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おとしもの

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「ブライトに連絡すれば良いのか?」
「はぁ?」連絡したってすぐ帰れって言われるだけだろう。

見ると古風な通信機で通話してる。なにやらやり取りした後電話を代われと寄越される。
「はい?」
「アムロ。何やってんだお前は。」

「おれは食事しに出ただけだ。ついでにちょっと昼寝を…。」
「真直ぐ戻れば良かったんだ。」
「良い天気だったからつい…。」あからさまに溜息吐かれて

「お前が戻ってくるまで仮眠するから直接部屋に来い。」
「えー。」
「自分で何とかしろ。」

「…なんだよ。」
「今の俺に出来ることはさして無い。仕事溜めていたお前が悪い。やつに代われ。」
「ぐれてやる…。」ボソッと言うと

「家出するなら手ぶらでしてくれ。ああ。お土産は歓迎するぞ。」
ムカついて無言で通信機を返す。
それからまた二言三言やりあって通信を切った。

「12時まで待ってくれるそうだ。」
「あーそう…。」

寝不足で切れたかもしれないけど…。助けてくれても良いだろうに…。
ぐれてやるー。家出してやるー。クッション抱えてぶつぶつ言ってると

「家出というと砂漠にガンダム持ち出したというあれか?」
「何であなたがそんな事知ってるんだよ。」
「まあ…。書類も読んだんだが…。」

嘘つけ。かなりぼかして書いてあった筈だしだいたいあの頃の書類はほとんど紛失してるぞ。
1年戦争の英雄が最新鋭機もつて脱走じゃまずいからな。
ましてその実体が単なる家出じゃみっともないことこの上ない。じと目で見てると

「情報屋から買った。」カイだな…。何かと引き換えにしたんだろう。

「たまにあの時ガンダムじゃなくコアファイターで出ればよかったかなと思うことがあるよ。ばらしてそのまま脱走して知らないふりして一人で生きていければいっそ世の中もうちょっと平和だったかも…。」

「結果が変わったとでも?」
「いや…。おれじゃないほかの人が似たようなことをしたんじゃないかと思う。そうなるとここに居たのはその誰かだったかもね。」
そのほうがもっと上手く行ってたんじゃないかな。

「本当にそう思うのか。」
「単なる愚痴。」言いたくもなるよ…。

「わたしはきみで良かった。他のものではしっくり来ない。」
「その誰かさんはあなたに協力的かもしれないしじゃないか。」
「その前にわたしを殺していたかもしれないぞ。」

ああ。そう言う事も在り得るか。何でそんな事をなにやら嬉しそうに言うかな?

「止めよう。机上の空論は疲れる。」それより今日の仕事。

「で?何時帰してくれるんだよ。おれ書類仕事時間かかるんだぞ。」
「一緒に食事でそのあとに。」

「えー。食欲ない。」
「軍人たるものどんな時でも食べろ。」
「あなた余裕あるな…。」いっそ嫌味なほどだ。

「予定より早く終わって時間空いたのは確かだ。」
「皆さん優秀で…。」嫌味だな。

だからって人で遊ぶなとかおれのコーヒー返せとかあんな所でなんで連れてかれるんだ自分とかどうせおれは…とか色々あるがまず帰るのが一番だ。
ぐっと押えて食事でも何でもしなきゃ駄目か?荒事は苦手だし銃も無い。その上寝不足でモーローとしてる。
せめて頭をすっくりさせないと。

「コーヒーくれ。」
「あ…。」
「何?」
「無い。」

「4杯分入ってたはずだけど。」おれ一杯しか飲んでない。
「飲んだ。」そんなにコーヒー好きなのか?

「いいけどブライトにお土産もってこいって言われてんだ。代わりに何か入れといてよ。」
「酒とか毒とか…。」
「え?」後半聞えなかったが頭半分寝てるから聞き流す。

「酒なんか飲んだら寝ちゃうよ。徹夜3日目なんだから…。あんなに徹夜するなんてすでに人間じゃないよ。」
「2・3日の徹夜で何言っている。」

「無理。整備ならともかく書類で徹夜なんかしたらもう眠くて…。コーヒー飲んでも駄目…。一杯なんかじゃ効かない…。食事なんかしたら爆睡。」
頼りのコーヒーがないんじゃ…。すでにクッション抱えて寝る体勢。

「大体食べたら頭働かないよ…。まだ仕事あるのに…。」言いながら半分寝てる…。気が遠くなる…。
「駄目…。お休み…。」

「こら、寝るな。わたしも時間作るために徹夜したんだぞ。」揺らされても目が覚めない。クッションかかえたまま
「何で徹夜したぐらいで来れるんだよ…。」
「たまたま来ていたんだ。」

「年度末のどさくさに紛れて何してるんだか…。」
「捕まえてみるか?」
「この状態でそれを言う…。」
凄い嫌味。さすがに目が覚める。でも頭寝てる。

ボーつとしたまま見てると
「きみが休暇を取らされたと言うから捕まえられるかと思って網張っていたんだが…時間作る為に徹夜したんだぞ。」
「無理に作らなくてもいいよ…。」

「折角時間作ったんだから遊んでくれ。」娯楽は他所に求めて欲しいなぁ。

「遊ぶってなんだよ…。」あーもう。こちとら徹夜明けで頭死んでる。
徹夜できない体質なんじゃないかなぁ…。ぼーとしたままだ。

「きみ本当頭寝ているな。」
「うん。寝てる…寝てるから大きい時計を持って服着た二本足歩行のウサギが走り回ってるじゃないか。その周りを数字が跳んでる。」

「…わかったそのまま寝てろ。」
「うん。」眼を瞑るとそのままくー…。

この食料は変わりに食べておいてやる。だめーそれブライトの分―。
かわりを用意してやる。飲み物もー。
…。本当に寝てるのか?うん…寝てるよー。

頭痛い…うーん時間が…時間が…。でっかい数字につぶされるー。

「8時だぞ。」耳もとで声がする。目も開けないで身を起こす。ソファか…。うーん。頭ががんがんす
 る。冷たいものを目に当てられる。

「ありがと…。」
「死んでいるな。」
「書類仕事で徹夜なんて人間のすることじゃないよ…。」

「きみ管理職の端くれだろ。」
「性に合わない。」本部と折衝なんてのは死んでも無理だと思う。

「ブライトは甘やかしすぎだな。」
「こき使われてる…。」
「そうは見えないぞ。」

「そうかな?」とにかく帰って仕事しなきゃ…。目をこすりながら出口に向かう。
「俺が管理職なんてのは人手不足の所為だろ。」ドアの前でノブにかけた手を止められる。

「食事ぐらい付き合ってくれても。」
「食べたら仕事にならないからいい。」

「トレードしないか?」
「駄目。うちはブライトいないと回らない。」

「きみが来るなら2・3人貸してやるぞ。」じっと目を見て「案外けちだね。」

あ。なんかダメージ受けてる。
ようやく頭起きてきた。時計を見ると時間無い。

「それより車捕まえて帰らなきゃ。と。お土産くれ。」
出口のそばにおいてある。律儀だな。溜息ついてドアを開けてくれる。
「ご馳走様。お休み。」
「また…。」

ベーっと舌出して脱兎のごとく駆け下りて車を拾う。財布のお金はぎりぎり。
小言言われながら基地に戻る。ゲートはいると寝不足なブライトがコーヒー飲みながら壁に寄りかかってる。

「どうした?」
「バスケットよこせ。」
「はい。」

「変なものは入ってないな…。」
「たぶん。」
「やつにたたき起こされて愚痴られたぞ。」

「何を?」
「甘やかし過ぎだの寝言が怖いだの逃げ足速いだのずるいだの…。」
作品名:おとしもの 作家名:ぼの