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はるかに長い、坂の向こうに

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───誰一人としてすれ違わない、長い上り坂。
時折背後を振り返りながら、エドワードは全力で走る。
自分の荒い呼吸の音が、ひどく耳に付く。


背後からは複数の足音。
(もう少し…もう少し、で……っ)
坂を上りきれば、アルフォンスの元へたどり着ける。
(もう少し…!?)
必死に走るエドワードの腕を、誰かが掴んだ。
ぐいっとその腕を引かれ、地面に引き倒される。
(離せ!)
振り払おうとしても、捕まれた腕はびくともしない。
複数の男の、下卑た笑みが降ってくる。
(逃げられないぜ、エドワードちゃん)
(おとなしく俺たちのものになれよ)
両腕を地面に押さえつけられて、シャツが引き裂かれる。
無理矢理両脚を開かされて、誰かの体が間に割り込んでくる。
(いやだ!離せ…触るな、誰か……っ!)
叫んでも、男達はただ面白そうに笑うだけ。
(誰も来やしねぇよ)
(いるのは俺たちとエドワードちゃんだけ。楽しもうぜ?)
首筋に生ぬるい息が吹きかけられ、引き裂かれたシャツの間からいくつもの手がエドワードの肌を這って回る。
ぬるりとした感触が、体じゅうを撫でる。
おぞましくて、気持ちが悪くて。
怖くて怖くて。
イヤだ、イヤだイヤだイヤだ。






たすけて。
この体に触れていいのは。
「アルフォンス……っ!」
ただ一人、オマエだけなんだ。






「───姉さんっ!」
「………っ」
肩を揺さぶられて、エドワードははっと目を開いた。
「大丈夫?」
サイドランプだけを灯した薄暗い自分の部屋、のぞき込んでいたのは心配そうな表情のアルフォンス。
「アル、フォンス…」
「…目、覚めた?」
「……あ、ああ…」
頷いて、胸に手を当てる。



心臓が早鐘を打ち、全身には滝のように汗を掻いて。
寝るために着替えたTシャツが、ひどく湿っていた。
「悪い、うるさかったか?」
その問いかけに、アルフォンスは首を横に振る。
「姉さん、部屋のドア、少し開けて寝てたでしょ?魘されてる声が聞こえたから、勝手に入ってきちゃったんだ。こっちこそごめんね」
肩で息を吐くエドワードの乱れた髪を、指先で梳いて。
「すごい汗かいてる。喉乾いてない?何か持ってくるよ。水にしようか?それとも」
「アルっ!」
すっとベッドサイドから立ち上がろうとした弟の腕を、起きあがってとっさに掴む。
「…オマエ、なんで、こんな時間に」
視界の端に入った時計が指していた時間は、午前2時。
読書などで夜更かしの多いエドワードに比べ、日付が変わる頃には大抵床に就いているアルフォンスが、試験期間以外でこんな時間まで起きていることなど殆ど無い。
その上、弟の衣服や髪に寝起き独特の乱れは全くない。
「───姉さんが」
かすかに笑みを浮かべて、アルフォンスは姉の手をそっと握る。
「あなたがボクを呼んだら、すぐに飛んでいきたかったから。眠ってなんて、いられなかった」
つまり、エドワードが自分を呼ぶ声を聞き逃さないために、アルフォンスはずっと起きていたのだ。
言葉もなく目を見開いたエドワードに、アルフォンスはふわりと笑みを深くする。
「ボクが勝手にやってることだから、気にしないで。姉さんがちゃんと眠れるようなら、ボクも寝るから」
そう言った後、再び汗ばんで湿った髪を撫でられる。
「…そのままじゃ気持ち悪いだろ?シャワー浴びておいでよ。きっと、少しは気分も変わるんじゃないかな」