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りりなの midnight Circus

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 エルンストはできることなら目を閉じておいてほしいと思った。これから彼女が経験することは、おそらく傷になる。下手をすれば一生そのトラウマに悩まされることとなるかもしれない。
 エルンストは心のうちでそれを詫び、残りの二人の男の姿を追った。
 すぐに見つかった。
 一人は部屋の中ほどでいすに腰掛け何かヤクのようなものをやっている。おそらく、ドラッグだとエルンストは思った。そして、最後の一人は入り口近くで通信機のようなものを耳に当て、手を振り回しながらしきりに怒鳴り声を上げているような様子だった。
 ここからではその会話の内容までは聞こえないが、おそらく交渉が上手くいかないことに対する怒りなのだろう。
 エルンストは、三人の位置を測ると、狙撃プランを立てた。まずは、人質のそばの男。そして、ドラッグをやっている男。最後に唯一武器を所持していなさそうに見える交渉の男。
 エルンストは目を細め、スコープからのぞく方ではない側の目を閉じた。
 視界は制限され、彼の目にはまるですぐそばに犯人達がいるような感覚に襲われる。
 【ストライクビューワー】が描く軌跡は、さすがに射撃場で行ったものより動きが激しく感じた。それでも、今まで【コールド・アイズ】のみで行っていたものに対してその情報密度の違いから、不規則なゆれというものを感じられなかった。
 後は、銃身自体の不規則性だが、特務機動中隊に就任している間、その中隊に贈られてくる最新のデバイスシステムから彼は【クリミナル・エア】のバージョンアップを行っていた。
 誰もいない、誰も見ていないところでひそかにそれを実射してみたが、銃身から来る不規則性は以前のものに比べて5パーセントほど軽減されていたような感じを受けた。
『狙撃準備完了』
 【クリミナル・エア】を構え、3分。彼はすべての手順をクリアし、その手の内にすべての命を包み込んだ。
『いつでも撃て』
 ベルディナの声が、ニコルの声に重なる。
 エルンストは呼吸を止め、鼓動を沈め、心音から来る振動を抑制し、脳内物質をコントロールし、ただ引き金を引き絞った。
 発射された弾頭の軌跡が、【ストライク・ビューワー】が描き出した軌跡を見事にたどり、それは恐ろしい速度を持って目の前に浮かぶ男の眉間へと吸い込まれていった。
「エクスプロード」
作品名:りりなの midnight Circus 作家名:柳沢紀雪