りりなの midnight Circus
なのははシートに腰を下ろしながら【レイジング・ハート】を起動させ、作戦前の微調整に入っていた。
「だろうな、何処でも同じだろう」
ヴィータは攻撃命令が出されていない事を聞いてから殆どアグリゲットの言葉を聞いていなかった様子で、シートにどっかりと腰を下ろしてあくびをしていた。
「それにしても、南雲部隊長が不在の時に任務が入るとこうやって別部隊の指揮にはいるってことか。少し前とは違うんだね」
「そうだなー、前はどんなときもはやてが前に出てきてたからなぁ」
それから二人は前の舞台ならどうだったかとか、これから行く部隊の白河三等陸佐とはどういう人物か、立てこもったテロ集団の目的は何かなど雑談を交わしていた。
エルンストはその話題には入らず、【ストライク・ビューワー】が拾ってきたデータから現在の状況を洗い直す。
(半径2.7kmの範囲内は敵の監視下にある。だが、プレスヘリが飛び回り連中の姿は大写しか)
そのプレスヘリの情報もないかと検索し、彼は現在実況生中継で映し出された住宅のベランダの状況を拾い出した。
その映像には、二人の男が一般市民と思われる女性を囲んでそれに手持ちの武器を突きつける様子が映し出されていた。ネゴシエーターの姿はない。おそらく、別室でもう一人と交渉中なのだろう。情報によるとテロリストは三人。どれもが軍用級の攻撃型デバイスを所持しており、今より一時間半前に向かいのビルに潜んでいた武装隊の一人が攻撃を受けているらしい。
攻撃を受けた隊員は重傷だったらしいが命の危険性はなかったらしい。しかし、彼はかなり厳重なカモフラージュを施していたらしく、本来なら潜伏を本業とするテロ対策部隊の構成員のようだった。
そんな彼があっけなく発見され、あまつさえ反撃さえも許さないほどの攻撃を受けた。
確かにこれでは、公安や武装警察では荷が重い事だとエルンストは感じた。
しかし、これでは例え自分たちが投入されたところで何らかの有効な手段を講じることが出来るのか。相手は人質を取っている。それを何とかしないかぎり、解決の手だてはないとエルンストは結論づけた。
ヘリは、高いビルの陰に隠れるように巡航し、大部隊の指揮車両の上空に停滞した。
「それじゃ、行ってくるね」
「そっちもしっかりな」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪