二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

いつか、あの日のきれいな手

INDEX|2ページ/4ページ|

次のページ前のページ
 



ゼロの居住部屋に入ると、本棚に半分体を隠しながらこちらを覗いているC.C.がいたが特に声もかけずに、ルルーシュは仮面をはずす。記憶喪失となったC.C.は始終おびえていて、あの魔女のような女と同一人物とはとても思えない。扱いにくいので無闇に関わらないようにしている。ルルーシュの後ろからロロが入ってきたのを見ると、C.C.はさっと通信室の方へ隠れてしまった。
「兄さん」
ロロはやっとルルーシュをそう呼べる嬉しさをかみしめるように言う。
「良かった。やっと話ができるね。皆の前では何も話せないんだもの」
ルルーシュは脱いだマントをハンガーに掛けると、部屋の奥のクローゼットにしまった。
「いつでも携帯に電話してくれればいいのに。そうしたら僕は」
ロロはポケットから取り出したグリーンの携帯電話を握り締める。そこまで言うと言葉を切った。目を伏せて寂しそうに笑う。
黒の騎士団にロロを入団させてから、ほとんど個人的な接触をする機会がなかった。放っておかれていると思っているのだろうか。
ルルーシュが仕立てさせた黒の騎士団の制服はロロに良く似合っていた。
膝より少し上の長さの半ズボンに黒のハイソックス。
騎士団にはロロほど若い団員はいなかったので異例の優遇以上にその容姿は目立っていた。
今頃になってロロを騎士団に入団させたのは、ロロを利用するためだ。ロロのギアスとナイトメア操縦能力、そしてその二つを組み合わせたときに最強の戦力となる。
学園に置いておく理由ももうなくなった。
そう思ってから、何故もっと早くそうしなかったんだろうと今さら気づく。
いや、機密情報局の所属であるロロを学園に置いておかなければ、ルルーシュの記憶が戻っていることがブリタニア側に漏れてしまう。それを防ぐためだ。
それだけのはずだった。
だがどこかで、ロロをまだ弟だと思っていたのだろうか。偽りと知りながらも。ロロを欺くための演技のつもりで。
世間知らずで頼りない弟。
そう思っていたんだろうか。
思っていたかったんだろうか。
「兄さん、それで・・・話って何?」
黙り込んだまま何も答えない兄に戸惑ったようにロロは言った。
さあ・・・なんだったんだろう・・・・。
そう答えたらロロはどんな顔をするだろうか。
ルルーシュは上着を脱いでハンガーに掛ける。クローゼットのマントの隣に吊り下げた。
「明日の作戦のことだ」
まだ部屋の入口に立ったままだったロロが、それを聞いてはっと顔を上げる。
明日。
黒の騎士団の総力を率いてトウキョウ租界に向かう。
決戦の時が来る。
ルルーシュはロロの元へと歩み寄った。間近でロロを見下ろす。
「お前には一番重要な仕事を任せる」
ロロと咲世子を核とした数名には本隊とは別行動の隠密部隊を結成させていた。トウキョウ租界の都市機能を麻痺させた隙に政庁へと忍び込む。その作戦には人の体感時間を止めるロロのギアスが不可欠だった。
「ナナリー、だね」
ロロは胸元に携帯電話を握り締めて言う。そこには白いロケットが光っている。
「そうだ。お前だけが頼りなんだ、ロロ」
ルルーシュは微笑んでロロの両肩に手を乗せる。手のひらに簡単に収まってしまう華奢な肩はどこか本当の妹を思い出させた。
「大丈夫だよ。必ずナナリーを連れて帰ってくるから。僕を信じて、兄さん」
大きな淡い紫色の瞳がまっすぐに見上げてくる。うるんだ瞳は今にも泣き出しそうにも見えた。
小さな紅い唇は微笑みを形どっているのに。
ロロの細い腕がゆっくりと背中に回る。
ロロの体を抱きしめた。
「僕を信じて、兄さん」
ルルーシュの肩口に顔を伏せ、ロロがもう一度言う。
「信じているよ」
ロロの柔らかい髪に鼻先をうずめて、耳元で囁く。
「嬉しいな」
ロロが腕の中で幸せそうに微笑む。
こうやって弟を抱きしめるのもこれが最後だろう。





何もない暗闇の中で一人佇む少年がいる。
「ロロ・・・・?」
声を出したつもりだったが、その声は濃密な闇に吸い込まれていくようで。
少年の足元は暗闇の中でもぼんやりと濡れて光っている。
それは血溜まりだ、とおぼろげにわかる。
そんなところにいちゃいけない。こっちへおいで。
ルルーシュはそう声を掛けた。
どうして? 兄さん。
弟は微笑む。
どうして?
「お前がシャーリーを殺したのか」
「そうだよ、兄さん」
記憶がフラッシュバックする。
息をひきとった少女の横に立ち、弟はそうだよ、と言った。
「兄さんの秘密を守るためだよ」

C.C.と再会し、記憶を取り戻してすぐ、ロロという人物を把握するために機密情報局の収集したデータを見た。
ロロが子供の頃から手に掛けた要人たちのリスト。
おびただしいほどの死者の名前。


「僕が殺したんだよ、兄さん」
いつもの笑顔で。
おかえりなさい、そう家で迎えてくれるいつもの笑顔。
任務を果たすために、人の命を奪うことをなんとも思っていない。罪とさえ感じていない。
ああ、早く・・・・早くロロを殺さなくちゃ。
早く弟を。
いや、ちがう。
もうこいつは弟なんかじゃない。
俺の大事な弟は。
もうどこにもいないんだから。