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リオ・ナユ

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思慕



いつもは出かけても2、3日もすれば戻ってきていたリオが、戻ってこない。

姿が見えなくなって一週間は経つ。

その間ナユは忙しく働いていた。
それこそ働きすぎるくらいに。

「ナユ様、ここんとこどうされたんでしょう。」
「なんだかねえ・・・。」

周りでは心配する者が少なくなかった。
時には鬼のようなこの子供は、やはりリーダーになる程の者のようで、何やかんや言っても皆に慕われていた。

「オイ、お前働きすぎじゃねえか?少し休めよ。」

さすがのビクトールも心配して声を掛けてきた。

「・・・はあ。」
「ほら、ここの村の対応なら俺らでも問題ねえから。ナユ、ちょっと部屋で一眠りしてろ。」

そう言ってナユの持っていた書類を取り上げて、ビクトールはナユを追い立てた。
手持ち無沙汰となってしまい、仕方なくナユは部屋へ帰っていった。
それを見送ってビクトールはフリックに言った。

「・・・あいつ、どうしたってんだあ?」
「ああ、もしかしてあれじゃないか?ここんとこリオを見ていないし。」
「あー。でもよォ、ナユってもともとどっちかってえとリオの事、嫌ってっか苦手か何かじゃなかったか?なんか周りではいつの間にやらデキてんだかなんだかって目で見てるみてえけどよ?」
「・・・まあ、そういう事もあるさ・・・」
「は?」
「いいじゃないか。ほら、さっさとかたずけちまおうぜ?」
「お?おお。そうだな。ぱーっとやっちまって酒でも飲みに行くかあ。」
「・・・お前はそればっかりだな、まあ、それも良かろう。」

一方ナユは部屋に戻ったはいいが、ベッドに腰掛けてため息をついていた。

周りではなぜか自分が働くのを見て心配している。

そんなに働きすぎていただろうか?
とりあえず動いている方が楽だからそうしていただけだが・・・。

じっとしているとふと考え込んでしまう。
自分では考えたくもないはずの事を。


リオはどうしてしまったのだろう。

いつもならこんなに顔を見ない事はなかった。
リオの嘘ものの笑顔、子悪魔のようなリオ、ナイフを投げているリオ、棍を振るリオ、嬉々として敵を殺るリオ、血も凍るような表情のリオ、・・・・・ろくでもない殺戮魔だ・・・。
でも不意に見せた笑顔や困った顔、赤くなった顔、天使のような寝顔・・・。

・・・そういえば女性には優しい、割と。僕達には悪魔だけど。
なのに心から怖い訳でも、嫌なヤツと思う訳でもない。
あんなに誰彼となく、棍やナイフとかだけでなく手や足も速くて、やっつけてしまうような人なのに。
ああ、手がはやいといえば、この間頬にキスされたっけ?ってゆっても、覚えはないけどすでに何度も僕から寝ぼけてキスしているみたいだけど・・・。
てゆーかハーブのせいで危うくそれ以上のこともされるところだったな。
ようやくあの痕も消えて、良かった。
風呂作れって言った時のシュウの怪訝そうな顔。
あれは絶対、大人なコトをした時に使うつもりだとでも思ったに違いない。睨みつけたら目を逸らしてたけど。
冗談じゃない。
僕はまだ今のところ清純派なんだから・・・って今のところってなんだよ。
ってゆーかなんでここで殺戮魔の顔を思い浮かべてんだよ、バカじゃないの?

でも殺戮魔だけど、悪魔だけど・・・ほんとにそう?

僕にナイフ投げつけるくせに危ない時には助けてくれた。
意地悪言ったり、からかったりするけど、実際無理やり無体なコトはしない。
あの時の後もそのままいつものようにベッドに入らず、部屋から出ていった。

・・・でもそこからリオに会ってない・・・。

そんななら、いっそ一緒に・・・ってあーもーまただ!!


ナユはため息をついた。

また自分は同じような事を取りとめもなく考えていた。
イラつく。
だから動いて何も考えずに済む方がいいのに。
今、何時だ?
僕はどれくらいここでじっと同じ事を考えていた?

気付けば辺りはもう暗くなっている。


そっと部屋を覗いていたカイリ、テッド、ルックの3人はドアを静かに閉め、歩き出した。

「あれはヤバいんじゃないのか?あいつ、働きまくってるか、部屋で何時間もああしてるかで、ろくに食ってもねえし寝てねえんじゃね?」
「・・・そうだねえ。ルック、まだ分からないのかい?」
「ああ、何かリオの気配がなぜか凄く分かり辛いんだ。僕の知らないトコにいる以外になんか・・・」
リオがいなくなって5日目位から、ナユが変だしさすがに音沙汰のないリオもおかしいと思ったルックは、リオの紋章の気配を探っていた。
だが2人に言ったように、なぜかなかなか場所が判明しない。

ただ、3人が感じている事があった。
リオの戻ってこない理由。それはー

“ビッキーに間違って知らないところに飛ばされたんじゃね?”

いくら、いきなりフラッとどこかに行く癖があると言っても、たいした荷物も持っていないだろうに、誰にも黙って1週間もいなくなる事はないだろう。
3年前には理由もあっただろうが、今は理由なんてもの何一つない。
それに、カイリのやらかした事で、普通の人なら恥ずかしくて消えてしまいたいと、もしかしたら思うかもしれない例の未遂事件だって、あのリオが“消えちゃいたい”などと思うはずもなく。
それどころか、それをいい事に一歩どころか10歩は前に強引に進めようとするだろう。
もしそこまで人でなしでなくても(相手はナユだし)、何もなかったかのように今、ここにいるはずである。

3人は意見が一致したところでビッキーに聞きに言った。

「ああ、そういえばこの間の夜、外に出ようとされていたのか、歩いていくリオさんを見たかもしれません。あれ?見なかったかも?」
「・・・絶対お前、昔より酷くなってるよな・・・。」

テッドが呆れて言った。カイリが微笑んだ。

「ふふ・・・。じゃあ、間違ってテレポートしちゃった覚えはないのかい?」
「え?そうですね。お1人で頼みにこられた事はないです。」
「・・・おかしいな・・・。」

ルックが呟いた。
3人とも、考えが間違っていたのか・・・?と思っていると、ビッキーが思い出したように言った。

「あ。そういえばこの間の夜、リオさんを見かけた時、わたしくしゃみしてしまって・・・、そしたらリオさん、いなくなったような?」

それだー!!

3人は青い顔で内心叫んだ。

テレポートミスよりも酷い。
下手したら場所どころの問題ではない。時代さえ超えてしまっている可能性だってなくはない。

「ちょ、まずいんじゃね?」
「うーん、予想の範疇を超えたねえ。・・・あー、もしかして・・・。いや、でも・・・まさか・・・」
「何なのさ?」

珍しく何か考え込んでいる様子のカイリにルックが聞いた。

「いや、ね?初めて君たちにここの町中で会った時、なんだかリオ達に初めて会ったような気がしなかったんだよねえ・・・。」
「は?」
「ああ、そういやそんな事言ってたような気がするな。だから何だよ?」

テッドが聞いた。

「いや、こんだけ生きてきて色んな人見てきてるから、確信なんて何一つないんだけどね?俺、昔あの戦いの中、船ん中でリオ達に会ってたかもしれない。」
「何だって!?」
「つーか俺はそんな記憶ねえぞ?」
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ