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闘神は水影をたどる<完>

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 男は黙って覆面を剥ぎ取り、その布で顔を頓着なく擦った。
 ところどころ浅黒い染め粉を残した、本来の白い肌が摩擦熱で赤く染まった。男はアルの前に進み出ると、連結式三節棍をそっと草の上に置き、そのまま額を地に擦りつけんばかりに膝を折った。
「こたびのことはすべて私が考え、実行させたものです。さきほど殿下に申し上げたことが事実。若君は愚かな私を止めるためこちらに。殿下に不敬を働くためではないことをどうか御心にお留め置きくださいますよう」
「よい」
 アルが言った。男は背中に刃を突き立てられたように硬直した。
「それでそなたは忠義のつもりか」
 湿気深い森に無数のランタンの光がゆらゆらと揺れ、海兵隊を引き連れたサルガンが程なく到着した。
 彼女とガレオンが優男と覆面の男たちを縛り上げ、幌馬車の荷台に押し込めて出発させても、傷の手当てを受けても、アルはそれに対し丁重に礼を述べただけで、あとは空を見つめて唇を引き結んだままだった。フェリドは慌てた。アルが今度こそ泣き出しかねない、と妙な確信を覚えてしまったのだ。
「アル。いまから海へ降りよう」
「はい?」
 アルは空の星をそのまま映し込んだような目を二、三度瞬かせて、いいですよといった。








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作品名:闘神は水影をたどる<完> 作家名:めっこ