日ベラ小ネタ詰め合わせ
秋色ストライプ
秋、と断言できない暑さが続いていた。
ナターリヤに打ち水をお願いしたものの、蛇口を締めるほうを間違えたことによって、ナターリヤはびっしょりと濡れてしまった。本田は、自分の羽織を肩にかけたナターリヤを未だに直視できないでいた。
「くしゅん!」
日差しは強いが、風は吹いている。この陽気で服が乾く前にナターリヤが風邪をひいてしまうのは自明のことだった。くしゃみをしたナターリヤを、急いで家の浴場に案内する。
「風邪をひいてしまったら申し訳がつきませんから。ちゃんと温まってくださいね。」
「・・・そんなに心配しなくてもいいのに。まあ、風呂には入る。」
着替えを用意しようとした本田だったが、女物の浴衣は先日ナターリヤが着て、クリーニングに出していたことを思い出した。他に女性用の服など本田の家にあるはずもなく、仕方なく自分のYシャツを用意しておいた。スカートは濡れていなかったようだし、問題ないだろう。
居間でぽちくんを撫でていると、風呂からでてきたナターリヤがやってきた。
「あがったぞ」
「は、はい。」
振り返るとナターリヤは本田のYシャツだけを着ていた。スカートは穿いていない。少し大きめな本田のYシャツはナターリヤの太腿を隠していた。白くて細い脚がすらりと伸びている。ナターリヤの格好を見て本田は思わず叫んだ。
「う、うわああああああああああ」
両手で目を覆った本田に、ナターリヤは首を傾げた。
「何をそんなに驚いてるんだ。この着替えはお前が用意したんだろう?」
「す、スカートがあったじゃないですか!とにかく下!下穿いてください!」
慌てる本田とは裏腹に、ナターリヤはああスカートか、と落ち着いて呟いた。
「スカートも濡れてたから洗濯に出したんだ。さっきからなんで目を覆ってるんだ?」
座っている本田と同じ目線になろうとして、ナターリヤは屈んだ。広く開いた襟から、胸元が見えそうになる。
「っ~~~~~~~!ナターリヤさんストップ!はい、起立!そこで止まって動かないでください!」
言われるがまま、ナターリヤは立って身体の動きを止める。本田は胸元に手を置いて、すーはーすーはーと深呼吸した。
「?何してるんだ?」
「貴女の行動は心臓に悪すぎます!もっとじじいの身体を労わってください!」
「はあ?」
ナターリヤは本田の言葉にまた首を傾げたが、本田はそんなことを気にしている余裕などどこにもなかった。
「(し、しましま・・・・)」
口元に手をあてた。頬は真っ赤になっている。
「(そういえばあれ彼シャツとかそういう名称とかだったような・・・はっ私は何を考えているんですか!)」
「本田?」
ぼーっとしたり突然ぶんぶん首を振ったりする本田に、ナターリヤは不思議に思いながら話しかけた。
「な、ナターリヤさんっ!わ、私はなにも見ていませんよ!」
しまった、と口に手をあてる本田を見て、ナターリヤはYシャツの端をぎゅっと掴んだ。
「・・・本田のへんたい。」
真っ赤になって恥ずかしがるナターリヤを見て、珍しいものを見た、と本田は口元を緩ませるのだった。
作品名:日ベラ小ネタ詰め合わせ 作家名:ずーか