リオ・ナユ
爾後
「やあ、お帰り。」
目の前でさっきまで見ていたのと一見変わりないカイリが微笑んでいた。
ただ、こちらのカイリの方が柔らかい笑顔をしていた。
テッドと、ルックまでもがホッとした顔をしている。
「帰って、これたんだ・・・。」
ナユは呟いた。
気付けばリオはすでにナユを離し、とりあえず皆に礼を言ったかと思うと、テッドに“ローブ男ー”とからかっている。ナユは呆れつつもさっき見たテッドのローブ姿を思い出し、プッと笑ってしまった。テッドもうるせえっといいながらも笑っていた。
「無事で良かったですね・・・」
そう言い、しばらくしたら、レックナートはする事があるのでと断り、その場から去っていった。
ナユもお礼を言った。ルックはレックナートについて行った。
「・・・やっぱりあの子は君だったんだねえ。改めて、ありがとう、ナユ。とってもうれしかったんだよ?」
カイリはそう言ってナユを抱きしめた。
「前にも言ったようにね?ずっと心に残ってたんだよ?」
「あ・・・そういえば、そんな事が・・・」
前に一度カイリに励まされた事があった。
その時にそういえばそんな事を言っていた。
励まされた事はよく覚えていたが、昔会った自分に似た、云々はすっかり忘れていた。
ああ、そうだったのか・・・。
「おい、感謝は分かったけど、いつまで抱きしめている訳?オマエは?」
「あ、バレた?」
ふふ、と笑いながらカイリはナユを離した。
ナユは周りを見渡して言った。
「なんかすごく、あなた達に会うのが久しぶりのような気がします。」
「ああ、そうか。そういや向こうでは何日も過ごしていたんだよな。でもこっちじゃ10分も経たないんじゃね?」
テッドが言った。
たったそんな時間しか経っていないとは。本当に、存在しない時間を自分達は過ごしてきたんだと改めて思った。
「じゃあ、そろそろ戻るよ?」
戻ってきたルックが言い、5人はテレポートで城に戻って来た。
「わ・・・、何かここまでも懐かしい気がします。」
石板前に着くとナユが静かに言った。
もう夜中になっているようで、このホールも人気がない。
「なんだか僕は疲れたよ。もう休ませてもらう。」
ルックがため息をついて消えた。
「そうだねえ、紋章に集中してるのって意外に疲れるものなんだねえ?」
カイリも欠伸をしながら言った。
そして、じゃあまた明日、とテッドともども部屋に帰っていった。
「何だか時差ぼけのような気分ですね?さっきまで午前中だったわけですし・・・。」
ナユが歩き出しながらリオに言った。
「眠くないって事?ふふ、大丈夫だよ?すぐに疲れるから。」
さっとリオはナユを担いでエレベータに乗り込みながら言った。
「ちょ、いきなり何するんですか!?それに、疲れるって、なぜです?」
「貴様はもう忘れた訳?言った事は守らせてもらうよ?」
言った、事・・・?
リオはナユを担いだまま5階に着くとエレベータから降り、そのままナユの部屋に入った。
・・・言った事・・・。
って、まさか!?
ナユは担がれたままハッとした。
「思い出した?」
リオがニッコリとしてナユをベッドに投げ出した。
「え、あの、ちょ、えっと、その、心の準備が・・・」
「もうあの時にしたんじゃないの?」
ドギマギしながら焦って言うナユにリオが近づいて言った。
「いや、あの時は勢いもあって・・・だから・・・」
「知らないよ?言ったろう?泣こうが喚こうがいただくって?」
顔を近づけそう言ったかと思うと、リオはナユに口づけた。
翌日昼前、レストランの近くでテッドはリオに会ったので声をかけた。
「お、リオ。ナユはどうしたんだ?なんか部屋のドアにも立入禁止の札がかかってるらしいけど?もう昼だぜ?」
「動けないみたいだよ?疲れたかなにかだろ?僕は代わりに昼食をとりに来ただけだよ。」
「・・・お前がナユの飯取りにきたあ?どーゆー風の吹き回しだ?何かあったのか?」
「何も?まあ、アレには迎えに来てもらったり、世話になったしね?じゃあ僕はもどるよ。」
食べ物や飲み物が入ったバスケットを持って、リオは行ってしまった。
テッドは嵐でもくるんじゃ?と思いつつレストランに入って行った。
一方リオはナユのいる部屋に戻って来た。
「ほら。昼。食べなよ?」
ナユはゆっくりベッドから起き出した。
「あれ?もう動けるの?」
「・・・はあ。おかげ様でもう大丈夫です・・・。」
ナユはそう答えた後まともにリオの顔を見て真っ赤になり俯き、次に慌ててパンを手に取り食べだした。
「ふふ、何その反応?まさか貴様照れてる訳?」
「う、うるさいっ。」
「元気そうだね?もう大丈夫ってとこ?ところで聞きたいんだけど。」
「・・・何です?」
「貴様はそんな気満々でいた訳?」
リオは指差しながら言った。
「んなっ、ちっ違いますよ!!これはあれですっ。その・・・あなたに最初・・・キスマークつけられた時、誰かに見られるのが嫌で・・・」
「へえ。じゃあ、今はどんだけ跡残しても良い訳だ?」
「ちょ、そんなつもりで・・・」
「いっそシャワー浴びながらってのもいいよね?」
そう言ってリオは指差していたバスルームにナユを担いでいった。
「ちょ、何言って・・・。あーもう降ろせ変態ー!!」