リオ・ナユ
「やぁテッドかい?きれいになって。久しぶりだね?」
「・・・おい・・・」
リオが言うと同時にテッドが突っ込んだ。
「って待てコラァ。俺のコトは無視か!?てゆーか、あきらかに顔変わってねえ俺がテッドだろうがあぁぁぁ。」
「おや。やあテッド。ちょっとした冗談だよ?死んでようが死んでまいが、さっさとどこかへ行ってしまった君へのちょっとしたお返し、かな?」
「げ。いや、そ、それはだからあれだ、その」
「ああ、例の紋章のせいで人を寄せつけようとしなかったものね?今その紋章は君じゃなく、彼が持っているみたいだね?ああ、それとテッド。えらく別人のようだね、引きこも・・・」
「っだーもーうるせぇ。俺にかまうなぁぁぁ。」
「おや、なつかしい台詞だねぇ?」
「・・・頭痛え。」
ルックは非常に嫌な感じがした。
なんか、嫌だ・・・まさか・・・
「で、テッド。いつの知り合い?」
テッドの頬を引っ張り、リオが聞いた。
「イデデデデ・・・離ひぇ」
「150年前位かな。はじめまして?俺はカイリ。よろしく?」
さらっとカイリは言った。
シーンとする周り。
ナユが唖然としながら言った。
「ひゃ150年、前、ですか。」
「そうだよ?ふふ。君はなんてゆーのかな?かわいいね?俺、てっきりナンパされたのかと思ったよ?うーん、やっぱ、なんか・・・似てるよなぁ。」
「ナッナンパ!?な何言ってるんですか!?てゆーか誰に似てるんですって?」
赤くなって否定するナユの後ろからすっと何かが動いた。
気付いたときには棍を振り落とすリオがいた。
普通なら間違いなくやられていたであろう速さと威力だったが、同じく素早い動きでカイリは2本の双剣で止めていた。
「何?オマエ?」
「危ないなぁ、きれいな顔して、物騒なヤツだね?うーん、君もなんか見たことある気がするんだけどなぁ・・・。気のせいかなぁ?まぁいいか。」
射抜くようなリオの視線をまともに捉えつつ、ニッコリとカイリは言った。
横からテッドが慌てて止めに入った。
「ちょ、おいもう止めとけって。リオもカイリも。ここは町中なんだぞ。」
そして改めて皆にカイリを紹介した。
「えーと、こいつはさっき名乗ってた通り、カイリっつーて、150年程前に群島諸国で戦争あったの知ってっかな?そん時のリーダーしてたヤツだ。一般的な歴史上はその時の王がしていた事になってるがな。真の紋章持ちだよ。だから今も当時のままなんだ。」
「えー!?」
「ふーん。」
「・・・やっぱり・・・」
驚くナユに興味なさげな様子のリオ、その横でルックは青くなりながら思っていた。
やっぱり天魁星・・・。
くっ、これ以上天魁星いらない・・・。
「で、カイリ。こいつらだが・・・、まずお前に棍振り落としてきたのがリオ。ま、俺の親友だ。」
「うん、初めまして?なんだよね?で、どうして君が例の紋章を?ああもしかしてトランの英雄って君の事かな?なんか噂で聞いてね。紋章の存在と共にね。だから一瞬あのテッドが!?って思ったんだけど、やっぱあのテッドがねぇてゆーのもあってねぇ。てゆーかそのテッドに親友ってのもねぇ。」
「っだーっうるせぇ、喋りすぎなんだよ、つーかどーゆー意味だあぁぁぁ!!??」
「ふふ。」
微笑んでるだけのカイリ。
「おもしろいね?あとでその昔のテッドとやらを聞かせなよ?」
リオがカイリに言った。横でナユもうんうんと頷いている。
「いいよ?」
「良かないわぁぁ。くそ、放っておいてくれ、もう・・・」
脱力した後、なんとか気をとりなおしてテッドは紹介を続けた。
「そんでそいつがルック。ひねくれた性質のとんでもねえ小僧だ。」
「ひねくれた?なんだったらもう1回あの世にもどしてあげようか!?」
「君はほんとに初めましてだね?君もきれいな子だね。なにテッドは見目いい子ばっかはべらしてんのかな?」
「・・・・。」
呆れつつルックはカイリをじろっと睨んだ。テッドが言った。
「聞こえが悪い言い方すんなコラ。あぁそうだ、お前にも馴染みあんだろ、レックナートて。それの弟子かなんからしいぞ。」
「あの幽霊の!?」
「・・・・ちょっと、幽霊ってレックナート様の事かい?」
ルックはさらにカイリを睨んで言った。
「え、だってねぇ。変なとこで変な時にボーッて現れるから、てっきりそうだと・・・。へえ幽霊じゃなかったんだねぇ。」
「当たり前だよ!!」
「夜這いの人だよね?」
「夜這いの人ですね。」
リオとナユが横で付け足す。そういう時だけ変に気が合っている。
「あんた達まで何ゆってんのさ?!」
カイリはプッとふき出した。
「で、この小っこいのが」
「・・・・テッドさん?後でナナミ料理でも食べていただきましょうか。」
すかさず天使の微笑みでナユが言った。
ナナミ料理。
それは相当な破壊力のある、ある意味兵器的な恐ろしいもの。
ここに現れた当日早速それを出されたテッドは今はその恐怖を知っている。青くなりつつテッドは言い直した。
「あーえーと、このお方が今この城の主、軍主でもある、ナユだ。」
「先程は急にお呼びだてしてすいませんでした。ナユです。よろしければゆっくり滞在していって下さい。カイリさんさえ良ければ部屋を用意させますので。」
軍主らしく丁寧に挨拶した。
「へえ、君がね?まだ若いのに大変だね?ありがたくそれは受けさせてもらおうかな?放浪するのもちょっと飽きてきたとこだし?それに君みたいなかわいい子の申出、俺断れないし、ね。」
ニッコリとナユに笑いかけ、カイリはその手をとった。
「な何を・・・。あ、僕、部屋用意させてきますんでっ。テッドさんのお隣を用意させます。で、では皆さんはごゆっくりっ。」
手を振りほどき、そう言うとじりっと後退し、そのまま逃げるようにナユは去っていった。
「お前・・・何未成年からかって遊んでんだよ?」
呆れたようにテッドが言った。
ルックはもはや我関せず、と無言である。
リオも無言でカイリを見ている。
「おや、からかうなんて心外だな?俺は思った事を言っただけだよ?」
「・・・オマエ、ロリコンかい?」
横目でリオが言った。カイリはニッコリして言った。
「えー?ロリコンはひどいな。外見諸々は君たちと変わんないでしょ?確かに長く生きてるけど、俺は永遠の17歳だから。」
「それを言うなら俺だってそうだぜ?っつーか、おいルック。俺今真紋持ってねーじゃん。まさかすっげぇ速さで老けていくとか、そんな落ちねぇだろうな!?」
「さぁね?」
「んだと!?」
「フン。安心しなよ?多分不老なんじゃない?今のあんたはもはや人外だから。違う世界から門を開いて無理やりこっちに連れて来たんだからね・・・。」
「そ、そうか。・・・ん?って人外ってなんだよ?!ちょ、オイ、俺、人じゃねえの!?」
「一度死んでおきながら、まだ人だと思ってんなら図々しいよね?ゾンビよりマシでしょ?」
青くなるテッドに、リオがニッコリ微笑んで言った。
「おや、君死んでたんだ。知らなかったな。大丈夫だよテッド。人外なんて、案外ざらにいるもんだよ?」
カイリがさらっと言った。
「いてたまるかぁぁぁぁ」