ティル・ナギ
告白2
「えー!?何で、何で!?何でナギとティルさんが一緒に寝てるのー?」
「・・・はっ、・・・っな、何?」
いきなり、声にびっくりして目覚めたので少しドキドキしながらナギは周りを見回した。
そこには変わらず眠っているティルと、2人をびっくりしたように見ているナナミがいた。
「えー?あ、やだ、まさか2人ってー?」
「・・・は?え?あーっ、ちょっとナナミ声大きいし、なんか勘違・・・」
「・・・うん・・・な、に・・・」
ナナミの素っ頓狂な声でとうとうティルも目覚めたようだが、それでもまだ半寝のような状態で上体を起こした。
明らかにボーっとしているティルにナナミが言った。
「ティルさん、あなた達って実はそーゆー関係だったの!?」
「・・・んー、うん?」
「やっだー、気付かなかった、あたし!!ごめんね?ナギ。おねーちゃん、邪魔するつもりはなかったの。」
今のティルのは、どう考えても肯定の返事ではないじゃないか。よく聞いてー?
「いや、つーか話を・・・」
「大丈夫!!おねーちゃん、これでも理解あるんだから。ナギとティルさんの事、応援するからね。うん、うん。2人ってすごくお似合いだよ。」
「いや、だから話を・・・」
「分かった!!まだ皆には内緒にして欲しいんでしょ?恥ずかしがるコトないのにー。でも大丈夫だからね?絶対誰にも言わないよ。あ、ティルさん。」
「・・・んー・・・?」
「ナギの事、よろしくお願いしますね。大切にしてね。」
「?うん・・・、大切、する、よ?」
「なっ、ちょ、ティルもいい加減寝ぼけてないでしゃきっと起きてよー。ナナミ、ほんと、違うから。話を・・・」
「がんばってね。じゃ、これからおねーちゃん、ナギの部屋に勝手に入らないようにするね。朝も起こしに来ないけど、ティルさんがいるから大丈夫だよね!?じゃあね、ナギ。」
「ちょ、人の話をー」
ナナミは嵐のようにしゃべって、嵐のように去って行った。
ナギは呆然とした。
相変わらずティルはボーっとしている。
「っうわー、何だよもーっ。ってかティル、さっさと目ぇ醒ませよーっ。」
「・・・んん・・・、何か、寝付けなくて・・・遅かったから・・・まだ眠い・・・」
「それどころじゃないってば。最悪だ、最悪だよ、うわーん。」
ティルの胸倉をつかんでナギは揺さぶり、赤くなりながら叫んだ。
「んーんっ、はーあ。・・・あれ?どうしたのナギ?」
揺さぶられながらも器用に伸びをした後、覚醒したのかいつもの口調でティルが言った。
「ナナミがぁー」
先程の話をティルにした。
するとティルはプッと噴出した。
「なんかさ、ナナミちゃんらしいよね?」
「笑い事じゃないじゃん。俺らこ、恋人同士に間違えられたんだよ?どーすんだよー?」
「えー?面白いからいーじゃない、別に。」
「よく面白がれるよ、のん気すぎるくない?ってあそうだ、なぁ、なんでティル一緒に寝てたんだ?俺さー実は思い出せなくて・・・」
やっぱりという顔をして一瞬がっかりしたような気がしたが、ティルはすぐに悪戯っぽい顔つきになった。
「・・・ひどい、ナギ。君から誘っておきながら、なかった事にするなんて?」
「っえ・・・」
ナギはさーっと青くなった。
「え、ちょ、まさか・・・ホントに・・・?オ、俺・・・やっちゃったの・・・?」
それを聞いてティルは笑い出した。
「やっちゃったってー。もーほんと君は・・・。・・・冗談だよ?ああ、泊まってけって誘っただけ。」
「なっ、ティルーっ。」
殴りかかろうとするナギをティルは避けた。
バランスを崩したナギはそのままティルの上に倒れ、押し倒すような形になった。
「あ、ごめ・・・」
ナギは謝ろうとし、ティルはナギを起こしてあげた。
ふとティルの顔が真面目になる。
黒曜石の中にアメジストが混ざったような、紫色が入った黒い瞳でじっとナギを見つめている。
それを見たナギはどうしようもなく赤くなっていく自分に気付いた。
思わず大きな枕をティルの顔に叩き付け、そのまま走って逃げていた。
ティルは枕を取ると、部屋を逃げるように出ていったナギを唖然と見ていた。
「うわーんルックーっ。」
上から飛び降りたのか、いきなり目の前に現れたナギは、明らかに寝起き姿だった。
石板前に立っていたルックは呆れたようにナギを見た。
「何なのさ。朝っぱらから。てゆーかせめて着替えてから出てきなよ。何してる訳?バカじゃないの?」
ルックの毒舌もなんのその、ナギは格好については無視してルックをつかみ、言った。
「だってー。俺、変なんだーっ。」
「明らかに変だね。そんな格好でうろつかないで欲しいよ。」
「って違ーう。格好の事じゃなくってー、うわーん。」
ナギはいきなりしゃがみ込んで泣き出した。
ギョッとするルック。
ホールにいた人たちは白い目でルックを見ている。
「ちょっと、何やってんだよ。あーもう。移動するからね。」
そのままルックの部屋へテレポートし、またしゃがんで泣いているナギは放置し、ルックはお茶を淹れた。
「ほら。」
淹れたお茶をナギに手渡すと、ぐずぐずいいながらも受け取って大人しく飲んだ。
「ちょっとは落ち着いた?」
「・・・うん。ごめん・・・。」
「まったく。何なのさ。」
「う・・・。オ、俺、変態か病気なんだ・・・。」
「は?」
「だ、だってぇー・・・」
その後赤い目をしたまま、ナギは黙り込んだ。
「・・・言いなよ。別に今更君が何言おうが、僕は構わない。君に対する態度だって変わらないよ?」
「・・・うん・・・、そうだ、ね。そうだよね?えーと、何かさ、前から俺、ティルに対してなんかもやってした感じがあったんだけどさー、それのもやがちょっと分かって・・・」
「ああ、ようやく。」
「え?」
「いや、続けて?」
「それがさー、なんか、押し倒したいというか、押し倒されたいというか・・・」
「ぶっ」
ルックは飲んでいたお茶を吹き出した。
ハンカチで口を拭いながら何とも言えない表情でナギを見る。
ナギは気付かずそのまま一気に話した。
「ナナミに、俺とティルが出来てるって勘違いされたんだけどさーそん時も、実際何もなかったんだけど一瞬ティルとやっちゃったのかって思った時も、困ったって思う反面どっか嬉しいようななんかムズムズするような気分でさー。んで近くでティルの顔見たら、なんかそのまま押し倒したいっつーか、抱かれたいような・・・なんかキューってするような気持ちんなって・・・。いたたまれないような・・・。どうしよう、俺病気!?」
ルックは呆れつつ言った。
「・・・君の話してる状況がいまいちよく分からないんだけど。まあそれはいいけど、なんでそれで病気って思うわけ?」
「え!?じゃ、じゃあヘンタイ!?」
「なんでだよ!?」
ナギはまた泣きそうになっている。
どうやら本当に分からずに戸惑っている様子である。
ため息をついてルックが言った。
「まったく・・・、世話の焼ける・・・。じゃあさ、例えばだけど。相手の事見たり考えたりした時に赤くなってドキドキしている子がいたら、その子はどういう状態だって君は思う?」