りりなの midnight Circus
保管庫より自分のデバイスを受け取り、広い屋上のヘリポートにたどり着いた棋理達を、なのはとエルンストは既にそれに乗り込んで待機中だった。
保管庫横の作業室で業務中だったエルンストはもちろんのことだが、どうしてなのはがこんなに早く到着できているのか疑問だったヴィータはヘリに乗り込む前に聞いてみた。
「自主訓練でデバイスを持ち出してたからね」
と答えるなのはにヴィータは納得した様子で頷くが、
「自主練ならあたしも呼べよ」
と一言言ってヘリに乗り込んだ。
「おそろいですね。では、発進します」
機動中隊に配備された二つの輸送機の片方、なのは、ヴィータ、エルンストが乗り込んだ小型のヘリはヴィータが乗り込みシートベルトを締めたことを見て、そのまま命令を待たずに飛び立った。
徐々に小さくなるヘリポートを見下ろすと、A分隊とB分隊を運ぶ大型輸送機はまだ地上待機を続けている。
「どうやら、エリオン二士とアリシア二士がいま遠くに行っているようです」
D分隊は他の分隊とは任務を異にする状況が多いらしく、彼らは別のヘリで輸送されることとなるのだが、今回ばかりは同じ輸送機でも良かったのではないか。エルンストはそう思ったが、副部隊長にも何か思惑があるのだろうと考え今回は黙っておくこととした。
『D分隊、発進したようだな。A分隊とB分隊も聞いて欲しい。これより任務の概要を説明する』
彼らが乗り込むヘリの中央にアグリゲットを移したモニターが投影された。
『今より二時間前、ミッドチルダ住宅街のビルの一室に反政府同盟を名乗る武装テロ集団が押し入った。当時はそこにいたのは主婦一人だけだったが、連中はそれを人質にとり籠城。これだけのことなら本来なら公安か警察武装隊が解決するはずのことだが、彼らは通常では考えられない装備を持っていたらしい』
エルンストを始め質問する人間はいない。アグリゲットは続けた。
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪