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みとなんこ@紺
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コミュニケーション・ブレイクダンス

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いつもと変わらぬ日だった。
何のかんのと持ち込まれてくるお仕事も、東部に潜伏していると思われるテロ組織の現在の動向に関する報告から、建物のどこどこが傷んでいるためその補修に関する許可証まで、できたら他のしかるべき機関に持ってってくださいと言いたくなるような日常的なものまで幅広く。というか何で軍まで上がってくるんだろう、こんなの。
そういう種種様々な書類に囲まれたその中で、その日も上司は眉間に皺を寄せたまま、山と積まれた中央からの贈り物の中に埋もれていた。
昨日脱走したツケだろうか。傍らに中尉がぴったり付いていて、あれでは逃げ出す事も容易ではないだろう。…というか出来ない事はないのかもしれないが、次やればたぶん動く的にされる事決定。いくらなんでもそれは嫌らしい。
諦めたようにペッタンと判子を押してはサイン・サイン・訂正・再提出。
・・・手際は悪くないはずなんだがどうして減らないんだろう。
何となく不思議に思いながら眺めていると、隣から腕を突かれる。振り返ればブレダが、ん、と書類を付きだしてきた。はいはい、やりますよ大人しく。
「・・・ん?」
しばらくは大人しく書類に目を通していた上司が不意に動きを止めた。
中央から送りつけられてきたファイルを睨み付けている。上から下まで眺め回した後、そのファイルを傍らに放り出し、徐に今まで処理済みの山に積んであったファイルもひっくり返しだす。
なんだなんだ。
突然の行動に、周りはおろか中尉まで口を挟めないでいる。
やがて処理済み・未処理の山からお目当てのファイルだけを抜き出したのか、順番を入れ替えながら、しばし考え込み…。
「ハボック」
え。
「…はい?」
視線を合わせた上司は、思わず姿勢を正してしまうくらい、つまりかつて現場ですら見た事もない程真剣な表情で徐に宣った。

「今から駅封鎖してこい」

「…はぁ?」
我ながらマヌケな声だとは思わなくもなかったが、許されるだろう。多分この場にいる一同同じ感想だったに違いない。
「…あのー、大佐?」
「早くしろ。中央から面倒くさいものが厄介事を連れて来る」
「いやだから、」

「残念でしたー!もう来てるもんねー!」

どういうことですか、と続くはずの質問はバン、と遠慮会釈もなしにブチ開けられたドアの騒音にかき消された。・・・ああ。
何か、ようやく彼が何が言いたかったのか判った気はするが、手遅れなようだった。色々。
「ヒューズ中佐」
いち早く体勢を立て直した中尉の敬礼を皮切りに、一連の事態の流れについて行けていなかった下士官連中も慌てて敬礼の姿勢をとった。その肝心の中佐はああ、いいっていいってとか軽く答えながら勝手知ったる何とやら、ズカズカと司令室に入ってくる。
縦にうるさい軍部にあるまじき光景だが、ここでは恒例になりつつあるおかげでもう誰も気にしない。適当に挨拶を振りまきながらやってきたヒューズは憮然とした顔の親友殿の前に立った。
「何だよ今頃見たのかよ」
「回りくどいマネをするな。来るなら来ると先に連絡よこせ!」
「送ったじゃん、連絡。お前が期日通りに書類処理してりゃ、サバ入れたって一昨日には見てるはずだろが」
もっと言ってやって下さい、中佐。
…ていうかサバって何。
室内の反応は見事に2つに分かれたようだった。