ティル・ナギ
「言ってさ、関係悪くなんのが嫌でさ。しかも今の感じ、まるで僕だけあんまり好きじゃないみたいな風で傷つきそうだったけどね・・・」
ひと呼吸おいて続けた。
「・・・好きだよ、ナギ。」
真面目な顔でナギを見つめたままティルは言った。
それを聞いたナギはニコッと笑って椅子から立ち上がり、腕を伸ばしてティルの首に絡め、軽く唇をティルの唇に押し当てた。
「!?」
次の瞬間にはナギは崩れ落ち、見ればそのまま眠っていた。
「って、ええっ?何ソレ?酔ってた?やっぱり酔ってたの?せっかく勇気出して告白したのに、コレ絶対覚えてないよね!?しかも今の行動!!絶対ナギにお酒禁止だよっ。・・・はあ、まったく・・・。」
めずらしく顔を赤くしながら、脱力したティルはナギを抱きかかえベッドに運んだ。
寝かせて自分は部屋を出ようとしたが、無意識のまま、ナギはティルの服をギュッとつかんでおり、離せない。ティルはため息をついてナギの隣に横になった。
すると眠ったままナギは抱きついてきた。
「・・・生殺し・・・。何の拷問だよ・・・。」
ティルは結局明け方まで眠れなかった。眠りにつくと、疲れからかぐっすり眠りだした。
「・・・なんか、喉渇い・・・ん?」
ひどい渇きに目が覚めたナギはその場で固まった。
からからの喉も、痛みはないが重い頭も確かに気にはなるが、それより何より、横にティルがいる。ぐっすりと眠っている。
「あれ?何?えっと、あれ?」
横向きで目覚めたナギと向かい合うようにこちらを向いて、ティルはすやすやと眠っていた。
動揺しつつ、ナギは昨日の事を思い出そうとした。
しかしある時からの記憶が出てこない。
ー一緒にお茶してて・・・自分がほとんどお菓子1人で食べたんだよな・・・。
えーと、そうだ、お茶もなくなって、ティルの飲んでたヤツを・・・てあれ、お酒だったような・・・。
そしてそこからの記憶が曖昧で・・・ようは覚えていなかった。
・・・どうしよう、変なコト、自分はやったりしたりしていないだろうか・・・。
なぜ一緒に寝ているのだろうか。
遅くなって泊まるように言ったのだろうか。
それとも・・・まさか・・・。
そこまで考え、慌ててベッドから出て自分を点検してみるが、多分何もなかったであろうと思われた。
とりあえず喉が渇いているので重い体を引きずって水を飲みに行った。
時間はまだ早いようなので、まあいいかとベッドに戻った。
ティルの方を向いて横になって、普段こんな間近で見る事ないよなと、まじまじとティルの顔を見た。
ティルはとても整ったきれいな顔立ちをしていた。
睫毛、長っ。
なんか寝顔、天使みたいだ。
そう思いながらふと唇に目がいった時、なぜかその感触をナギは知っているような気がした。
・・・何考えてんだ自分は、そうだ寝よう、寝てしまおう、とナギは目を瞑った。
なぜかドキドキして、眠れないような気がしたが、アルコールが残っていたのかあっという間に眠りに落ちた。
次に目が覚めたのは、素っ頓狂な声のせいだった。