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神に誓って愛します

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 田島君の瞳は射抜くような強さを湛えていて、作り笑いで固めていた私の汚い部分を見透かしてしまうようで怖かった。いつも教室で見る田島君とは違って、どうしていいかわからなかった。このまま露見してしまう私の弱さや醜さが、泉に伝わってしまうのではないかと思った。
 だから花井君が現れた時は本当に胸をなでおろしほっとして、いつもの私を取り繕えたんだと思う。田島君を呼びに来てくれた花井君にもう一度感謝した。
 
 家に帰ると鍵が閉まっていて、財布から家の鍵を取り出して鍵を開け中へと入る。父は出勤したのだろう。普段なら家に居るはずの母も鍵が掛かっていたという事は買い物にでもいってるのかもしれない。台所へと向かうと机の上にかわいい猫の形をしたメモ用紙がちょこんと乗っかっていて、私はそれを一瞥すると水道へと向かう。左手に下げた鞄からハンカチを取り出すと鞄を床へと放り投げ、水道の蛇口をひねり水を出してそこに突っ込んだ。もう殆ど冬に近い今では水道から流れる水も冷たくて、指先でつまむように濡らしたハンカチを持つと、少し躊躇ったあとぎゅっと絞る。流しっぱなしだった蛇口を閉めて水を止めると、首を上へと傾けて固く絞ったハンカチを目の上に当てた。ひんやりとした感覚が瞼の上から沁み、続いてヒリヒリとした痛みを感じる。きっとまぶた腫れるなって思い、苦笑めいた笑みを零した。
 のせたハンカチがぬるくなったと感じた頃、緩慢な動作で覆っていたハンカチを取って数度瞬きを繰り返す。ヒリヒリとした痛みは取れなかったが少しだけ気分がよくなったので、机の上にあるメモを読もうとテーブルに近づき覗き込んだ。
 
 彼方ちゃんへ、少し出かけてきます。帰りは遅くなると思います。お父さんも夜遅くなるそうなので、冷蔵庫におかずを入れておくので暖めて食べてください。――母より。
 
 最後まで読みきると、メモを取り上げて冷蔵庫側に置かれたゴミ箱へと投げ捨てた。その足で冷蔵庫を覗くと昨日の残りと思わしき、きんぴらごぼうにほうれん草と卵、ベーコンの炒め物。あとは鯖の味噌煮がそれぞれの器の中に納まっていた。食欲がわかないせいか確認だけすると私は冷蔵庫のポケットに収まっていたヤクルトを一つ取り出し無造作に冷蔵庫を閉める。思っていたよりも力がこもっていたのかバタンという音に慌てて冷蔵庫の扉を優しく押した。どうにも些細なところまで気遣いが追いつかないのか。ちゃんと冷蔵庫の扉が閉まっているかを確かめると放り投げた鞄へと近づき回収した。
 そのまま自室のある2階へと向かう。階段を上りながら片手に鞄をさげ、その手とは逆の手に握り締めたヤクルトの飲み口を口へと運ぶと前歯でぷすりと穴を開けた。なんだかとても喉が渇いている。容器を傾けるとあいた隙間から甘い液体が流れ、乾いていた喉を満たす。チューチューと音を立てて飲み、部屋にたどり着く頃にはすっかり中身がなくなっていた。重い足取りのまま部屋に入ると鞄を机の上へと投げ捨てる。どさっと言う音がしたが今は気にしてる余裕がなかった。ついでに机の横に置かれたゴミ箱に向かって、ヤクルトのカラを躍らせてからベットの上へとダイブする。
 心労で疲れた体に檄を飛ばしながらどうにかこうにかもぞもぞと動いて靴下だけを脱いでベット脇へと落とすと、着ている服が皴になるのも気にせず布団の中にもぐりこんだ。
 もう、何も考えずに寝てしまいたい。
 
 
 いつの間にか意識がなかった。どこか遠くでぼんやりと母親が名前を呼ぶ声がする。どうにかこうにか持ち上げた瞼の先にぼんやりと人影が映り、大丈夫?しんどいの?っていう言葉が聞こえて、うんと頷いた。夢なのか現実なのかわからないぐらい曖昧でとろとろと落ちる瞼にまかせ目を瞑る。
何も考えなくない、このまま眠りたい。
声が聞こえたが内容は聞き取れず返事をしなかった。そうするとまた声が聞こえ、今度は部屋を立ち去る気配がする。扉が閉まる音が静まると階段を降りる音が少しして、そして何も聞こえなくなった。殆ど残っていなかった意識が、ゆっくりと霧散する。そのまま私は眠りに落ちた。
 
 体がだるい。目が覚めて一番に思ったことがそれだった。はれぼったい瞼を持ち上げると部屋は真っ暗で、掛け布団を押し上げて体を起こすと服を着たまま寝たせいかなんだか体が痛かった。とりあえず着ていた上着を脱ぐと皴になっているのにもかかわらず綺麗に折りたたむ。順々に着ていた服を脱いではたたむと、立ち上がってタンスまで近づきいつもきているパジャマへと着替えた。 不思議とおなかは空かない。朝食べてから何も食べていないのに食欲がわかないのだ。ベットへと腰掛けると視線をさまよわせて、時計を見つけるとまじまじと文字盤を見つめる。暗い中でも見えるように作られた時計は時間の部分と針が発光して、もうすぐ日が変わる事を教えてくれた。
 詳しく時間を見ていなかったからわからないが、帰ってきてからおそろしいぐらいの時間寝てた事になる。14時間も寝てたら脳みそ溶けてそうだな。ぼんやりそう思ってから、腰掛けていたベットから立ち上がる。勉強机までいくと机の上に置かれた鞄から携帯電話を取り出して文字盤を見つめた。
 私の携帯は他の機種よりもやや大きめで、二つ折りの青いボディがかっこいい。女の子が持つにしては少し厳ついんじゃないのか?なんて父親に言われたが、私にはこれぐらいが丁度いいんだって言って笑ったのを覚えている。 機種を変更したのは泉と付き合った後で、前の携帯電話が水没だったためデータが移せず、真っ先に手打ちで泉の番号とメアド、誕生日を入力したっけ。
 まじまじと見つめる携帯のディスプレイに表示された文字は23:58となっていて、それが23:59に切り替わると音楽が流れた。小さな音だったがすぐさま二つ折りになった携帯を開いてボタンを押す。アラームをとめると私は電話帳を開き泉の電話番号を引っ張り出した。少し逡巡した後メニューボタンを押してメール機能を起動する。
 ドクン、ドクン。心臓の音が煩い。室内は少し寒いぐらいなのに額に汗が浮かび、文字を打つ指は細かく震えて何度も打ち間違ってしまう。たった「お誕生日おめでとう」という文字を打つだけなのに、それすらもままならないほどうまく指が動いてくれない。
 どうにかこうにかおめでとうの文字を打ち終わって、部屋の時計を見上げると既に泉の誕生日が始まって30分が立っていた。たった9文字打つだけに30分、どんなけ緊張してるんだ。まるでメアドを聞いて初めてメールを打つ時みたいで、そう考えてから苦笑いを零した。送信ボタンの上に親指を置く。力を込めようとするもなかなか上手くいかず、時間だけが過ぎる。コチコチという時計の秒針が刻む音が部屋に響き、私を焦らせた。ああ、なんてことのない内容じゃないか。そう考えて指先に力を入れようとして、また、田島君の声が蘇る。
 
――いきたくねーの?
 
 うるさい、うるさい、うるさい。あの鋭いまなざしが記憶の中でも私を責めるかのように見つめていて、私は唇をかみ締めた。すると今度は浜田君がペットボトルを提げた姿で現れ、あの時のように少し困ったような表情で聞いてきた。
 
――つけあがってんの?
 
作品名:神に誓って愛します 作家名:ank