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リオ・ナユ

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横でコウの姉らしい少女が泣きながら、どうか助けて欲しいと言っていた。ナユはさらっと言った。

「行きましょう。」
「僕も行くよ?」

ニッコリとリオが言う。リオを知る3人は、えっ、とリオを見る。
あのリオが個人的な人助け!?

「コレも喰いたくてうずうずしているみたいだし?」

そっと手を掲げる。紋章が反応していた。
そこかー!!と3人は心でつっ込んだ。

「とりあえずその辺はどうでもいいんで、早く行きますよ?」

ナユが軽く流して外に出て行った。
他も後に続き、6人は山の中へ入っていった。

「あのー、新しく仲間になった人?あたしナナミ。ナユのお姉ちゃんなの。」

初めて見る人に気付いたナナミが、リオに話しかけた。

「そう、姉弟なんだ?僕はリオ。よろしくね?」
「ちょっとナナミ、その人に近寄らないほうがいいから。」

気付いたナユがリオの側からナナミを離す。

「えー?ちょっと、失礼だよ?リオさんに謝りなさい?ナユ。」
「ほんと失礼だよね?」
「何言ってんですか。てゆーか僕はあなたを仲間に誘った覚えはありませんよ。助けに行くのも僕達で十分なんで、とっとと消えて下さい。」

そんな事を言いながら、次々と襲って来るトラや鎧兜や中華娘達を倒していく。

「まぁ、そう言うなよ、ナユ。こいつはこんなでも、確かにすげえ戦力になるぞぉ。俺が保障する。」
「何てったってトランの英雄とまで言われているヤツだからな。」

ビクトールとフリックが言った。
リオという名前に心当たりはあったが、まさかやっぱりそうなのか?
この人が!?

「お前達に保障されるいわれはないケドね?何、何も言わずに消えてる訳?あの状態、明らかに死んだと思うよね?普通。」

ニヤッとしてリオが2人に言う。

「いや、俺はてっきりこいつがちゃんと説明しているものと・・・」
「あーなんつーか、その」

青くしどろもどろになる2人。

「覚悟は出来ているんだろうね?」
「ちょっと待て、さっきすでに覚悟する間もなくやられたよな!?」

フリックがつっ込む。
その間にルックが今の話をもう少し詳しくナユとナナミに話していた。
今までも三年前の戦いに参加していた者がビクトール達に会って、みせる態度を見ていた2人は、なるほど、と納得した。

そうこうしている内に山賊達に出会った。
しかし彼らはリオとナユに気付くと、バカみたいにあっけなく逃げていっしまった。どうやらリオだけでなく、ナユもこんな所にまで知れ渡っているらしい。

リオは殺る機会を失って、おもしろくなさそうだった。

「トランの英雄が殺戮魔だったなんて・・・。」

ため息をついてナユが言った。
棍を構え、リオがニッコリとしてナユに言う。

「へえ、言うね?キサマ。いい度胸じゃない。」
「僕は思った事を言ったまでです。」

ナユもニッコリとしてトンファーを構える。

「ちょっと2人ともそんな事して遊んでる場合じゃないでしょう?」

青くなる3人とは別に、のん気な事を言うナナミ。
そのナナミがふと何かに気付いて更に言った。

「ねえ、あれ・・・、倒れているの、コウくんじゃない?」

向こうのほうで倒れている子供に気付き、ナナミはそちらへ駆け寄ろうとした。

「ちょっと待って!!ナナミ。」
化物の気配を感じ、ナユはナナミを止めた。他の者も武器を構える。

現れたのは何とも気持ちの悪い鮮やかな色をした巨大芋虫だった。

「うわーグロテスク。」
「言ってる場合!?」

ルックがそう言いながら切り裂きを放つ。
フリックも紋章を使い、芋虫に雷を落とす。
他の、ナユ達は武器を使って攻撃する。

「ソウルイーターとやらで魂をとらないんですか?」

ナユがトンファーで殴りつけながら聞く。

「えー?こんなグロい虫の魂いらない。殴りがいあるしね?」

そう言ってリオはヒュッと棍を振り下ろす。
芋虫の様子がおかしくなった。
殺ったか?皆がそう思った時、芋虫が変化しだした。

「何コレ。今度は蛾?」

化物はパワーアップしていた。おまけに毒を持っていると思われる粉を飛ばしてくる。

「うっとおしいな・・・」

ルックがつぶやいた。

「ああ、なんか面倒だよね?ちょっとキサマ、力貸しなよ?」
「何を・・・」

リオがソウルイーターを宿している手を上げる。
とてつもない気配がただよう。

その時ナユの紋章が熱くなり反応しだした。
ナユも手を上げた。

二つの力が交わる。
何かとてつもない力の気配が辺りを包む。
急に6人の体力が最高にまで回復したかと思うと、ものすごい何かが化物を襲う。

あっという間に辺りは静寂に包まれた。

「紋章の共鳴か・・・」

ルックが呟く。
他の者は唖然としていた。

それからはっとしたナユがコウの方へ駆け寄る。皆も後へ続いた。

「この子、さっきの毒かなんかにやられているようです。医者にみせないと・・・」

ナユが言ったのを聞いて、リオが言った。

「ここからだとバナーに戻るよりグレッグミンスターに行ったほうがいいな・・・。リュウカンに診せよう。」

国境に着くと、そこにもリオの昔の仲間がいたようで、丁重に扱われ、すぐさま馬車で移動した。

グレッグミンスターに着くとそのまま城へ向かい、コウはリュウカンと呼ばれる医者らしき老人とともにどこかへ連れていかれた。
それを見届け、そのまま出ようとしたリオと共に、レパント大統領の所まで案内された。

驚いた事にリオを見るなり大統領の席をゆずろうとするレパント。
こんなヤツに大統領させたらダメだろうとナユは内心思った。
ただリオもまったくその席に興味がない様子で、それよりも、とレパントに言った。

「何アレ?何勝手に気持ち悪いコトしてくれちゃってる訳?今すぐ撤去すれば?じゃなかったら僕が潰す。」
「フフフ・・・。いくらリオ様と言えども、国民の大切な公共財産を潰す訳には参りますまい?あれらは皆とても気にいっていて、見学者が絶えないものなのです。そんな国民の宝をあなたは潰せ、と?」
「ふん、狸が・・・。仕方ない、但し。あれ以上増やすな?次見た時増えていたら、その時は問答無用でぶっ潰すからね?」
「かしこまりました。」

ああ、あの彫刻とかの展示か・・・。
確かにアレには同情する・・・ナユは思い出してため息をついた。

その後、リオの家の人たちが城の外で待っており、そのままリオの生家で一泊し(でかい家だった)、次の日にはコウ少年も元気になっていたので、そのまま出発する。

道中それはそれは活き活きと、トラやらを瞬殺していくリオ。
ルックは後衛であきれたようにその様子を見ている。もちろん見ているだけで何もしない。
ナナミはコウを守っている。敵からも、前での虐殺光景からも。
ビクトールとフリックは自分達が動く前に、リオとナユによって倒されてしまう為、暇そうである。見た目もきれいなものである。
たまにナユに、遅すぎるんですよ、と蹴りを入れられてはいるが。
リオとナユは殺ってきた敵の返り血で血まみれであった。

そうして無事バナーの村に着き、コウ少年は大感謝の姉と共に帰っていった。
今では2人の英雄をきちんと認識している。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ