ティル・ナギ
「っそうだっ。おま、本当にカイトなのか!?あん時死んじまったんじゃ・・・」
テッドが言った。
3人はえっという顔でカイトを見た。
カイトがたどたどしく言った。
「・・・紋章・・・許、しの期間・・・僕は消えなく、て・・・。」
「そうか。償いから許しへ変わったんだな。良かった。良かったよ。」
今のでなぜ分かる・・・?
3人は同時に思った。
「・・・ていうか、だ、れ?」
こてんと首を傾けでカイトが言った。
「は?なっ、おまっ。何のボケだそりゃあ。」
「だっ、て・・・僕、知ってるテド・・・じゃ、ない・・・テドは・・・引きこも・・・」
「げほげほっ」
何か言いかけたカイトをワザとらしい咳で邪魔するテッド。
3人は怪訝そうな顔をした。
「カイト、何かテッド違うの?」
ティルがカイトに聞いた。カイトが答えようとする前にテッドが割り込んだ。
「こちとら長い間生きてるんだぜ!?そりゃあ感じの1つや2つや3つ、変わってもおかしくないだろ!?そーゆー事だティル。そんでカイト。な。昔の事はもういいじゃねえか。俺は俺なんだし。」
怪しげな顔で3人はテッドを見たが、カイトは素直に頷いた。
「・・・分かった・・・。」
そしてゆっくり手を伸ばし、カイトはテッドに抱きついた。
「・・・久し、ぶり・・・。会えて、嬉しい、よ?テド。」
「・・・お、おう。」
ティルとルックは唖然と、ナギは“うわー”と赤くなりながら2人を見ていた。
それに気付いたテッドはカイトを離して言った。
「な、何だよその引いたような視線は!?ち、違うって、カイトはそんなつもりなくてこーゆー事する奴なんだって!!」
横で分からないといった感じでカイトは首を傾けている。
無表情だがその様子はとてもあどけない感じだった。
「また無自覚な奴かい?」
「やるね?カイトって?」
「俺、ドキドキしちゃったよー。」
ルック、ティル、ナギがわいわい言っていた。
それからナギが自己紹介をしようとテッドの方へ行った時にティルがルックに言った。
「ナギとはまた違った危険物だよね?」
「ある意味似たもの同士なんじゃないの?」
ナギがニッコリ笑って手を差し出しながらテッドに話しかけた。
「初めまして、自己紹介まだですよね?多分テッドさんが知らないのって俺だけですよね。俺、ナギっていいます。よろしくお願いします。」
「お、おう。」
愛らしい笑顔についつい赤くなりながら出された手を握ろうとした時、殺気を感じておもわずさっと後ろに下がった。
テッドが立っていた場所を通って、小ぶりのナイフが空を切り飛んでいった。
「あ、ごめんね?手がすべっちゃった。」
あは、とニッコリ笑ってティルがテッドに言った。
「ってちょっと待て。何でナイフ?この状況でナイフ飛ぶ?しかも的確に俺めがけて飛んでってねぇ?どんだけ正確な手のすべり?」
「わお、相変わらず容赦ない突っ込み大王だよね?」
「返す言葉はそれだけかあぁぁぁー。」
「ちょ、ティル、自己紹介の邪魔しないでよー。ごめんなさい、テッドさん。とりあえず今いる場所は俺が軍主やってる城なんです。勿論戦争には不参加で問題ないんで、良かったらゆっくり滞在して下さい。部屋も用意させますんで。あ、もしかしてカイトさんと同室のが良いのかなー。」
「え?軍主ってお前が?ってゆーか、最後、何言ってんの?」
「・・・僕は、同室、かまわ、ないよ・・・?」
首を傾け静かに言うカイト。テッドは赤くなって言った。
「ばっ、おまっ、何言ってんだよ?」
「そうだよカイト?間違いなく危険だよ?何されるか分かったもんじゃないよー?」
「ティルっ。お前ー。俺を何だと思ってんだよ!?」
「・・・テドだったら、いい、よ?」
その言葉に皆ポカンと口を開けた。
テッドは口をパクパクさせている。
「・・・同じ、部屋、気に、しない・・・よ?」
「ちょ、かなり天然?アレやばいよね?テッドも可哀想。」
「俺またドキドキしちゃったー。何されてもいーんだって思ったよー。あくまで同室のコトとはねー。」
「痛いね。あれじゃあさすがにテッドにも同情するね。」
脱力後、ティルが口を開き、ナギとルックもボソッと言った。
「おいっ、何勝手にボソボソやってんだよ!?何俺同情されてんの?なんかもう、俺そっち系趣味ってコトになってんの?」
ティルがテッドの肩をポンと叩いて言った。
「いや、別にそっち限定のヒトだって思ってる訳じゃないケドさ、あきらかにカイトに対する気持ちがダダ漏れだから?」
テッドは青くなった。
ナギが空気をかえるように言った。
「ま、まあ、歓迎しますんで。部屋も用意するよう連絡しときます。」
ルックはため息をついた。
「まったく・・・。僕はもう戻るよ。朝っぱらから疲れた。」
「早朝に叩き起こしたのは悪いって思ってるよ、ごめんってルック。朝ごはん奢るからさー。ほら、もうこんな時間だし、レストランも開けてくれるだろ。じゃあ、俺とルックは朝食とりに行くんで、あなた方も良かったら、また後でいらして下さいね?ティルも、ね?じゃーねー。」
ニッコリして、ナギは仏頂面のルックを引き連れ部屋から出て行った。
ティルはニコニコと手を振って見送った。
「・・・お前だって、明らかにあの、ナギとやらに気があるよな?」
「・・・何か文句でも?言っとくけどテッド。ナギに何か言ったらタダじゃおかないよ?あ、勿論あの子に手でも出そうってもんなら、またソウル君の中に入ってもらうからね?」
ニッコリと言うティルは真っ黒に見えた。
「手・・・出す・・・?」
首をかしげて手のひらを出してカイトが言った。
ポンポンっと軽くカイトの頭を撫でて、テッドは言った。
「あー、お前は気にしなくていーから。」
カイトはこくっと頷いた。
「ふふ・・・。まるで保護者だねテッド。」
「・・・うるさい。」
「カイトってさ、すっごく綺麗な顔だし、なんか頼んなげでさ、すでに城では目、つけてるのがいっぱいいるよ?女性は心配ないだろうけどさ、多分母性本能くすぐられてよしよしって感じが多いからね?でもさー野郎はさ、分かるだろ?」
「・・・・・。」
「テッド大変だねー?頑張ってねー?」
「・・・なんで、んな楽しそうなんだ・・・?」
ティルはにゃはーっと笑って言った。
「人事だから?」
一方レストランに向かいながらナギはルックと話していた。
「ティル、とても嬉しそうだったよな?」
「まあね。」
「良かったー。カイトさんも分かりにくいけど喜んでたみたいだし。テッドさん、面白そうなヒトだし。」
ナギは嬉しそうにニコニコと言った。
「変な奴の間違いだろ?」
「えー、そうかなー。あ、カイトさんのコト、好きなんだろうね。うまくいったらいいよな、あの2人。」
「・・・どうでもいいよ・・・。」
ルックは投げやりな様子で呟いた。