ティル・ナギ
「ちょ、ルック!!今のナギにそれはないだろ!?ナギー、大丈夫ー?」
「う・・・」
倒れていたナギが気付いて頭を振って立ち上がった。
「ってーっ。ん?あれ?ここ、どこ?俺・・・階段降りてなかった?」
「「ナギ!!」」
ティルとルックは目を見開いてナギを見た。
「ん?ティルにルックじゃん。どーしたの?あーいってぇー。なんか俺頭殴られたみたいに痛いー。あ、そういや階段から落ちたような・・・」
「えーと、ナギ?もしかしてその後のコト、全然覚えてない?」
ティルが聞いた。ナギは首を傾げた。
「その後って・・・?あっ会議っ!!ヤバーもしかしてすっぽかした俺?わーん、シュウに怒られるー。」
ティルとルックは何度目か分からないがまた顔を見合わせた。
「どうやら・・・」
「そうみたいだね・・・」
「?どうしたの?ホント2人とも。」
「―とりあえずホウアンの所へ行こうか。」
「え?何で?なんかおかしいの?」
有無を言わさずルックは瞬間移動した。
医務室に着いた時にティルが言った。
「うーん、何ていうか、頭打って、ちょっとした記憶喪失みたいなもん?なのかな?」
「ええ?」
その間にルックが事情をホウアンに説明していた。
頭を調べながらホウアンも言った。
「そうですね・・・。確かに一種の記憶喪失のようなものでしょう。階段で頭を打ってその時に自我の一部が混乱したのでしょう。そして先程の衝撃でそれが正常に戻り、その為混乱中の記憶が消失した、というところでしょうか・・・」
「はあー?」
ナギは訳が分からないといった感じであった。
ティルとルックはとりあえず安心した。医務室を出たときルックが言った。
「とりあえず僕は先にシュウに説明してくるよ。ナギ、君は歩きで来なよ。何度も複数移動させるのは疲れるんだよね。」
そう言ってルックは消えた。ティルが言った。
「じゃあナギ。行こうか?あんなでもシュウも心配してるだろうから。」
「あ?ああ、うん。つーかさぁ、俺さー記憶ないってのがヤなんだけど、その間、変なコトしてないよな?」
歩きながらナギが聞いた。
「・・・まあいつものナギじゃなかったよ?そうだね、なんかかわいかったなー?」
「えぇっ?」
「でね、僕に大好きって言って抱きついてきたんだー。」
ニッコリ笑ってティルはナギを見た。
みるみる真っ赤になっていくナギ。
そうして赤くなったり青くなったりを繰り返しつつ言った。
「うっ嘘だっ。」
「えー?嘘じゃないよ?信じなくてもいいけどね?少なくとも事実だから。」
「う・・・」
シュウの部屋に近づいてきた。
不意に黙って俯いてしまったナギを怪訝に思い、ティルはヒョイと屈んでナギを見た。
「!?」
ナギは口をぐっと噛み締め顔を真っ赤にしたまま、目からぼたぼたと涙を落としていた。