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8月

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ジュディスがユーリと出会ったのは6年前の夏真っ盛りの頃だった。
毎年最高記録を出すほどの猛暑に見舞われる日々の中、ジュディスの父親が死んだ。
新しく開発した機械システムがどうやら人体に影響を与える代物だった、と父親の同僚の人たちが噂していたのをジュディスは耳にしながら、どうしようもなく佇んでいた。
自ら実験体になっただの、実験体になってくれた研究者の後を追っただの色々囁かれていたが、どちらにせよもう父親は居ないわけだとジュディスは考えていた。まだ13歳だったジュディスの引き取り手はすぐに現れたので、生活などに関してはなんの心配もしていなかった。
何度か会って喋ったことのある遠い親戚の人で、子どもが二人いたはずと思い、お子さんたちは元気ですか、と尋ねるとリタもカロルも元気よ、とあったかい笑顔と一緒に返ってきたのでジュディスはとても安心した。
葬式はたんたんと続けられて、葬列も長くなったり短くなったりで、ジュディスはその父親のため(そして父と一緒に亡くなった研究者のひとたち)に出来た列を複雑な気持ちで眺めた。
その中に煌びやかな金色と漆を塗ったような黒を見つけて、首を傾げる。
歳はどう見てもジュディスより二つか三つくらい年上くらいだろう少年二人が大人たちの葬列の間を縫うように歩いてきた。黒い少年は金色の少年の腕に手を回し、ゆっくりとした足取りに金色の少年が合わせている様に見えた。何故だか、違和感を感じる。
金色の少年がこの葬式を仕切っている人を見つけて、話しかけたのが見えた。なにを話しているのだろうか、となんとなく覗き見ていると葬列の中から、あの子確か、と呟いたのが聞こえた。

「―――の子だろう。あれ、でも結婚してたっけ?」
「いや、ただの後見人らしかったぞ。血縁関係はもういないらしい」
「かわいそうよね。引き取り手がなくて、たらいまわしにされてるって聞いたわ。盲目らしいし・・・」

もうもく。盲目。
眼が見えてないのか、とジュディスはもう一度黒の少年と金色の少年を見た。違和感を感じたのはそのせいかとぼんやり眺めていると、ふと黒の少年がこちらを見て、ばっちりと眼が合った。
ジュディスは驚いて眼を逸らした。盲目だと言われてるのは彼の方のはずなのに、真っ直ぐに眼が合った気がして仕方なかった。
心臓が落ちつきだすと、引き取り手がないという言葉を思い出してジュディスは少し黒の少年が気になった。

「(すこし、話しが出来たらいいのだけど)」

父が彼の後見人を殺したといっても、間違いではないだろうと、子どもながらに思えたから。


++++


彼の後見人はもう決まってるから安心して、とさわやかに言われたのをジュディスは呆けた顔で受け止めた。
話すことは出来たけれど、金色の少年(フレンという彼)は、黒の少年(ユーリというらしい)を過保護なくらい守るものだから、直接会話が出来ないでいた。

「でも、一言くらい、」
「うん、分かってる。だけど君も身内を亡くされたんだ。君は君の心配をした方がいいと思う」

言葉は丁寧なのにものすごく拒絶されている気がして、ジュディスは眉を寄せた。
さわやかな笑顔を向けられているけれど、嫌味にしか見えないのは何故だろうとジュディスは気づかれない程度にため息を吐いた。此処は引き下がるしかないのか、とちらりと遠目で黒を探すけれど見当たらなかった。

「フレン」

突然彼の後ろから威圧的な低い声がかけられて彼は慌てて駆けて行った。
目の前からフレンがいなくなったことにもう一度ため息を吐くと、悪ぃな、と言う声が背中からかかって驚いて振り返った。
黒い髪に黒い眼。
左手には歩行杖が持たれていて、ジュディスはああやっぱり、と焦点の合わないはずの瞳を見つめた。彼が呆れたように苦笑する。「あいつ、過保護すぎてさ」

「気持ちは分かるから、大丈夫。誰だって大切なものは守りたいでしょう?」
「俺は守られる立場じゃねぇよ。・・・えっと、ジュディス、だっけ」
「ええ。あなたのことは、ユーリ、と呼んでもいいかしら」

どうぞ、と軽く返される。
こつ、と白い杖がアスファルトを叩く音がして杖の先を見る。どう見ても頑丈で値が張りそうなくらい良い杖に見えた。こういったものがどれくらいの値段なのかジュディスには見当もつかなかったが、いいものであるには違いなさそうだった。

「ジュディスが気に病むことはねぇよ。なんていうか、オレの場合は今更だから」

ひらひらと興味なさ気に左手が振られる。
そういう星の下に生まれたんだって思ってる、と割り切ったような表情で言うユーリにジュディスは眉間にしわを寄せた。自虐的に聞こえるのは今の自分の置かれている現状のせいだろうかと考えた。

「でも、ごめんなさい」
「いいって。それに、意外と本人は本望だったんじゃないかって思うし。研究バカだったからな」

口元を吊り上げた笑い方は少し皮肉っているようにも見えたけれど、ジュディスはユーリのそのどうしようもない前向きな発言に肩を震わせて小さく笑った。
するとユーリがぽんぽん、とジュディスの頭を撫でたのでジュディスは驚いてユーリを見た。合わない視線はそのままなのに、動作がやけにはっきりとしていてそれはまるでちゃんと見えているようだった。
遠くからあの威圧感がある低い声が聞こえて振り返ると、白髪の大人とフレンがこちらに向かってきていた。するり、とジュディスの頭の上にあったユーリの手が離れて、じゃあな、とユーリが言うのにジュディスはその手を取った。

「また、ね」

ユーリは驚いたように止まってジュディスが見えてるかのように見ていたが、すぐに苦笑に変わって、再会を拒む言葉をその唇から告げる。

「さよなら」


なぜか、泣きそうになった。





作品名:8月 作家名:水乃