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りりなの midnight Circus

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 エルンストが発射した瞬間、ニコルはそう指示を飛ばすとすぐにそれをロックする。
 しかし、敵の一人がはじけ飛んだ瞬間から残りの砲撃が徐々に幅を狭めていっているとエルンストには感じられた。
 二人目を視界の中心に据え付け、それが魔法弾頭発射の後、急制動をかけて反転する瞬間を狙い、エルンストは再び引き金を引く。

(そういう場合は制動をかけずに旋回するんだよ!)

 はじけ飛ぶ肉片と、弾のエネルギーで沸騰する血液を視界の端で確認しエルンストはニコルの指示を待った。

「次だ」

 後二人にまで迫った敵には、しかし焦りというものが感じられない。こういった手合いは、戦力が半減すると知ると殆どの場合撤退に移るものだと思っていたが、何故だ。
 その思考は、敵の片方が放った魔術弾が二人のすぐ正面100m先に着弾したところで遮られた。
 視界を埋め尽くす灰色じみた塵霧に二人は目を背けた。

(発見された)

 本能的にエルンストはそう悟った。発見されなければ最強であるはずのスナイパーは、発見されてしまえばその戦術的優位性はあっけなく瓦解する。
 エルンストは狙撃を断念し、クリミナル・エアのセレクターを操作した。
 単発方式から連射方式へ。ストライク・ビューワーも精密狙撃用の高倍率から、視界を広く取る対空照準へとシフトさせる。
 連射方式のライフルは命中精度ががた落ちになり、その弾速も半分以下に低減する。また、発射体の回転も弱まり弾頭の安定性も大きく低下するが、ファイアーパワーは圧倒的となる。
 しかし、本来対空砲かとしてセッティングされていないこの銃では、装弾されている弾数が圧倒的に少なすぎる。魔法弾頭を連続発射できるだけの魔力を持たないエルンストにとってそれは命の切れ目だった。
 秒間15発とセッティングをすぐさまたたき込み、エルンストは間髪入れず残り少ない弾丸を敵へたたき込み始める。
 フルオート射撃(ひきっぱなし)では4秒持たない。0.3秒ごとに指を切りながら、合計3秒と少しの時間をかけてようやく片方を撃墜する。
 そして、その射撃は彼らの位置を敵に完全にさらす結果となった。
 二人はもはや身を完全に起こし、地面に足をついて身体をさらしていた。
 エルンストがニコルのサポートを受け、すぐさま銃口を最後の一人へと向けた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪