットは、どうやら自分の方向へと向かいつつあるガジェットと合流するらしく、その速度をかなり早めている。
(俺一人ではさすがに6体同時に相手をするのは無理だ)
エルンストは、それを見てその場を撤収することを決めた。
エルンストは意識を集中し、周囲の環境の気配を探った。そして、その環境の雰囲気のパターンを読み取ると今度はその意識を内面へと移していき、自らの気配を環境へと溶け込ませる。
ひょっとすれば、CPのモニターには現在自分の光点が映っていないのではないか。エルンストはそう感じると、その気配を身に纏ったままビルの端へと移り、隣のビルへと跳躍し、何度かそれを繰り返すことで別のビル。先程のビルとは少しばかり低めのものの屋上へと身を移した。
締めたことにガジェットはその行動を把握し切れていないようだ。
本来彼がいるはずの場所になにもないとさとったガジェットはその場の周囲を索敵するようにその場に立ち止まってしまった。
エルンストにとってそれだけの隙があれば十分で、跳躍する前に仕掛けてきた罠を発動させる。
爆発音が鳴り響き、戦場にしばらくの間灰色の瓦礫と粉塵の雨が降り注ぐ。
それには相手の索敵機を混乱させるチャフのようなものも仕込んであったので、敵はさぞいい感じに混乱していることだろう。
見ると、その援護を受け、先程まで少々劣勢だったD1、D2の両名も今の一瞬で敵を撃破し尽くしてしまった。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪