日ベラ小ネタ詰め合わせ
原稿とメイド服
「ナターリヤさん・・・これ、着てみませんか・・・?」
本田はフリルのひらひらしたメイド服を手にしていた。
しかもそれを着ろとか言う。
ナターリヤは死ぬほど嫌な顔をして、本田を罵った。
「はあ!?なんで私がそんなものっ!こ、この変態!」
ナターリヤがこの時期の本田の家に来たのは間違いだった。
本田は、まさに締め切りの迫る同人誌の原稿に向き合っていたのだ。
「お願いします!!私のモチベーションをあげてください!ナターリヤさんがこれ着てくれないと原稿が落ちます!」
どうしても、と懇願する本田を見て、ナターリヤの心は少し揺らいだ。
そんなことをしてやる義理もないのだが、困った本田は助けたいとかふざけたことを思ってしまう。恋は盲目ってこういうことか。なんとなく意味が違う気もするけれど。
「・・・・・」
無言で本田を睨みつけるナターリヤを見て、本田は最後の切り札を使う。
「原稿あがったらナターリヤさんの大好きなポトフ作りますから・・・」
ナターリヤは本田が作る料理が大好きだった。
自分では作れないから更に。
最近は本田が原稿で忙しいため、本田の手料理も食べれなかったのだ。
「・・・・わかった・・・。」
5秒ほど躊躇って、小さな声で返事をした。
ナターリヤはしょうがないなあと溜息をついていたので、本田がガッツポーズをしたのに気がつかなかった。
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そもそも本田はどういう経路でこんなものを入手したのだろう、と考えながら着替える。
普段着ている服がメイド服のようなものだから、着替えるのに時間はかからなかった。
しかしいつもの服と決定的に違うのはスカート丈の長さだった。
短い。どうしてこんなに短いのか頭を抱えてしまうほどには短い。
ちょっとでも油断したら中身が見えてしまう。
(あの変態・・・・)
最後に太腿までくるニーハイソックスを穿いてメイドの完成だった。
隣の部屋で原稿とにらめっこしている本田の後ろに立つ。
「き、着たぞ」
卓袱台で漫画を書いていた本田はあぐらを書いていた。
座った本田からスカートの中が見えそうで、ナターリヤは必死にスカートの裾を引っ張る。
「というかなんでこんなに短いんだっ!」
本田はナターリヤを見て10秒ほど固まっていた。
「おい・・・本田・・・?」
ナターリヤが顔を近づけると本田は顔を真っ赤にして飛びのく。
「な、な、ナターリヤさん!よ、よくお似合いですよ・・・! (絶対領域が眩しいです・・・というかさっき近づいた時、谷mいやいやというかぱんtいやいや離れなさい私の煩悩!このままでは余計原稿に支障が・・・!)」
「こ、これで、お前のやる気がでるんだな・・・」
ナターリヤは頬を赤くして、スカートの裾を引っ張っている。
「(とんでもなくかわいい!!!!) は、はい・・・・ええと・・・・写真、とってもいいですか・・・」
どこからともなく本田はデジカメを取り出す。
「だ、だめに決まっt・・・・お、お前が、それで・・・モチベーションがあがる、なら・・・。」
言いかけた言葉を途中で書き消した。
やると決めたからにはとことん付き合ってやるべきだ。
ナターリヤからお許しがでると、本田はすごい勢いで写真を撮り始めた。
動きがいつもの3倍くらい速い。原稿で疲れているはずなのに。
「なんか・・・すごい・・・恥ずかしいんだが・・・」
「恥ずかしがってるナターリヤさんも萌えますハアハア」
本田の舐めるような視線に耐えられなくなってナターリヤは叫んだ。
「いいから早く原稿しろっ!ばか!!」
後に本田は、あのときのナターリヤの蹴りが忘れられないと語るのだった。
作品名:日ベラ小ネタ詰め合わせ 作家名:ずーか