リオ・ナユ
集合
ある日ナユが1階に降りると、そこはめちゃくちゃだった。
「・・・何なんですか・・・、これは・・・。ルック?簡潔に述べて下さい。」
「・・・リオだよ・・・。確か今日はテッドの命日かなんかだったと思う・・・。心ここにあらずでほぼ無意識に破壊し続けてる感じだね。ただ、破壊しまくって今は放心状態みたいだけど。」
そう言うとルックはリオを指した。
なるほど、生気のない様子でリオはホールの真ん中で立ち尽くしていた。
「自分の部屋でされるよりマシですが・・・なんでここで?せめて外に出て欲しかったですよ。テッドって、確か殺戮魔の親友だかなんだかで前のソウルイーターの持ち主でしたっけ?あの人でもさすがに親友に対しては少しは人らしい感情があったんですね。」
なかなかすごい言われようである。
「だからと言ってこれはやりすぎでしょう。毎回そんな風になられちゃ堪ったものじゃないですよ。・・・・・。・・・ちょっとルック、頼みがあります。君の師匠にそのテッドさんを生き返らすよう、お願いしてきてもらえませんか?」
「ちょ、何言ってんのさ!?うちの師匠を何だと思ってる訳?そんな簡単に生き返らせられる訳ないだろ!?」
「はっ。素人ですら戦闘中の戦闘不能者を気合で回復させられるんですよ!?ましてやレックナートは門の紋章とやらで、異界の者を呼び出したり、その他なにやら色々不可解な事が出来るんでしょう?・・・だいたいあの人だって無責任に人に怪しげな紋章勧めたり、訳分かんないどうでもいいんじゃね?って事をわざわざ人が眠っている時を狙って言いに来たりで、ホント困った人なんですよね。たまには役に立ってもらってもバチはあたりませんよ?大丈夫、そのテッドとかいう人だって、確か人外的な年数生きてきた人でしょう?普通の人を生き返らせるよりきっと簡単ですよ。レックナートならやれる。ね?じゃあ、行ってらっしゃい。」
「なっ・・・あーもう、なんで僕が・・・」
そうぼやきながらもルックは消えていた。
とりあえずナユは石板前に座り込んだ。そのままリオを見ていたが、昼にはレストランに昼食を食べにいった。戻った時もリオは同じ場所で立ち尽くしていた。
そろそろ晩御飯の時間かなぁとナユが考えていた時、ルックが戻ってきた。
かなり疲れた顔をしている。
「お帰り、ルック。どうでした?」
「まったく、君のせいで僕が掃除洗濯・・・」
「は?」
「い、いや何もないよ。連れて来た。今リオの前に出すよ。」
そう言うとルックは杖をリオの方めがけてふった。
するといきなり空間から少年がへんな風に現れ、そのままバランスを崩し、ベチャッと床に落ちた。
「ってっ。な何だ?何か前にもこんな事あったような・・・」
頭をさすりつつその少年は立ち上がった。
くりっとした目の、あどけなさが残るいたずらっ子のような容貌。淡い小麦色の髪をした少年を目の前にして、生気のなかったリオの顔に少しずつ表情が戻る。
「お前、テッド!!」
「よぉリオ。久しぶりだな。」
テッドはなんだか少し照れたように言った。
リオはニッコリ笑った。
「・・・久しぶり」
そしていきなり回し蹴りをくらわす。
「おわ!?」
とっさに避けてまともにくらわずにすんだテッドだが、それでもうずくまって苦しげに言う。
「お・・・おまっ・・・それが久しぶりにあった親友に対する態度かよ・・・」
「ふふ・・・僕の許可なく勝手に死んだお前が悪い」
「ははっ、相変わらず、だな。」
そこにナユとルックがやって来た。
ルックを見てテッドが言った。
「あ、お前覚えてるぞ!?俺らにいきなりクレイドール仕掛けたり、俺だけ着地失敗させた生意気な小僧・・・つーか、もしかして今もそれ、やっただろう!?いきなりここに落ちた時、すっげえデジャヴ感じたぞ!!」
「フン。あんたがバランス悪いだけだよ。」
「んだと!?」
テッドとルックがやり合っている横で、リオがナユに言った。
「あれ、貴様がしてくれたの?ありがとう。」
そしてニッコリ笑った。
いつもの作為的な笑みではなく、本当に自然な笑顔だった。
ポカンとそれを見つめるナユ。
「ちょっと、苦労したのは僕なんだけど?」
横からルックが言った。
「そう。ありがとねルック。」
おざなりに言ったその顔は、もういつもの作為的な笑みだった。
その後、シュウに大目玉をくらった。
特に集中攻撃を浴びたナユは、何で僕が・・・とルックの口癖をまねていた。
そして4人は罰として修復作業を手伝う羽目になり、数日たった。
たいがい嫌気がさして、どのみちどうせあまり役に立ってない為、邪魔になるだけだよねと理由付けし城から脱出する。
城下町を歩いていると、何やら何らかの大会が催されている様子であった。
ここは戦時中とはいえ、活気のある町でお祭りとまではいかないが出し物などがよく催されている。4人が見に行くと、どうやら大食い大会のようであった。
「へえ。貴様も出れば?」
「・・・確かに僕はよく食べますけどね?人並みですので、これでも。」
大会はすでに始まっている様子。
何の大食いかと前を見たら、まんじゅう大食い選手権と幕があった。
「・・・まんじゅう・・・。」
しかも中身は1種類。
すべてあんこのようである。いや厳密にはつぶあんとこしあんの2種類か・・・。
「見てるだけで気持ち悪いよ。」
呆れてルックが言った。
確かにあんこだけでは限界がある。次々に敗者が出た。
その中でどうも際立って食べ続けている者がいる。
周りからは歓声やら驚愕の声が上がる。瞬く間に優勝者が決定した。
「うわー、どんな人でしょう。」
ナユが小さい背をのばして見ようとする。
たまたま隙間から優勝者の顔が見えたテッドが目を見開いた。かなりびっくりした様子に3人は首をかしげる。
「カッカイリ!?」
「何?テッドの知り合い?」
リオが聞いた。
「いや、でも、まさか・・・」
棍がヒュっと振り落とされる。テッドはとっさによけたが肩にあたった。
「ってっ、何すんだリオ」
「いや、何だか我を忘れてるような感じだったから?で?知り合いな訳?」
「うーん、昔一緒に戦った事あるヤツにそっくりなんだけどな・・・。でも俺、そいつが死んだものと思ってたから・・・」
「本人に聞いてみれば?」
ルックはさらっと言った。
「そうですね。それが手っ取り早いですよ。」
そう言うとナユは、優勝賞金と賞品のまんじゅう(普通ならもう見たくもない代物だろう)を貰ってほくほくと出て行こうとしていた人物を呼び止めに行き、こちらに連れて来た。
淡い亜麻色の髪は顎と肩の間位の長さで、深い藍色の瞳を持つ、とても整った顔立ちの少年だった。
とてもあれ程の量のまんじゅうを腹に収めたとは思えない、華奢な、でも必要な筋肉はついていそうな感じの体躯をしていた。
「で、何の用だい?・・・あれ?何か君・・・。ってゆーかかすかに感じるこの紋章の気配・・・」
「よ、よぉ。・・・カイリ、だろ?えーと、久しぶりだな。生きていたんだな、お前。会えてうれしいよ。」
ニヤッと笑い掛けるテッド。
ところが黙って首をかしげたかと思うと、リオの方に笑い掛ける少年。