リオ・ナユ
「知らないよ。なんでココに来るのさ?知りたいならナユかテッドにでも聞きなよ?」
「でもあの2人がねえ?ちょっと考えられないよね?間違った噂じゃないかなあ?」
まんじゅうを食べながらカイリが言った。
ルックが2人を見て言った。
「そういうあんた達も噂の的って知ってる?」
「は?」
「何で?」
その時まさに今噂の的の2人が通りかかった。
ぱっと見、ナユがテッドをとても気遣っているように見える。
そのテッドはなぜか目の周りには殴られたような痣があり、ナユが氷嚢のようなものをテッドのそこにあてようとして、テッドが大丈夫だと言って・・・・・・
はっとしてナユは飛んできたナイフを叩き落とした。
「お、悪ィ、ナユ。」
叩いてもらったテッドがナユに礼を言った。
いえ・・・とナユは呟き、石板の方を見る。
「いきなり何すんですか、この殺戮魔。」
心なしかいつも以上に冷たく低い調子でナユが言った。
「貴様らは何してる訳?」
「あれ、ナユがテッドを庇ったんじゃ・・・」
「確かに庇ったよねぇ?」
リオの横でルックとカイリは呟いた。
「別に何も・・・てゆーか何なんです?庇ったって?聞こえましたよ?そりゃテッドさん今、僕のせいで目が見えにくくなってんですからね?当然です。」
「いや、まあ、それは気にすんなって。マジで。元はといえば俺が悪いんだし。」
「いえ、だからといって、やりすぎました。ついとは言え・・・」
3人には何だか付き合っている2人のいちゃつきに見える。
まさか噂は本当!?
カイリとルックは顔を合わせた。
リオを見るとうっすらと微笑んでいる。
しかしルックには見えた。
魔王降臨。
慌ててナユ達に聞く。
「え、えーと、2人が今噂になってるけど?」
「は?・・・やっぱり・・・。」
「早えぇな・・・。」
何その反応ー!?
否定なし!?
青い顔のルックはもはやリオを見る事が出来ず、カイリを見る。
しかしカイリまでもが何とも表現し難いうそ臭い儚げな微笑を浮かべている。
逃げたい、でもそれも怖い。
「ナユ?だめだよ?浮気なんて君らしくないよ?よりによって相手はテッドかい?」
微笑んだままカイリはナユに言った。
そしてテッドの方を見る。
薄ら寒い微笑みを浮かべ、静かに続けた。
「テッド?君ってば白昼堂々人目のあるところでもナユに手を出すくらい、好きだったのかい?」
テッドは青くなって言った。
「は?ちょ、何言って・・・」
「っそーですよ!?浮気って何です?またそれですか!?」
「ちょ、ナユ待て。そこは今はおいとけ。今はそれより誤解のが先だろうが。」
テッドに言われ、浮気ってのも立派な誤解じゃ・・・と思いつつナユは黙った。
それを見てからテッドが言った。
「どんな噂になってんのか知んねぇけどな、俺とナユは何もねぇぞ?ありゃたまたま俺がナユん上覆いかぶさって・・・」
3人がピクッとする。
「って全然誤解解けねぇだろーがそれじゃあ、このボケーッ。」
激しい蹴り突っ込みがナユから入った。
って人格違うくね?
テッドは倒されながら内心思った。
「とりあえずっ、事故です。事故で、たまたま他人が見たら、あれ?ってな風に見えただけですよっ。だいだい僕らが訓練所で、何をするってんですか!?ばからしい。ふざけんのもたいがいにしろ、ですよっ。噂といえば貴方達のが先に流れてましたけど!?」
「ああ、そう言えばルックもさっきそんな事言ってたね?」
まあ確かにこの2人に限ってねぇと思いつつカイリは言った。
リオもボソッと言う。
「・・・何の事だ?」
「あー、何でもあんた達2人がキスしようとしてたとか、手を取り合っておしゃべりしてたとか、そんなだけど。」
ルックが言った。
テッドがカイリに言った。
「それこそ、マジなのかよカイリ!?」
「・・・えー?何それ?」
「・・・?」
2人とも訳が分からずといった感じだ。
不意にカイリが手を打った。
「あ、もしかしてあれかな?ほら、俺が目に何か入った時、めずらしくリオが見てくれた事、あったじゃない?」
「・・・ああ。」
「あとさあ、罰と死神じゃあ、どっちがより強力なんだろうかって話してた時あったよねえ?」
「あー、あれ。カイリが死ぬ時ってどっちの紋章が持ってくんだろうってお互いの紋章見ながら言ってたヤツ?」
「つーか何、何気に物騒な会話してんだよ!?お前ら。」
テッドが突っ込んだ。
ルックは脱力して言った。
「ばかばかしい。全部勘違いだろ?ほっとけばいいよ・・・人の噂は75日って言うしね。」
「ってゆーか僕は納得いかないままなんですよ!?何で僕が浮気されたりしたりしなきゃならないんです?相手もいないのに!?」
「うるさいよ?貴様は僕と一緒に行動でもしてりゃあ浮気云々の噂もなくなるよ?」
そう言うと、リオは離せバカとか言っているナユをひっぱりどこかに行ってしまった。
3人は黙ってそれを見送る。
不意にルックがカイリに言った。
「そういえば珍しく怒ってなかったかい、あんた?」
「おや?そうかい?」
「・・・ふん。まあ僕には関係のない事だよ。1人にしてくれない?さっさとあのバカも連れていってよ。」
「ふふ・・・面白い子だね君は。勘ばっかり働かせてるんじゃないよ?まあ、そうだね・・・。じゃ、テッド?行こうか?」
「お?おお。」
訳が分からない様子のテッドを連れて、ルックにニッコリ笑いかけ、カイリも帰っていった。
ルックは疲れた様子でため息をついた。
「はぁ。痴話喧嘩はよそでやって欲しいね、疲れるったらない。」