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みとなんこ@紺
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いつもいつでも

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休み明けの、月曜日の昼休み。


時間は昼休みを経過して5限目に入ろうとしている頃合いだ。
だが、ここ、屋上の風に吹かれながらくたくたと給水塔の影でダベる2人に、チャイムの音は聞こえてこない。
片や給水塔に凭れかかり頭の後ろで組んだ腕に頭を持たせてぼんやりと空を眺め。片や、塔の縁から片足を宙に投げだし、立てた膝に頭を預けて目を閉じている。
退屈な5限目にエスケープを決めこんだ二人は、すっかりまったりモードに切り替えてしまっている。
しかも今日は、珍しいことにパズルの主、闇の番人の方の遊戯が、自主的に、だ。
彼は余程眠いのか目を閉じたまま、サボリに付き合ってくれている(←建前)城之内の質問にぽそりぽそりと答えていた。
「・・・へぇ、そんなことして遊んでたのかよ、お前ら」
よっぽどヒマだったんだな、と呆れ交じりの笑いと感想を漏らしてみたり。
とうの遊戯というと、薄目を開けて苦笑しながらも反論はせずに、まぁね、と短く返して肩を竦めて見せた。
一瞬だけ悪戯っぽい光をはなった赤い色彩に目を奪われる。
つくづく・・・気取った仕種もこちらの遊戯がやるとなんら違和感を感じないというか・・・人の纏う雰囲気という奴は案外馬鹿に出来ないもんだ。
・・・じゃなくて。そんなとこ感心してる場合じゃない。
「・・・で、あいつはどうしたんだ?」
「んー・・・」
珍しく歯切れの悪い返事(?)と逸らされたままの視線。
「おい、何かあったのかよ」
微妙にふらふらしながらも取り合えず朝やってきた時は間違いなく、今の彼が『相棒』と呼ぶ遊戯の方だった筈だ。
それから1限経たないうちだと思う。ふと気がついた時には、今のパズルの主の遊戯に替わっていた。
それから、昼を過ぎても表の遊戯は一度も出てきていない。
何かそれ以外に2人がまともに行動出来なくなる程の事があったんじゃ、という城之内の心配は、しかし速攻で杞憂に終わったようだった。
もう一人の遊戯がひどく穏やかに笑ったのだ。
かつて見たこともないような表情で、ゆっくりとパズルに触れる。
「相棒なら・・・今は眠ってる」
ぽそり、と答える声にすら力がなく、頼りなげではあったけれど。
そこにある柔らかな響きは、聞くものの胸にストンと落ちてくるようなストレートな優しさで。
「・・・そっか」
わけも判らず、ただ聞いているだけで顔に血がのぼってくるような気がして、城之内は慌てて目を伏せた。
なんでオレが照れてんだ・・・。


「で、結局寝たの何時だったんだ?」
城之内としては話題転換を図るつもりで何の気なにしに聞いてみただけだったのだが・・・、どうやらあまり触れて欲しくなかった辺りらしく、お目覚め効果はバツグンだったらしい。
すい、と眠気とは違う意味で細められた赤い瞳が明後日の方向を向く。
・・・をを、珍しい。
これは堪能せねば、と思わず声が弾んだのが判ったのか、ちら、とこちらに向いた瞳が僅かに険を帯びていたが、有利を悟った城之内に怖いモノはない。
「・・・遊戯ィ~?」
一方、遊戯の方は早々に諦めたらしく、降参、と手を上げた。
「試し、と思って一戦してみたんだが、これが結構はまってね。・・・結局、二人とも調子に乗って色々なデュエリストのデッキ作ってみた」
「へぇ、例えば?」
「そうだな、・・・舞とペガサスとか」
「へぇ、舞のデッキか?どっちがどっちやったんだ?」
「ああ・・・、相棒が舞、オレがペガサスのデッキだったぜ」
「げッオマエがペガサスのデッキ使ったのかよ!」
「そんなカオしなくても良いじゃないか」
「だって遊戯の使うペガサスデッキだろ?すっげぇ厄介そう」
酷いな、と苦笑を浮かべて遊戯は続けた。
「面白いデュエルだったぜ。・・・ただ・・・」
「ただ?」
「そろそろ決着がつくな、っていう絶妙のタイミングで相棒に『ハーピーの羽箒』引かれて、仕掛けてた伏せカード全部吹っ飛ばされたけど」
「あ」
そういや彼女のデッキにはあったはずだ、対・伏せカード対策最強のカードが。
・・・しかし、そのタイミングで引くとは、やっぱりさすが遊戯、といったところか。
「かっ飛ばされましたか」
「ああ、すっきりと気持ちよく」
その時の事を思い出したのか、何とも言えない表情で苦笑する遊戯を見ながら、オレも見たかったな、と城之内はカラカラと笑った。
・・・さりげなく微妙~に話題を摩り替えられている事にもまったく頓着せず。
あっさり、というかむしろ嬉々としてハナシにのってきてくれた城之内に、遊戯は内心感謝、とアタマを下げておき、取り合えずそのまま誤魔化すことを決めこんだ。

すまないな、城之内くん

・・・流石に(自分も付いていながら)、寝てない、とは言い辛い。


「遊戯?」
「・・・すまない、ちょっとぼぅっとしてた」
「さっきから珍しいよな、お前。そんなに眠いのか?」
「ま、何とか、ね」
「無理すんなよーって、なぁ他には?」
「そうだな・・・ああ…、相棒のバクラデッキが怖かったぜ」


・・・は?


「こ、こわ・・・?」
聞き間違いでなければ今『怖かった』、って。
「ああ、怖かった。」
しかも、言った本人はいつもと変わらぬ調子で大真面目に頷いているし。

えーっと。

表の遊戯が。
獏良の超オカルトデッキで。
闇のゲームの番人の遊戯相手に。
で、感想が。

…怖かった…?



・・・・・・すんません想像出来ません。



「・・・何、されたんだ?遊戯・・・」
ココロモチ冷や汗なぞかきつつ、顔を引き攣らせながらも恐る恐る問い掛けてくる城之内を、真っ直ぐに見上げる遊戯の顔からは表情が消えている。
沈黙。
「・・・本当に聞きたいかい?城之内くん」
たっぷりの間の後。やはり真顔。
言外に、『後悔しないか?』と問い掛けられているような気がして、城之内は速攻で白旗を振った。


作品名:いつもいつでも 作家名:みとなんこ@紺