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りりなの midnight Circus

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 戦場には目立った敵の光点はない。そして、エルンストがいまだに活動を続ける最後の一体を距離700離れたところで、自分のライフルを使って一撃で仕留めた。
「状況終了。D分隊、帰投せよ」
 エルンストは時計を見た、その表示を見る限り戦闘開始からまだ37分ほどしか経っていない。つまり、彼らは持ち時間が過ぎるまでにCPが設定した規定数をクリアしたと言うことだ。
「こちらD1了解」
「D2も了解だ」
「D3、了解」
 エルンストは状況終了と言われてもまだ油断なく周囲を警戒しつつ待機場へと進んでいった。
 その途中、彼と同じように付近を哨戒するD1とD2、なのはとヴィータと合流すると、エルンストはなのはの支援を受け、空中を飛行しつつ周囲を監視した。
「やったね、完璧だよ」
 なのはは心なしか先程の戦果を喜んでいる様子だった。
「あたしとなのはのタッグだぜ? 負けるはずねぇよ」
 ヴィータはまだエルンストが気に入らないのか、そのタッグの中にD3を含まずに言うが、この戦闘の勝利について最大の貢献者は他でもないエルンストだと言うことは理解していた。
 つまり、ただの可愛らしいやっかみである。
「お二人が完璧な行動をとっていただいたおかげです」
 エルンストの声には謙遜は含まれていなかった。それどころかなのはは少しだけ彼の口調に自嘲を感じ、あれっと思って下を飛ぶエルンストの表情を覗き込んだ。
 なのはの見立てでは彼の表情はまったく変わらないようにも見えたが、少しだけ不満な、どこか納得のいっていない様子も感じられたのだ。
「ねえ、エルンスト君。さっきの戦闘で何か不具合でもあった?」
 教導官を生業とするなのはにとってそれは第一に憂慮する事であり、自分としてはかなり良かった結果を不満に思う彼の意見を聞いておきたかった。
「いいえ、結果的には何の問題もありません。問題に思う、というよりは不満に思っているのは自分自身のことです。最後は上手く立ち回れなかった。それが口惜しい」
 なのはには彼の立ち回りはまったく問題のないように思えた。むしろ、あれは支援者であるエルンストを護衛仕切れなかった自分たちに問題があるのだと考えていたからだ。それでいて彼は思わぬトラップを仕掛け、ただの単体で6体ものガジェットを仕留めることに成功したのだ。これは、情報士としてはたぐいまれな快挙ではないかと思う。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪