リオ・ナユ
そうしたら、こっちもそれに応じれる。
そして今回のコトは何もなかったように・・・。
「えーと、なんで向こう向いたままなんです?」
「・・・」
「別にハーブのせいなんですし、てゆーか、謝られたり黙られたりされても、逆に困りますんで普通にー」
話しながら近づいてさっと前に回り込んだ。
ナユは言葉が途切れた。
不意をつかれたリオは慌ててさっと横を向いたが、顔が赤くなっていた。
・・・あのリオが?
さっきから、焦り困った様子をみせたり、慌てたり、挙句の果てに赤くなってる・・・!?
前に一度作り物でない笑顔を見た時をふと思い出した。
ナユは驚き唖然となった。
暫く呆然としていたようである。
「・・・。・・・貴様は・・・貴様は何さっきからまぬけな顔をしてる訳?」
その声にナユは我に返った。
いつもの口調のリオ。
はっとしてリオを見ると、すでにいつものリオの顔。
うっすら作ったような笑みを浮かべた小悪魔のような、リオ。
「あ、い、いえ・・・。」
すっとリオの手がのび、トン、とナユの胸の真ん中辺りを突いた。不意に突かれた為よろけて半歩程後ろへ下がった。
「前、留めれば?それとも僕が留めるか、いっそ脱がせようか?」
「えっ遠慮します!!」
ナユは慌てて前を留めていった。
でも、良かった。いつものリオだ。
いつものリオに戻ってくれた。
気にせずにいてくれたようだ・・・って、ここは自分が気にするところなんじゃあ・・・。
まあ、表情の作れない素のリオを見れたのもレアで良かったかな・・・。
ナユはつらつらと考えていたようだ。
気付けばリオの手が頬にのびていた。
「?」
頬からすーっと顎に移り、顔をくいっと持ち上げられた。
リオがニッコリ笑って言った。
「貴様、またまぬけな顔してるよ?」
「なっ、失礼なコト言わないで下さい。なんですかさっきから、まぬけって・・・」
すっとリオが近づき、ナユの頬にチュッと口づけた。
そしてまたニッコリ笑って離れた。
「オヤスミ。」
そしてリオは部屋から出て行った。
その間ナユは固まったままだったが、パタンとドアが閉まる音で我に返った。
「な、なっ・・・」
辛うじて今が夜も遅い事に気付き、口に両手をあてて叫びそうになる自分を押さえた。
翌日、なんだか疲れが取れてないような感じだ、とボーっとしたままナユは起きた。
着替えようと前を外し上着を脱ぐ。
「!!」
またもや城中に響き渡るナユの声。
それで目が覚めた者も、すでに起きていて聞いていた者も、またか、ともはや気にも留めない。
この様子だと、朝に暴漢に襲われて叫んでも、狼と少年状態になる事山の如し。
「わ、そうだった・・・。」
1人で赤くなるナユ。
無防備に自分の上半身を見て、思わず叫んでいた。
その所々についている痣は、朝にみるとなんだか生々しかった。
そしてナユに昨夜の事をまざまざと思い出させた。
こんな痣を付けられた事も、あんな深いキスも、何もかも今までまったくナユには経験のない事だった。
すごく怖くて嫌なはずなのに、なぜか思い出すとドキドキした。
そしてどこかの芯が疼くような妙な感覚がした。
そうだ、しかもリオは出て行きしなに自分の頬にキスしていった。
正常だった筈なのに?
あれはいつもの悪戯の一種だったのだろうか・・・。
「・・・」
自分の顔が熱い。なぜか走った後のように動悸がする。おまけに自分の体が反応しているのが嫌だ。
「・・・冷たいシャワー浴びよう・・・。ってこの、痣だらけの体で!?・・・でもまだ今の時間なら誰もいないか・・・?」
服を着ていてもなんとなく人目を憚るように急ぎ足で風呂にナユは向かった。
出来れば今度、自分の部屋にも風呂かせめてシャワー室でも作ってもらいたいな、などと思いつつ急いで服を脱いで風呂場に入った。
誰もいない事に安堵し、まず冷たいシャワーを浴びた。
そしてホッとしつつ、ついでに体を洗ってから湯につかった。
「あれ、ナユ様。」
「あ、ホントだ。」
「なんでいる訳?」
しばらく気持ちよく浸かっているとフッチ、サスケ、ルックが入ってきた。
「っわっっ。」
思わずびっくりして声をあげた。ルックがあきれたように言った。
「・・・君、今朝も叫んでたよね?うるさいんだよ、まったく。」
「え?いいじゃないルック。おかげで僕も目が覚めたし。ああ、それで朝錬でもしようかと思ってたらサスケに会ったんで、丁度いい機会だと思ってルックも誘って技の練習してたんですよ。」
フッチがナユに説明した。サスケが続ける。
「そうそう。だっていっつもルックがさー、敵どころか俺らにまで魔法くらわすんだもんなー。あれ、どうにかしてもらわなきゃね。」
「・・・僕は君たちと攻撃するのは遠慮したいんだよね。ったく朝っぱらからも、いい迷惑だよ。」
ルックは心底嫌そうに言った。
多分一緒に攻撃するのが嫌というより、攻撃名が嫌なんだろうと思われる。
そして3人はそのまま体等を洗い始めた。
ナユは必要以上に湯に浸かり込み、目をキョトキョトさせながら考えていた。
・・・どうする、今上がれば見つからないだろうか?
いや、少なくともフッチとサスケは自分の方を見るに違いない。
とは言ってもこのままだと上がる機会がない。
今でも出来れば上がりたい状態なのにこのままだとのぼせてしまう。
しかし考えても一向に良い答えが出ない。そうこうしている内に、3人ともが湯に浸かりに来た。
「ナユ様長湯ですね?のぼせませんか?」
「は、はは・・・(すでにのぼせそうですが・・・)。」
「ほんと、なんか顔とか体赤くなってんぜ?もう上がったほうがいーんじゃないの?」
「んー・・・(そうだ、全身赤くなればこれも目立たなくなるんじゃ・・・?)。」
「ちょっと、ほんとにもう上がりなよ。倒れられたら鬱陶しい・・・ってなんかおかしいよ?」
ルックに無理やり体を引っ張り上げられる。
ナギは少しボーっとした頭で、ルックて意外に力持ちじゃないか、前衛でも大丈夫じゃないのかと、まったく関係ない事を考えていた。
それからはっとした。
こんな事考えている場合じゃない。
今自分は湯から上半身出ているのでは・・・?
「ってこれ、どうしたの?痣!?誰かに殴られたかなんかか!?」
サスケは見当違いの事を言っていた。
でもいっそ、そう思われた方が良いな、とナギが思っていると、フッチが少し赤くなって言った。
「・・・違うよ、サスケ。そんな小さな殴り痣なんてある訳ないじゃないか。これは、その、キスマークだよ・・・。」
そして困ったように目を逸らした。
ルックが呆れて言った。
「・・・また派手につけられたもんだね・・・。リオかい?」
「っええ?なんで相手があの人だって分かるんです!?」
言ってしまってから、自分で肯定したも同然だという事にナユは気付いて口を押さえ、赤くなった。
フッチとサスケも赤くなっている。ルックは呆れ顔のままため息をついた。
「いや、えーっと、違うんですって。その、コレ、ホントに事故で・・・」
「すごい事故もあったもんだね?」
「ホントなんですってー。カイリさんのハーブのせいなんですから。」