ティル・ナギ
まんじゅうとヘタレ2
後日、テッドの部屋にティルが遊びに来ていた。
「テッドってさーカイトと暫く一緒に戦ってたんでしょ?ずっと同じ船で生活してて、何もなかったの?実際のところ、カイトとはどこまで、てゆーかどういう関係なの?」
「なっ何だよいきなり。」
ふいに質問され、テッドは赤くなって動揺していた。
ティルはニッコリと言った。
「好きなんでしょ?の割りにあのカイトほったらかして150年もの間無視ってどうよって思うけど?」
「だーかーらー。俺はてっきりカイトはあの戦いの最後、罰の紋章に命を奪われたって思ったんだよっ。」
「ふーん。で、それまでは?」
「は?」
「だからさ、一緒に船で過ごしてた時は何もなかったの?」
「ああ・・・、そうだな・・・、保護者、だったな・・・。」
遠い目をしてテッドが言った。
「うわっ。なんか痛いね?えーと、好き、だったんだよね?」
「・・・あの頃の俺はなるべく人とかかわらないようにしてたんだよな。特に近しい人を作りたくなくてさ。」
「ふーん、ああ、ソウル君?」
「君!?でも、ま、そういう事だ。」
「だからカイトを避けていた、と?」
「まあ、な。でもあいつ、近寄るなっつっても何かにつけて寄って来たんだよな。・・・ああ、確かに好きだったさ。でも、絶対にそんな事口にしたくなかったんだ。ましてやあいつは紋章のせいで命削られてるってんだからよ。」
「・・・。」
「ん?まあ結局あいつも元気なんだし、なんだよ、暗くなんなよなー。あ、でさ、当時あいつ、周りのヤロウからあからさまに狙われてたんだけどさ、本人自覚ないだろ?」
「あー、いるよね、そーゆー子。僕の側にも心当たりある。」
「ははっ、ナギな。で、だ。カイトが懐いていて、しかも基本相手するどころか避ける勢いの俺に白羽の矢がたてられたんだよな。」
「何の?ってか誰から?」
「あいつの騎士団時代の仲間とか、軍師とか、王様からな、守ってやってもらえないかとな。」
「あー、邪な事しようと企んでる奴らから?」
「そーゆー事。文句言う俺の意見はスルーされて、危なっかしいカイトの保護者役となってた訳だ。」
「はは・・・。でもさ、こうしてめでたく再会できた訳でしょ?紋章の問題もないしさ、お互い。だったらー」
「今更告白かよ?」
「なに及び腰になってんのさ?テッドも案外ヘタレだね?」
「うるさい。そーゆーティルはどーなってんだ?ナギとは進んでんのか?」
「・・・両想いになってからさー、ナギと一緒にお風呂入ってない。前はよく2人でも平気で入ってたのに、ナギがなんか恥ずかしがったから・・・。」
急に座っていたベッドに体育座りになって俯きながらティルが言った。
「わははーっ。なんだよそれ。付き合いだしてから進むより退いてんじゃん。」
そして2人で顔を合わせて同時にため息をついた。
一方ナギは無理やりルックをひきつれ、カイトを誘ってナギの部屋でお茶と、勿論まんじゅうを楽しんでいた。
「・・・君たち、ちょっと食べすぎ・・・。見てるこっちが胸焼けしそうだよ・・・。」
ルックがげっそりと言った。
「えー、そうかな。」
「・・・そんな、食べる・・・ない・・・」
「そんな訳ないだろ。特にカイト、君さあ、少なくとも10個は食べてるよね?」
「・・・うん。」
「わーさすがカイトさん。で、そんな事よりさー。」
「・・・そんな事か・・・?」
「カイトさんって、テッドさんの事、どー思ってんの?一度聞いてみたかったんだよなー。」
「?」
「待ちなよ、そんな事聞いても、このカイトが答えられる訳ないだろ?」
「えー。」
「・・・大切な、人?」
「っわー、マジで!?聞いた?ルック。わーっ。」
ナギはハシャギまくった。
相変わらず無表情で首を傾げるカイト。ルックは冷静に聞いた。
「なんで疑問系?ほんとに分かって言ってんのかい?じゃあさ、ナギの事、どう思ってる?」
「・・・大切、友達・・・」
「えーマジですか!?俺もカイトさんのコト大好きですよー。」
「・・・ナギ・・・。あー、じゃあ僕やティルは?」
「うん。大切・・・友達」
自分で聞いておきながら少しルックは照れていた。
ナギに赤くなってるーっと指摘されて、うるさいとロッドで殴りかかったが簡単にさけられた。
「で、テッドは?」
「・・・大切な、人?」
顔を合わせるナギとルック。
「・・・なんか、ほら。微妙に答え違うよねー?」
「でもなんでやっぱり疑問系?」
「あは。なんでだろ?」
その間もカイトは黙々とまんじゅうを食べていた。
「カイトの事は通訳(テッド)がいないと、僕には限界がある。」
「んー、でもさすがに今のはテッドさんの前で聞くってのもねー?」
「まあ、ね・・・。・・・あいつもヘタレそうだから、もしかしたらずっとこんなままかもね。」
「あいつ、も?もって何?他に誰いんのー?」
「別に。あ、そうだナギ。言っとくけどいくらティルが好きでも、自分が嫌な事されそうになったらちゃんと嫌だって意思表示しなよ?」
「?何、いきなり。」
「多分いずれは君の方が傷つく事になるだろ。」
「え?何ソレ。なんかの予言?やだなー、俺ティルに傷つけられるって思ってんの?」
「・・・精神的には知らないよ。」
「心はって事?・・・ああ、それって・・・。」
ナギはどんどん赤くなった。パタパタっと手で顔を仰いだ。
「なっ何だよ、ルックってばっ。あーもー恥ずかしいじゃん。・・・でもさーそんな事この先起きっかなー?俺実はさー恥ずかしがりやだって最近気付いたんだけどさ、自分で言うのも何だけどさ。でさあティルって、何やかんや言って俺の嫌がる事って、まあ遊び的な事除いたらさあ、まずしないじゃん?」
「まあ、ね。」
「俺さー、前までは普通に2人でお風呂行くの気にもしてなかったんだけどさあ、意識しちゃうとコレが恥ずかしくってさー。で、一度嫌がったらそれからはまったくお風呂に誘ってこなくなったんだよなー。恥ずかしいだけで実は嫌じゃないんだけどなー。こんな調子でさあ、その、そんなコトになりそうでも、俺が恥ずかしがって嫌がるような態度出ちゃったら、ティル、絶対俺に手ェ出さないんじゃないかなーって思うんだよねー?」
「・・・あー、なんか、否定できないね。他の奴らには悪魔のようなとこあんのに、君に対しては、うん、そうだね。言う通りかもね。」
「わー、もしかして永遠のプラトニック?」
「何バカな事言ってんのさ・・・。」
ルックは呆れたようにため息をついた。
「・・・ぷら、とにく?」
首をかしげ、カイトが呟いた。
「あー、気にしないで下さい、カイトさん。」
「てゆーかいくらなんでもさ・・・、170歳前後なんだろ・・・。小さい子供じゃあるまいし・・・」
「うーん、カイトさんならありかなー?なんかさーエッチな事とか無縁っぽい?てゆっても何かテッドさん曰く連れ込まれたとか何とか言ってたけど・・・」
「・・・えっち・・・?っああ、・・・スルこと。」
その瞬間2人は固まった。さり気なくおっしゃりましたが、あの、それって?あれ?聞き間違い?
「えっと、スルとおっしゃられました?それって・・・」
「うん。・・・僕も・・・ある、よ?」