二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

トッカータとフーガ

INDEX|5ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

「まず慣れることです。」
まあ、そうなんだけど。

「軍属と言う設定にしますので基本は軍服ですごせます。」
「軍属?」
「MSの技術者。」
「なるほど。」

部屋の中ゆっくり歩き回る。足が痛くなってソファに座り込むと
「足!膝閉じてください。」
「はい!」はぁ…。
「これはばれない様にするだけでも思ったより大変かも…。」

「見た目は大丈夫。メイクすれば分からないぐらいにはできます。やると決めたからには頑張ってくださいね。」
しぐさか…。

「猫背にならないで、小さめに動くようにしてください。」
「はい。」う〜。疲れてソファに懐く…。

「今日はこれぐらいにしますか。」
「精神的ダメージの方が大きそう。」
写真用の服とか小物の用意が出来たらまた来ますと二人は帰っていった。

女装した自分の姿を見るのは思ったより嫌なものである。力抜ける。
ナナイさんがお茶を入れてくれ向かい合う。

「すみません。鏡見ると力は入らなくて…。」
「やると言ったからには手抜きしないでください。」
ごもっとも。
「普段もあんなに化けているんでですから出来ますよ。外見こんなに変わっているんですし」

褒めてるのか?
苦笑しながら
「おれそんなに化けてる?」
「仕事中は別人のようです。」

「…励ましのお言葉だな。」
仕事に集中してるからなあ。
「これもお仕事ですよ。」

それにもう動き出してるし。はあ…。チラッと鏡が目に入る。自分の姿に思わず顔が引きつる…。
「部屋に鏡増やしましょうか?いやでも慣れますよ。」
厳しい。

「ある日突然何やってるんだろうと思うことありません?」
「今更なんですか。」
そうだよな〜。ぼーつとしてると背中がぞわっとした。

「あ、帰ってきた…。」
こっちに来なくて良いって…。周りを見渡して思わず隠れる所を探すがあるわけがない。腰を上げて窓から出ようとすると
「往生際の悪い。」
と腕をとられる。

この上笑われてはたまらないので隠れたいのは山々なんだけど…腕放してくれないし睨むし…。
溜息付いてソファに座りなおすとノックもなくドアが開いた。
迷わずこちらに近づき手を引いて立たせる。少し驚いた顔して髪に触れてくる。

「どうせなら赤が良いのに…。」
「ばれるだろうが…。」
ニコニコしてるな…。

「笑いたければ笑えば。」
「思ったより可愛い。」
それ褒めてるのかよ…。

「あんた一体どんなのを想定してたんだよ。」
「きみだったらどんな外見でも構わないが。」
なにげに失礼なやつだ。

「目がグリーンか。」
顔を両手で包んだと思ったら近づけてくる。

「なに?」
目に違和感が…。目を舐めたな…。コンタクトレンズを片方外された。あーびっくりした。

「グリーンも似合うが。随分印象が変わるものだな。見慣れた色の方がほっとする。」
「おれは鏡を直視できないんだけど。」

「声も換えますし、絶対大丈夫です。」
それでも尚且つばれるだろう知人がいるのは良いのか悪いのか…そうそう会わないから良いって言えば良いんだろうけど…元気なのがわかるか。
あー久々に鬱になりそう。

ぶすったれてるとにやにやして
「今からでも止めるか。」
と聞かれる。止めたいには山々だけどあのままでも鬱陶しい。

「やっぱあなた結婚すれば。」
「きみとなら喜んで。」
「絶対嫌。」

所詮水掛け論。ナナイさんに睨まれるし…。溜息ついて
「言ったからにはやるよ。」
「この先止めるとか言いましたら私は手を引かせてもらいます。どうせならもっと派手にやりましょう。」

ナナイさんまで自棄になったらしい…。嬉しそうなのはやつだけだ。むかつく。
「もうあなた暫く来るな。」
「嫌だ。」

「その顔見てると力抜けるんだよ。」
「そんなつれない事言うなら仕事しない。」おい…。

「日に一度は会えないとやる気無くす。」
おれはそのにやついた顔見るとやる気失くすんだけど。

「毎日は来るな。」
「夜は一緒に食べよう。」
人の言うこと聞いてないな…。

「色々打ち合わせが必要です。わたくしは今日からこちらに詰めますので食事を共にして頂けると調度良いんですが。」
援護がないのであえなく白旗。

「わかったよ。でいつまでこの服着てればいいんだ?」
「寝るまでです。」
げんなり…。

「まさか寝る時まで何か着ろとは言わないだろうね。」
「リラックスできるすがたで寝てください。ただ終わるまでは朝から寝るまで女装していただきます。用は慣れです。」
「え〜!」

「泣き言は聞きません。」はあ…。
「とにかく食事にしましょう。」
と先に出てゆく。

ニコニコしているやつを恨めしげに見上げてから
「いい加減離せ。」
何がそんなに嬉しいんだか…。

むかつくのでかるく蹴飛ばして食堂に向かった。シェフは一寸驚いた顔してから
「十分母親できそうですね。」
と言う。それは違うと思う…。


さて次の日から一日中女装してなぜか洗濯やら掃除やらしながら歩き方やら話し方を直される。だあ〜。
洗濯物干し終わってお茶に呼ばれる。庭を見ながら一休み。

「だいぶ慣れました?」
「いつものように動こうとすると服が破れるのはよーくわかった…。」
既にスリットが深くなってしまった。

「何故掃除に洗濯?」
「調度何人か解雇して人出足りなくなっていましたので。」
「ああ…。」そうか。

「この館はあちこち木を使っていますのでちゃんと手入れしないと痛みます。明日は手摺や桟を拭きましょうか。」
「おれは良いけどナナイさんは仕事持ってきてるのに良いのか?」

「気晴らしです。それと制服着ているときはおれとは言わない。」
「はい。」
ストレス溜まってるなあ。

「たまには一緒にお菓子作りますか?」
「時間があれば…。明日には変声機をつけますので。」
一挙に顔がしかめ面になる。

「早く慣れれば早く終わらせられますよ。」
「さっさと済ませたいよ。」
「明日はスカート破かないでくださいね。」厳しい…。

「メイド服でも着たほうが良いんじゃないか?」
「あれは足が自由に動くので目的に合いません。制服着慣れてください。」
「頑張ります…。」

「声が変わればまず気付かれません。」
「なら良いんですが。」
「人は外見に惑わされますから。」

「そんなものですかね。」
「まあ。やって見ましょう。」

自信ありげににっこりする。羨ましい。おれはまったく自信ない。
夜にはげっそりしてるおれを尻目にニコニコしてる馬鹿がいるし…。
は〜洗濯物でも取り込んでアイロンかけるか…。何かしてないと落ち込みそう。


変声機を付けてみて声の調整をしていると回りのほうが盛り上がってやる気が出たようだが…服がどうのインタビューがどうの髪型がどうの…。
思わずキッチンに逃避。

「すみません。少し休ませてください。」
よれよれと椅子に座り込むと
「あら。可愛らしい声になって。」
「気持ち悪いんですが…。」

もう本気で泣きそう…。
「座るときもちゃんと足そろえて。凄いわね。」
「ナナイさんが煩く言うので。」
テーブルに突っ伏してへたばる。もー駄目…。
しくしく…。泣いている暇なくすぐ連れ戻されてしまう。

「大丈夫です。絶対ばれません。」
作品名:トッカータとフーガ 作家名:ぼの