りりなの midnight Circus
一応彼は階級の上では一等空尉であり、この中で最も階級の上であるなのはと同じ身分であるため彼はまるで同僚と喋るような口ぶりで話を切り出した。
いきなり煙草を吸い始めた彼にきょとんとして見つめていたなのはは、そんな彼の気安さに安心を覚えた。
「さすがに200体は。もう少し手加減して貰えると助かったのだけど」
「そーかー? あたしは余裕だったぜ」
「確か、ヴィータ二尉は200体中撃墜数75体、対して高町一尉は118体。そして俺は7体。なるほど、確かにヴィータ二尉は高町一尉より多少余裕があったと思われます」
エルンストは【ストライク・ビューワー】に記録された戦績をロードしそれを忠実に正しく口にした。
「なんだとー!! エルンスト、テメェ。喧嘩売ってんだったらかってやるぜ? ああん?」
ヤクザのちんぴらかと思うほど、見事な絡みを見せつけるヴィータの様子にあくまでも平然と、「事実を述べたまでです」と口にするエルンスト。その二人のじゃれ合いのような絡み合いに、終に棋理が吹き出し腹を抱えて笑い出した。
見るとなのはも腹を抱えたりはしないが、クスクスと笑みを浮かべている。
「おい、お前、エルンストだったか。単なる堅物かと思ってたが、気に入ったぜ」
棋理はよじれそうになる腹を痛そうに押さえ、エルンストの背中をばんばんと叩いた。
「こら! 朱鷺守! そんなに笑うんじゃねぇ。なのはも」
小さい身体でぶんぶんと腕を振り回す赤い少女は、その姿に違わず顔を真っ赤にしてなのはをぽかぽかと叩いていた。
「痛い、痛いよヴィータちゃん。ごめんなさい、もう笑わないから」
なのははそれでも笑いながら、ヴィータの頭を何度も何度もなでつけてあやした。
(一体、何の集団なんだこれは)
事の発端であるはずのエルンストが置いてけぼりを喰らってしまうほど、彼らは滑稽に笑いこけた。
棋理はとりあえず三人と雑談がしたかった様子で、その目的が果たされた以上、三人も同様通常勤務に戻る必要があった。
そしてその解散の際に、棋理は言い忘れていたことを思い出した。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪