リオ・ナユ
・・・こんなリオの顔は見た事がなかったです。
目と口をあんぐりと開け、その場で固まっていた。
「えっ・・・と・・・。あの、どうしたんで・・・」
不審に思い、声をかけようとしたところ、リオがそっとナユを離して後ずさった。
「え?」
眉をひそめ、あいかわらず口を開けたままのリオ。ナユがどうしたんです、と近づこうとしたら、ハッとしたように言った。
「いや・・・。じゃあ、まあそういう事で。」
抑えたような口調で言うと、踵をかえして石板前から離れていった。
「・・・え?」
ナユは茫然とそんなリオを見送っていたが、姿が見えなくなると、不意に我に返り、3人の方に向き直った。
「ちょ・・・今のは・・・」
気づけば3人も唖然とした感じで口を開けて、リオの消えた方を見ていた。
「って、ちょっと、あなたがたも、大丈夫ですか?」
「え?ああ、いや、あまりのリオの反応にびっくりして・・・」
「今の、まじでリオだったんか!?」
「・・・ありえない・・・。」
カイリ、テッド、ルックともに理解出来ないといった風で、まだリオの去った方向を見ていた。
「・・・まさか、あの殺戮魔、猫が苦手とか・・・?」
「まあそれに近い反応ではあったけどねえ・・・」
カイリがナユの言った事にたいして答えかけたが、ルックが首を振った。
「いや・・・前の戦いの時にロッテっていう仲間がいたが、そいつの飼っている猫を平気で捕まえていた。」
「でも、我慢してたとか?あ、でも前のハロウィンの時、僕もあの人も猫の格好したっけ・・・?」
ナユがルックに言う。それに対して、テッドが答えた。
「いや、リオに限って我慢はないだろ。我慢する前に殺りそうだぜ?猫のコスプレもまったくもって嫌がってなかったし。ていうかどちらかと言えば気に入ってたんじゃね?それに俺、あいつとよく昔遊んだけど、猫を怖がってる姿なんか見た覚えがないぞ?」
そこにたまたま通りかかったフッチが入ってきた。
「リオさん、知ってる限りじゃ、猫、好きだったと思うんですけど・・・。」
「「「「なんで!?」」」」
4人一斉に見つめられて問われ、少したじたじとしながら、フッチがまた言った。
「ずいぶん前なんですが、リオさんが猫と戯れてるとこ、見かけた事あるんです。」
前解放戦争の頃の事。誰もいないような城のかたすみで、たまたま見かけた姿。フッチはその時、ブラックと空の散歩をしていた時だった。
リオは寝ころんで、片肘をついて右手に顔をのせ、左手で小さな子猫と遊んでいた。
「ちょっと・・・僕の想像には限界があるんだけど・・・」
フッチが話をしてから去って行った後、ルックが青ざめて言った。
「メルヘンなリオか、なかなか面白いねえ。」
「面白いか・・・?」
ニッコリと言うカイリに、テッドは呆れたようにつっこんだ。
「・・・でも・・・だったらなおさらさっきの反応が理解できません。」
ナユは不可解な表情でコテンと頭を傾けて言った。それを見たカイリはむずむずしている。
そんなカイリを呆れたように見ながらルックが言った。
「・・・だったら・・・直接本人に確認すれば?」
「まあ、そうなんですけどもね・・・。」
でもなんだか拒否されたようで傷ついている、とは言えず、ナユはため息をついた。
「だったら実験してみるのはどうだい?」
「「「実験?」」」
「猫をリオの前に持っていってみれば分かるんじゃないかな?」
なんだか含みのある笑みで、ニッコリとカイリが言った。