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神に誓って愛します

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「どうしたの?調子悪い?」
『いや、ちげー。ちょっと息切れしてるだけ』
「息切れ?」
『おー、つか遠野はまだ公園にいんの?』
「ん、いるけど…」
『公園のどの辺り?』
 
 息切れという言葉でようやく泉はあがる息を抑えて会話してるのかと気づいた。電話と同時に歩き回るのを止めてい私は、目の前にある自販機へと一瞥をくれてから問いの答えを返す。
 
「え?自販機の前?」
『どこの自販機?』
「東口から入ってちょっといったとこのだけど…どうしたの?」
 
 この公園は児童公園の中でもやや広めで、遊び場がある場所、小さなグランドがある場所、並木道、池等に分かれている。私のいる場所は東口というところの近くで、緩やかな丘と並木道があり、奥まで進んでいくと池があって、そこを抜けると子供たちが遊ぶ誘導円木などがある遊び場へとつながっていた。流石にこの時間に並木道でたたずむのはどうかなと思ったので、その手前の入り口から少し歩いたところにある自販機のところで居座っている。
 もしかして私のいる公園が広いんだって事に気づいて心配してくれてるのだろうか。それだったらちょっと、いやかなり嬉しい。さっきまで悪い方向にしか考えられなかったのに、なんて現金なんだ。自分自身に苦笑するも、携帯から泉の声が聞こえて我に返る。
 
『もーちょい待ってて』
「え、あ、うん…大丈夫?忙しいなら私の事は気にしなくていいよ?」
『忙しくはねーよ。つか、まー、アレだ。…話してーし』
「…っ、え、あ、う…うん、ありが、と」
 
 泉の言葉に熱くなった頬を、ペットボトルを押し付けて冷やす。深読みをするつもりではないのだが、そういうような言い回しをされると勘違いをしてしまいそうになる。だめだだめだ、あんまりいい風にばっかり考えてると違うかった時に辛くなるから。そう思い直して深呼吸を一つした。
 空を仰ぐと街灯の光で見えづらいながらも星が煌いている。こうやって景色を楽しむのはいつぶりだろうか。
 
『体調はどうだ?』
「ん、へーき。空の星が綺麗だから元気出てきた」
『街灯の光であんま星みえねえだろ』
「うっ…その分心の目で見てるから問題ないよ!」
『どこから突っ込みいれていいか聞いていいか?』
 
 嘆息交じりに言われた台詞に私はごめんなさいと謝った。静かな公園に響く私の声の他にだんだんとシャーという自転車の音が聞こえてきて息を飲む。私は慌ててベンチと自販機の間へと逃げ込むと様子を伺った。まさか襲われる事はないだろうけど、流石に怖い。特に今は泉と電話をしているし、ここで何かあったら泉に迷惑がかかる。
 
『どうした?』
「っ!あ、うん、なんでもない」
 
 どうやら自転車の音に気をとられていたせいか、泉の言葉を聴いていなかったらしい。声を抑えて謝りながら、次第に大きくなる自転車の音のする方へと視線を向ける。
 
『なんでもなくね?声、抑えてんだろ』
「そ、そうかな。気のせいじゃない?」
 
 なだらかな丘から続く並木道を下ってきていた自転車が、自販機の傍にある街灯に照らされて輪郭が徐々にはっきりしていく。自転車をこぐ人物は見覚えのあるシルエットで、それがよく見知った電話をしている相手であると認識できるころには、私は呆然とその場で立ち尽くしていた。
 
「何が、気のせいだって?」
 
 泉は自転車を私の前で止めると、片足をついて意地の悪い笑みを向けながらそう問いを投げかけた。それでも私は呆然としていると、彼は携帯の電話を切って自転車から降りこちらへと近づいてくる。私は反射的に後ろへと一歩下がると、泉は一気にその距離をつめ私の腕を掴んだ。
 
「逃げんな」
 
 強い、その声音に息を飲む。真っ直ぐとこちらを向く泉の視線に思わず自分から目を逸らした。まさか泉と出会うなんて想像してない、というかなんで泉はここにいるの?私は軽いパニック状態へと陥り、掴まれた腕、泉の顔、地面へとせわしなく視線を動かす。何をいえばいいのかもわからない。心の準備すらしてない状況で泉に会うなんて、そんな事考えてもいなかった。
 ぐいっと腕を引かれ私はよろける様に泉の方へと一歩踏み出す。慌てて視線を泉へと移すと泉は既にこちらを見ていなくて、少しほっとするもそのままぐいぐいとベンチへと向かって腕を引かれ連れて行かれた。ベンチの前まで来るとようやく腕を放されて、私は泉の横顔を伺う。泉は口端を少し持ち上げてみせるとベンチを指差して座れよ、と言葉を紡いだ。
 戸惑いながらもベンチへ浅く腰掛ける。そうすると少し間を空けて隣に泉が座って、まるで泉が座っている側だけが熱に当てられているかのように感じて、どうしていいかわからず落ち着かない。
 
「なんか結構見てねえ気がすんな」
「や、休んでたから」
「体調は?」
「だ、大丈夫」
「……」
「……」
 
 電話と違って会話もうまくいかなかった。どう返していいのかわからないし、どうしたらいいのかわからない。このままじゃ、いや、きっと既に泉を困らせてしまってる。一歩踏み出すとかいっても、そんな急にうまくできるほどスーパーヒーローじゃないって、ここ数日で痛感したんだから。だから、どうしよう。全身の毛穴という毛穴から汗が噴出した。ちょっと前まではうまく取り繕う事もできたはずなのに、それすらもままならない。一度外れた歯車はうまくかみ合わないということなのだろうか。
 膝の上で両の手をぎゅっと握って真っ直ぐ地面を見つめる。喉が渇いて仕方が無いからさっき買ったスポーツ飲料を飲もうと思って、ペットボトルを持っていない事に今更気づいた。どうやら動転して落としたらしい。口の中に溜まった唾液を飲み込む。ああ、どうしよう。
 
「遠野」
 
 名を呼ばれ、私は驚いてビクッと肩を揺らした。恐る恐る泉を見てみると彼も驚いたようにこちらを向いて、私と視線が合ってから苦笑いを零す。その様子に私はまた地面へと視線を落とすと、もう一度名前を呼ばれて、しぶしぶもう一度泉へと視線を戻した。
 泉はズボンのポケットから携帯を取り出すとこちらへと差し出して、私は一度携帯へと視線を落としてから訝しげに泉へと視線を向ける。
 
「これ、お前?」
 
 軽く携帯を振って言う泉に私は首をかしげた。泉の言いたい意味がわからない。
「それ、泉の携帯でしょ?」
「そうだけど、ちげーよ」
「え?」
「ストラップ」
 言われてもう一度携帯へと視線を落とすと、携帯からいつも泉がつけているストラップの他にもう一つぶら下がっているのが見えた。街灯の光が鈍く反射しゆらゆらと揺れるそれは、私が休む前に泉の机へと放り込んだとんぼ玉の携帯ストラップ。瞠目するもすぐさま泉へと視線を向けて、私は掠れる様な声で問いを投げかけた。
「なんで…私だって、思ったの?」
「なんとなく。あー、でも、土曜に田島が遠野に会ったっつってたから、それも含めてか」
「そ、う」
作品名:神に誓って愛します 作家名:ank