ティル・ナギ
出会い2
「はあー。」
「先言っとくけど、僕のせいじゃないからね。」
「えー、でもルックが送ってくれてたらこんなことにはなんなかったじゃんかー。」
「それとこれとは関係ないだろ。」
「まあまあ2人とも。落ち着いて?ナギ、とりあえずここから出る事考えようよ。ルックは後でゆっくり話し合おう?」
ブスッとしたナギと我関せず風のルックの仲裁に、ティルはニッコリ笑って言った。
「・・・話し合い・・・?明らかに物騒なコトしようとしてるよね・・・。」
「やだなあルック。考えすぎだよ?僕とルックの仲じゃない。」
「片手で指をコキッと鳴らしながらさわやかに言う事じゃないよね。後、何度も言うけど、どんな仲だよ、まったく。」
「ふーん、やっぱ2人は妖しい仲?」
こてんと首を傾け、ナギは言った。横目でルックが返した。
「冗談でもやめてくんない?」
「うわー何その冷めた反応。僕泣くよ?」
「泣けよ。てゆーかあんた達そんな事言ってる場合じゃないだろ。ここどこだよ?あーもーやっぱり来るんじゃなかった。」
「落ち着いて?ルック。」
「そうだよー。場を和ませようとしてんのにさー。ルックてばこーゆー時に役に立たないし。」
「仕方ないだろ。まったく知らない、どこにいるか分からないような状態でテレポートなんか、出来るかーっ!!」
3人は森の中にいた。
それもかなり深い森らしく、歩いても歩いてもまったく生い茂った木以外景色は変わらない。
まったく心当たりもなく、森の中にいる為、またたきの鏡も使えない。
とりあえず森の村まで行ってどこかのんびりした林かなんかでお弁当食べようと、ビッキーにテレポートを頼んだ時に、”あっ”という声が聞こえた。
3人が3人ともその瞬間、やられたと思った。
そして着いたのが森は森でも、このまったく知らない深い森(と思われる)だったのだ。
飲食物は持ってきているが所詮昼ごはん用。サバイバルは予定していなかった為、3人とも軽装だった。
とりあえず森から出ようと当てもなく歩き、およそ2時間はたったであろう頃のことだった。
「ルック怒りっぽいよ?おなかでも空いてるんじゃない?」
「きっとそうだよ。んじゃそろそろ腹ごしらえでもするー?」
そう言ってナギはいそいそとビニールシートをしき、お弁当、飲み物を並べた。
「ピクニックだね?」
「あは、なんか楽しいよねー。」
「・・・。」
そうだった。2人とも天魁星。こういう奴らなんだ・・・(てゆーか天魁星がこんなとはこの2人に会うまで思いもよらなかったが?)、流されるな、しっかりしろ自分。
しかし本来なら星は1つ。なのに天の悪戯か、元と現の2つが揃うなんて・・・。
まあ、これ以上増える事は有り得ない。慣れるしか、ない。慣れるんだ・・・。
2人ははしゃぎ、ルックは精神統一している時、少し離れた所からカサッと音がした。
ピタッと静かになる2人。
「・・・気配が・・・ない?」
「消してる・・・?刺客?まさか。俺らですらどこにいるか分かんない状態で・・・。・・・人、なのかな・・・?」
そう言いながら、いつでも応戦できる状態の2人を見て、こんな所はさすがだなとルックは変に感心していた。
そうこうしている内に音の主が現れた。
人間だった。
亜麻色の髪は肩の上までで、サラッとなびいていた。
スラリとした体格で、マントを羽織っているが多分華奢だと思われた。
顔は一見男か女か判断出来ないが、とても綺麗な顔立ちで、年齢は17、8歳くらいと思われた。
そして何よりも目を惹いたのが瞳だった。とても美しい深い青。
「わー、綺麗な人だー。」
「確かにね。でもこんな所で1人で不自然だね?どちら様かな?何しているの?」
ナギが感心している横で、警戒をまだ解いていないティルが相手に聞いた。
相手は無表情なままティルを見て、一瞬びっくりしたような顔をした。それに気付いたナギが言った。
「あれ?ティルの知り合い?」
「いや、知らない。だから聞いたんだけど・・・」
「あ、そーだよな。なんか一瞬知ってる人かなって思った。ねえ、良かったらこっち来ませんかー?」
「ちょ、何誘ってんのさ。君警戒とくの早すぎない?」
ルックが言った。ティルは苦笑している。
声を掛けられた相手は首を傾けていたが、やがて無言のまま近づいてきた。
「えー、だってなんか悪い人には見えないしさあ。男か女か分かんない所に親近感湧いたし。」
「変なところに沸かすなっつーの。」
「まあ、いいんじゃない?確かに殺意とかは感じられないし、腰にある双剣は気になるけど今のところ抜く様子もないしね?」
突っ込むルックをなだめてティルがニッコリ言った。
え?
剣?
ルックにはマントしか見えなかったが。
そうこう言っているうちにその人物が3人の所へやって来た。
相変わらず無表情無言のままだが、なぜかティルをじっと見ている。
「わーやっぱ綺麗だー。んー男の人、かな?初めまして。俺、ナギっていいます。何か気になる事でも、あるんですかー?」
「・・・テド・・・違、う・・・?」
呟くようにその人物は言った。
それを聞いたティルは体を強張らせた。
「・・・お前・・・誰だ?」
普通の者が見れば、視線だけで、もしくはその口調だけで殺されそうな鋭い目、冷たい口調でティルは言った。
その横で普通ではないナギはボソッとルックに言った。
「テド・・・?テッドって事だよね?ティルの・・・」
「ああ、うん。親友だった、前のあの紋章の持ち主。」
その人物も普通でないのかティルの様子に対して、何ともないようである。
「やっぱり・・・テド、違う・・・。?・・・誰?彼の持ってたもの、持ってる・・・なぜ・・・?」
「・・・コレの事も知ってる訳だ。お前ホント誰?」
「カイ・・・ト。昔、テドと、一緒・・・に、戦った・・・。ソレの気配・・・して、今、来た・・・」
静かにたどたどしく話すカイト。
ティルは訝しげな顔をした。
「は?昔って・・・。いつくらいの話だ?お前いくつなんだ?」
3年前に死んでしまった親友。
一緒に過ごした時に、戦争の話など聞いたことがない。
話していないだけかも知れないが・・・。
「え、と・・・ひゃく・・・ごじゅう、年くらい、前?僕は、多分・・・ひゃく・・・え、とななじゅう前か、後?」
3人は固まった。
その後たどたどしい説明をなんとか理解しようと3人は必死にカイトの話を聞いた。
「そっかー。こんな所で真の紋章持ちに会えるなんてねー。しかも同じく道に迷ってるなんてねー?」
「群島・・・、そうか。僕も本で読んだ事はあったけど・・・。確かに話は納得いかなかったんだよね?1つの島の王様がリーダーってさあ、まとまりにくいはずだしさー、あーなんかすっきりした。」
「・・・あんた達、馴染むの早いよ。てゆーか、その話から察するに、あんたまさか天魁星だったんじゃ・・・」
「・・・だった、思う・・・。」
「あは、仲間だ仲間ーっ。」
はしゃぐナギに青くなるルック。
ティルはニコニコしていたがふと顔を曇らせて言った。
「あの、さ・・・。テッドは・・・」
テッドの最後を話した。