ティル・ナギ
「は?何突然・・・。えーと、そうだね、きっと相手の事好きなんだろうなーって。」
「それは友達として?」
「え、違うよ、その好きじゃなくって、ほら恋人とかのさー。」
「って、どんな好きだい?」
「だからさー、もっとこう、えーっと、触れたい?抱きしめたり抱きしめられたり・・・、あれ?」
「・・・・・。」
「え?あれ?俺・・・?」
「ほんとバカだよね。」
ナギは茹ダコのように赤くなった。
「うっわ、どうしよう。俺、訳分かんなくなって、ティルに枕叩きつけて逃げてきちゃったー。」
「は?何それ?ティルに無理やりなんかされた訳?」
「え?わっ、ち、違うよっ。何もされてないし、そういう状況だったんじゃないんだって。ただ俺が何やかんやでいたたまれなくってー」
「・・・まあ、あいつが君に無理やり何かをする訳ないか・・・。」
「わーんルック。どうしよ。ティルは絶対意味分かんないよね、いきなり枕叩きつけられてさーっ。わーん、せっかく俺自覚したってのに途端にティルに嫌われたかもーっ。」
「それはない。」
「・・・なんでそんな事分かんだよー?」
「・・・。てゆーか今までだって色々な自覚がまったく欠ける君が、それこそ色々な事してきても、ティルは一度だって怒ったり嫌ったりしてないだろ?違う?」
「あう・・・」
赤くなったり青くなったりして黙るナギ。
と、急に立ち上がって左手を握り締め、決意したようにルックに言った。
「とりあえず、せっかく俺自分の気持ちが分かったんだし、そうとなればやっぱ告白だよな!?」
「・・・すごいね・・・。さすがというか・・・。ティルに爪の垢でも煎じて飲ませたいね。」
「??まあ、とりあえず、行ってくるよ。健闘を祈ってて!!」
「うん、まあ、頑張って?じゃあ僕から祝福って事で、ティルんとこ送ってあげるよ。ーんー、まだ君の部屋にいるかな。」
そう言うとルックは片手を挙げた。
「わっ。」
気付けばナギは宙に浮いており、すぐさま下に落ちた。
自分の部屋のベッドの上だったようで、下ではぼんやりしていたティルが流石にびっくりしつつもナギを受け止めた。
「!?ど、どうなってんの?えと、大丈夫?」
抱きかかえられた状態についドキドキしながらも、ナギはギュっと目を瞑って気持ちを整え、深呼吸して目を開け、ティルの両腕をつかんで言った。
「俺っ。ティルのコト、好きなんだっ。」
「?あ、ああ、うん。そうだね、ありがとう。」
あまりにあっさりとした答えが返ってきて拍子抜けするナギ。
ティルが続けた。
「どうしたの?あらたまって。いつも言ってるコトじゃない?昨日も、皆のコト好きって。」
「あ、違っ」
その時、ふと昨夜の事がぼんやり脳裏をよぎった。
いつも以上に饒舌な自分に、好きな子がいるかどうかも教えてくれないティル・・・。
あれ?でもティル・・・っわーっもしかして俺のコト好きって言わなかった!!??
わーマジで?
妄想じゃなく?
って待て。
それが妄想じゃなかったら、その後俺・・・。
「げっ。」
「今度は何?」
「えっ、いや、あの・・・」
ナギはさらに考えた。
そういやティルって好きでもなんでもない相手から想われても困る、興味ないって言ってなかったっけ・・・?
どうしよう、俺ホント言っちゃっていいの!?
あーでも、やっぱ好きってちゃんと伝えたいし・・・。
それにやっぱ好きって言ってくれたような・・・。
でもそうならその後俺がしたコトも思い違いじゃないよね・・・?大胆なこと、してるよね?
自覚もないまま何してんだ!?俺。
「ちょっと、ホント、どうしたの?」
ベッドの上で布団越しにティルにまたがって座り、腕をつかんだまま赤くなったり青くなったりし何やら考え事をしているナギを、ティルは心配しつつもいぶかしんで言った。
「はっ」
「なんか、おかしいよ?大丈夫?でも、もし良かったらどいてもらえないかなー?」
「あ、ごめっ。あーもー考えても仕方ないっ。悪いティル、ちょ、このまま聞いて?」
「?」
「えーと、俺、あなたのコトが、えっと、友達としての好きじゃなくって、その、見たり想ったりしたらドキドキするような、好き。なんで、す・・・。」
一気に言って真っ赤になり、うつむきつつ続けた。
「あ、う・・・。その、迷惑だったら、もうはっきり言ってくれて、いいです。」
「嬉しいよ。」
ティルの手がのびる。
いつの間にかナギはティルの腕を放していたみたいである。
右手がナギの頬にふれ、沿うように滑らせて顎までいくと、くいっと頭を上げさせた。
ナギはティルを見た。
ティルはナギが大好きな滅多に見られない本物の笑顔でナギを見ていた。
「ありがとう。僕もナギが、大好きだよ。」
そう言ってティルはナギにチュッと口づけた。
これ以上ないくらいに真っ赤な顔のナギは、おずおずと聞いてみた。
「あ、あの。もしかして・・・昨日、ティル、俺に好きって、言ってくれた・・・?」
「うん。」
「じゃ、じゃあ、まさか俺、その後・・・」
「うん。僕にキスしてくれたね?」
「うっわーっ。俺何やってんだーっ。」
「何で?酔ってたとはいえ、君からしてくれたなんて、すごく嬉しいコトだよ?」
思い切り赤くなっているナギにティルはまた軽くキスして続けた。
「とりあえず、降りてくれる?このままじゃ僕、襲っちゃうかもしれないから。」
「っ」
慌ててナギはベッドから降りたが、ボソッと呟いた。
「別にそれならそれでも、ティルなら構わないけど・・・」
「?何か言った?」
「う、ううん。・・・えへっ、俺、ティルと両思いなんだねー?何か、凄いね?あは。」
ニッコリ嬉しそうにナギは笑った。
ティルは暫くは布団から動けないようだった。