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リオ・ナユ

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帰還…群島諸国編



3日後船は出港した。

「久しぶりに宴会だな。」

誰ともなく言って、いつもの如く宴会が始まる。
何が久しぶり、だ。本当に飲むのが好きな者ばかりだ。

「おめえらって、ほんと仲良いよな?」

船上に戻った時点で2人はまたうみとソラに戻った。
今も仲良さげに並んで座っていた。一緒に飲んでいた海賊の1人が羨ましげに言う。

「そう?まあ、恋人だからね?」

当たり前だというようにリオが答える。

「ちぇっ。当てられるぜ。俺も恋人欲しいなあ。」
「あれ?おめえ、この間の子はよ?」
「あれはちげーよ。あれはちょっとした遊びだよ。」
「なんだよ、俺はそんな相手すらいねーってんだよ。」

一緒に飲んでいる海賊達が盛り上がる。リオも時折振られては答え、皆で笑い合う。
男同士の話。
ナユは酒ではなくジュースを飲みながら黙って聞いていた。
女の話やY談やら、そんな話ばかりだ。
ふと思った。

「ねえ、そう言えば、なんで僕にはそういう話振ってこないんです?仲間はずれですか?」
「えっ、そんなんじゃねえけどよ。」
「何つーか、ほら。」
「ちょっと。・・・あんたら僕も男だって忘れてませんよね?」
「いやー、別にそういう訳ってんじゃねえけどよー?」

歯切れが悪かったり、妙にもじもじする者もいる。
ナユはジロッと皆を見た。
リオがナユを抱き寄せて言った。

「君があんまりかわいいから、皆それ系の話を君に言いにくいんだよ?いいじゃない。許してやりなよ?」
「ちょ、離して・・・。かわいいって・・・もう・・・。」

周りは指笛を鳴らしはやしたてた。
ナユは演じつつも内心ドキドキしていた。

てゆーかこれじゃあ、恋する乙女だ。
女みたい。
ため息をついた。

「どうしたの?疲れた?」
「え?ああ、そうですね。大丈夫ですけど、ちょっと外の空気吸ってきます。貴方はここで皆と飲んでて下さい。」

そう言ってリオから離れて手を振り、階段を上がってサロン2階から外に出た。
気温は少し下がっており、風が気持ちいい。

出港したばかりだし、宴会しているという事もあり、デッキには誰もいないようだった。
ナユは海を覗き込んだ。夜の海はなんだかぞっとする。
ぶるっと震えて向き直り、柵にもたれかかって目を瞑った。

外は静かで波の音が響く。穏やかな気持ちになってくる。

「乙女上等。幸せかも・・・」
「何がだい?」
「誰かを好きでいる事がですよって、誰っ!?」

周りを見渡すと、暗くて見えにくいが隅の方で何かが動いた。

じっと見ると人のようだ。
ナユが来る前からそこに座ってたのだろう。

「好き、かあ。ふふ。いいね?あ、君もこっち来て座らない?」
「その声・・・。カ、イリさん・・・?」
「当たり。おいでよ?ああ、大丈夫。君、えっとソラだっけ?何もしないから。恋する少年に無茶する程頭悪くないよ?」

出来ればあまり接触したくはなかったのだが、かといって逃げ出すのも変だろう。
ナユはそちらへ行った。
近づくとぼんやり姿が分かった。

「どうぞ、座んなよ?」
「あ、はい。えーと、こんな所で1人で何なさってたんです?」
「うーん、瞑想、かな?で?好きって、うみの事かい?」
「え?はい。」
「で、幸せだなって?いいね、それ。誰かを好きで、幸せ、かあ。」

心なしか自分の知っているカイリと話し方が違う。

それはそうか。
ここにいるカイリは正真正銘の17歳なのだし。

「えーと、カイリさんは好きな人いないんですか?」
「うん、いないなあ。好きな人、いれば良いけど、だからって作れるものでもないしね?ああ、恋愛感情なしの好きなら沢山いるけどね。」

そう言ってなんだか淋しげに微笑んだ。
その顔がせつなかった。

「・・・1人でこんな所で瞑想とか、なんか寂しいじゃないですか・・・。」
「?なんで君がそんな顔してるのかな?・・・ふふ、色々ね、考えたりとか覚悟、する為にね?」

覚悟・・・。

軽く言っているけど、多分相当重い筈だ。
要は死の覚悟なのだろうから。

でも、だからと言ってどうする事も出来ない。
未来の事を伝える訳にもいかない。
自分はカイリが大丈夫だと言いたいが、“死”に向かうしかないと思っているカイリに何もして上げられない。

ナユは唇を噛み締めていたが、とっさにカイリを抱きしめていた。

「・・・無責任な事しか言えません。でも・・・自暴自棄にだけはならないで下さい・・・。お願いします・・・。どんな時にも希望はあるんだって思ってて下さい。あなたには、あなたをとても大切に思っている仲間がいる事を忘れないで・・・?あなたが辛い思いをしている事が分かっていても何もして上げられなくって悲しいと思ってるんです。とても大切に思ってるんです。勿論あなたも承知なんでしょうけど・・・。でも言わずにはいられなくて・・・。そんな人達の為にも、どうか希望を捨てないで下さい・・・。」

されるがまま呆然と話を聞いていたカイリがナユをそっと抱き返した。

「・・・ありがとう・・・。・・・ごめん、暫くこのままで、いて、貰っても、いい、かな・・・?」

ナユは抱きしめたまま、コクンと頷いた。そして2人は黙ったまま抱き合っていた。

「・・・まったく・・・。」

様子を見に来たリオがかげで邪魔しないよう完全に気配を消して、そっと見ていた。
そしてため息をついて踵を返し、下へ降りていった。
作品名:リオ・ナユ 作家名:かなみ