影縫い
――――言える訳がない。貴方のその憎しみや優越感を満たすためだけに、あそこまで執着されて弄ばれるロマーノ君が羨ましかっただなんて。
彼の首に巻かれている包帯を見たとき、私の心がざわついた。
あぁ、ここまでイギリスさんに執着されて、傷つけられるなんて羨ましい、と。
あのとき、よくこの感情を隠し通して笑っていられたものだ。
危うく包帯を無理やり解いて私の手で傷跡を上書きしようとしてしまいそうだった。ロマーノ君を傷つけずに済んで本当に良かった。
貴方の我を忘れさせるほどの怒りも殺したいほどの憎しみも全て私が手に入れたい。
だってそんな貴方は何よりも美しいから。
彼は、貴方の影を振り払えずに怯えていたようですが、私なら、貴方の影を縫い付けてしまいたい。
そして自分の影も縫いついけて差し上げたい。
そうして、ここに留めておきたいのです。
けれども、貴方は決して全てを下さらない。
あぁ、私も貴方にこの全てを差し上げられないから、それも仕方のないことなのかもしれない。
貴方には、こんな醜く歪んだ私の心まで知られたくない、貴方は手にすべきではない。
だから今はまだ、このままで。――――