8月
03.向日葵はもう太陽を追いかけない
*注意
ネタがネタなのですが(盲目など)、今回のお話はそれにちょっと深く突っ込んでいる内容なので、不快・許せないと思う方はご注意ください。
障害を患っている方々を誹謗中傷する意図は、一切ございません。
電話があったよ、とカロルが唐突に朝食のときにそう言った。
珍しく朝早くから起きていたリタとハリーと、休日なのでこの家に居座っているレイヴンが朝食の手を止めたりそのまま続行させたりしながら、ハリーが誰から、と聞くとカロルがトーストを景気よく齧ってから、ジュディス、と言ったのにレイヴンが眉を上げた。
「ジュディスって、ジュディスちゃん?」
「うん、たぶん。ボクの言うジュディスとレイヴンのいうジュディスちゃんが同一人物なら」
もぐもぐ、と擬音のつきそうなほど頬を膨らましてものを噛むカロルの言葉に、レイヴンは淹れたてのコーヒーのカップを持ってなにやら考え事をし始めた。
肝心の内容を言ってないことに気づいていないのはカロルとレイヴンくらいだろうと、ハリーと大変どうでもよさそうに新聞を眺めるリタは思いながら、それで、と切り出した。「内容は?」
コップに一杯注がれていた牛乳を半分まで飲んだカロルは、思い出したように、うんそれがね、話しはじめた。
「ちょっとちゃんとぜんぶ飲み込んでから喋りなさいよ!」
「うぁ、ごめん。でね。今日と明日と時間が出来たから戻ってくるって」
嬉しそうに笑いながらそう言うカロルにリタが意外そうに声をあげた。
ジュディスがこの家を出て2年経つが、一度もそんな2日も居られるほど帰ってきたことがなかったからだ。ハリーが仕事に余裕でもできたのかな、と言うとカロルがたぶん、と頷いた。
「そういえばヘルパー始めたとか言ってたわね」
「へるぱー?」
「介助人のこと」
「へぇ! やっぱりジュディスってすごいなぁ」
「昔から面倒見は良かったから、向いてるんだろ」
そんな三人の会話を聞きながらレイヴンはジュディスの外見を思い出そうとした。
が、どう頑張っても4、5年前の彼女しか思い出せなかったので、嗚呼会ってなかったなぁと思い少し椅子に深く座り込む。
そんな様子のレイヴンにカロルは首を傾げて、リタはじと眼で睨み、ハリーは横目で眺めた後、口を開いた。
「レイヴン、コーヒー傾いてるぞ」
「えっ、おぅわっ」
「・・・バカっぽい」
畳んだ新聞を椅子の上に放っておいて、リタはジュディスを迎える準備をカロルと始めた。