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はるかに長い、坂の向こうに

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校庭の外周を通って、通学路最大の難関といわれる長い坂を下っていく。
高校の校舎は山の中腹にあるため見晴らしは非常に良いが、その反面周りに住宅がない。
日が落ちて暗くなり始めた道は、登下校の時とは違って静かで薄気味悪い。
「…早く帰っちまおうっと」
今日から両親が旅行に出ているため、家には姉弟二人きりだ。
夕食の支度はすでに済ませてあったが、アルフォンスの帰宅する時間が解らなかったので、風呂だけは沸かさないまま学校へ来たのだ。


11年前、大学教授をしているエドワードの父と保育士だったアルフォンスの母が再婚し、二人は家族となった。
連れ子同士のため血のつながりはないが、彼らの持つ髪と瞳は不思議と色味がよく似ており、違和感なく姉弟に見える。
そんなエドワードにとってのアルフォンスは大事な『弟』であり、同時に淡い恋心を抱く相手でもあった。
けれど、それを弟に告げようと思ったことはない。
自分に自信がなかったし、なによりエドワードはずっと、アルフォンスの『姉』だったからだ。
いきなり姉から告白されれば、当然アルフォンスは驚くだろうし戸惑うだろう。
もしかしたらそのせいで、姉弟どころか家族の仲までぎくしゃくしてしまうかもしれない。それだけは絶対に避けたかった。
だからこのまま想いを隠し、許されるだけの間は身内として傍にいさせて貰おう。そう考えている。





薄気味悪い道を早く通り抜けたくて早足になり始めた頃、エドワードは向こうから人が歩いてくるのに気づいた。
並んで歩いているところを見ると、二人組でどちらも若い男のようだ。
もしかしたらエドワードと同じように、高校に忘れ物を取りに来た生徒だろうか。
そんなことを思いながらすれ違うと、男たちの片割れから声を掛けられた。
「…ねえ、きみ」
かすかに笑いを含んだ声。
立ち止まって振り返ると、数歩分しか離れていなかった二人組の顔が判別できた。
片方はひょろりと背が高く、陰気くさそうな顔。
もう一人はそれよりも少し小柄で、同じような顔立ち。
エドワードより年上のようだが、正直な感想を述べるとどちらも女にはもてなさそうな雰囲気だ。
「…何だよ」
「きみさ、あそこの高校の生徒だよね?」
そう言いながら、背の低い方の男が高校の方を指さす。
「そうだけど」
「あの高校さぁ、共学だけど結構可愛いオンナノコいるじゃん」
「好みによるだろうけどな」
「だよねぇ!きみ良く知ってんじゃん」
はは、と背の高い男が笑う。
「それでさぁ、俺たちにも好みがあんの。普段は男勝りなんだけど、脱いだらすごそうな、ギャップのあるオンナノコ」
「……へえ、それで?」
「この間、すっげぇクリーンヒットなオンナノコ見つけたんだよ。だからちょっと、声かけてみようと思ってるんだ」
「ふうん」
適当に聞き流してさっさと帰るか、と思ったところで、にやり、と男たちが顔を歪めた。
「───エドワードっていう子なんだけど、知ってる?」
「!」
エドワードというのは比較的ポピュラーな名前だが、本来男名であるそれを本名として名乗る少女などあまり多くはないはずだ。
名指しされて、思わずびくりと肩を震わせた。
(こいつら、オレのこと……)
「ねえ、知ってるよね?」
「し、知るか!」
「えー嘘だぁ。だって、きみが”エドワードちゃん”だろ?」
思わず言い返すと、背の高い方の男がエドワードに向かって一歩踏み出す。
「…だ、だったら何だっていうんだよ」
じり、と後ずさり、エドワードは身を守るように肩に掛けていたトートバッグを胸の前で抱え込んだ。
「へえ、やっぱ思った通りだ。近くで見れば見るほど、良いカラダしてんじゃん」
「は!?」
「ちょっとで良いからさ、触らせてよ」
「あ、あんたらアホか!誰が触らせっか!」
(こいつら、アルが言ってた変質者だ!)
いきなりセクハラまがいの言葉を投げられ、エドワードはかっと頬に朱を走らせる。
「お断りだ変態!」
「あれぇ、逃げちゃうんだ?」
何とかしてこの場から逃げ出そうと、エドワードはぱっと走り始めた。
動きについていくように、高い位置で束ねたポニーテールが揺れる。
「エドワードちゃんのお家はあっちだろう?」
「そうだよ、そっちは学校じゃん」
「うるせぇ、オマエらには関係ねぇ!」
思わず足が向かったのは───高校の方向。
「…逃げるなよエドワードちゃん、これからお兄さん達がイイコトしてやるからさぁ」
「そうそう。良いモンぶちこんでよがらせてやるよ」
「絶っっ対、お断りだ!」
捕まれかけた腕を何とか振り払い、わずかにバランスを崩しながらも走るペースを上げていく。
(誰か───アル、助けて……っ!)