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トッカータとフーガ

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「肉襦袢もばっちりです。ドレスが楽しみですねえ。」
「デザイン見ますか?」
「いいです…。」

今日はこれ以上ダメージ受けたくない。
「きっと可愛くなります。任せてください。」
力なく笑う。

「ばれなきゃなんでもいいです…。」
「広報用の写真撮りますので化粧を。」
もう何でもやってくれ…。

早めに開放してもらって部屋でへたばってるとやつが様子見に来た。
髪に触れながら「大丈夫か?」とのたまう。

大丈夫な訳があるか!が声を出したくないのでむっくり起き上がって思い切り枕で叩いてしまった。

もう何言って良いのかわからない精神状況になってたので無言で叩きまくる。
おれが涙ぐんだのでうろたえて逃げて行った。

あー情けない。泣くなんて自分でも驚いたがおかげで少し落ち着いた。

やつのほうが反対に慌てて計画を再検討。出番が少なくなった。正直嬉しい…。

いよいよ発表して写真だけの公開の後何やら世間は大騒ぎになってるらしいが全部シャアに矢面に出てもらっておれはドレスに慣れるために四苦八苦していた。
最終仮縫いで肉襦袢が重いしもう少し高いヒール履くことになって靴で足が痛いし…。

白い総レースのマーメイドライン歩くと絡まりそう。それに凄く高そう…。

「これだけあるとほとんど背丈同じくらいになるんじゃないか?」
「そうですね。まだ総帥の方が2・3センチ高いですが。」
さすがに20才過ぎても伸びただけのことはあるな。

「これぐらい無いとドレスのラインが綺麗にならないので頑張って履きなれてください。」
「これで歩くの拷問だな。」
「世の中ハイヒールで走る人もいますよ。」
「尊敬するよ。」

本来はもっと出番があるはずなのをおれがかなり参っているので出番を減らしてもらっているがこれだけは欠かせない。
それでも結婚式も地味目に教会で挙げてそのまま短い旅行に行く予定になった。

出番が少なくなればぼろ出す危険も減るのでほっとした。転ぶぐらい愛嬌だろう。
一苦労してドレスを脱いで身軽になり一休み。

「大分顔色よくなりましたね。」
「そんなに酷かったか…。」
「食は細くなるし顔色悪くなるし。睡眠薬飲ませようかと思いましたし中止しようかどうか悩みました。」
苦笑いして
「後は本番の式だけだね。」

「煩く色々言ってくる人もいますが総帥が黙らせていますので。先日そんな大人しい女性をもらって何か役に立つのかと言われて愛しているからするんだと言っていましたね。結構見ものでした。」
「やっぱりそんなに文句出てるのか。」

「誰が相手でも文句は出ますよ。二人でいるのを見れば文句言わなくなると思います。」
「なんで?」
「それはもう総帥があなたを見る目を見れば一目瞭然。呆れるほど垂れ流しです。」
「そう?」

「それが無ければこんな作戦成り立ちませんので。詐欺をするには真実を混ぜなければ。」
「おれには着ぐるみの世界だけど。」
「その格好でおれとか言わないでください。着こなしはどうにかなったのに言葉遣いは直りませんでしたね。」
実は直す気が無かったからだが、それは内緒。丁寧な言い方なら出来るがそれ以上は勘弁。

「早く終わらせたいよ。」
「もう少しの辛抱です。旅行に行ってそのまま事故にあう手筈です。」
「旅行はどこへ行くんでしたっけ。」
「月です。」

「それは何しに行くのかわからないな…。」
「他のものがついでに色々仕事する予定です。総帥は大騒ぎの渦中に居る事になりますし。」
「やつはいつでも渦中の人だよ。今に始まったことじゃないから慣れてるだろう。」

おれは暫く雲隠れか。羽伸ばさせてくれないかなあ。
「教会にお客は?」
「司祭と保証人と友人として何人かとお目付け役で政府の要人が数人中に入ります後カメラも。事実上の顔見世ですね。」
「どんなのか見に来るんだな。」

怖いなあ。まあ、すぐ消えるから良いけど。
「後は外にどのくらい見物人が来るか。」
「みんな暇なのか?」

「総帥がどんな人と結婚するのか自分の目で見たいということでしょう。」
「見世物か…。」
「大丈夫です。綺麗に仕上がっています。ベールもしますし絶対ばれません。」
「だと良いんですが。」

「普段あれこれ言われても平気な顔しているくせに何故今回はそんなに嫌がるんですか?」
心底不思議そうに聞かれる。

「女装が嬉しい訳ないじゃないですか。」
着慣れたけどその自分の姿を見るのはどうしても抵抗がある。
「似合うのに。メイクの腕を信じてください。」
そうは言われてもねえ…。

「全然嬉しくない…。」
苦笑して
「もうすぐ終わりますから。」
「おれが切れてやつを殺さないうちに終わって欲しいね。」

本当早く終わって欲しい。あのにやけた顔見ると殴りたくて仕方ない。我ながら大分危ないぞ。


いよいよ明日という夜に
「独身最後の夜を二人で過ごそう。」
とか言うので

「甘い!おれは明日早いんだよ。化けるのに時間が掛かるんだから。肌も整えなきゃいけないから早く寝ないと怒られる。」
いじけるのを無理やり部屋から追い出す。

「気が済むまで飲んで来い。何なら帰ってこなくていいぞ。」
冗談抜きで化粧の乗りが悪いと怒られる。
「おやすみ。」



「出来ました。」
と言われて目を開ける。
「どうです?」
「花嫁に見えるね…。」

「もう相変わらず乗り悪いですね。」
朝も早くから起こされてあちこちいじられてメイクが終わった今のおれに何を言えと?メイクがひび入りそうに厚いのは気のせいか?

「皮膚呼吸できない…。」
「綺麗です。」
「本当に。」
「誰かこれ終わったら着る?」

「遠慮します。総帥が怖いですし。」
ああ、やつの事だから記念に取って置きたがるか。
「おれは見たくないけど。」
綺麗さっぱり記憶から消去して社会復帰したいぞ。

「そろそろ移動しませんと。」
「シャアは?」
「文句言いながら先に行きました。昨日はキッチンで管巻いていたそうです。」
「へー。」
付き合わされた人は良い迷惑だな。

警戒しながら教会に向かう。裾汚さないよう踏まないよう車の乗り降りも一苦労だ。
誰かに手伝ってもらわないといけない。控え室に行くとやつが司祭と打ち合わせをしていた。
人のこと見て絶句してる。

「何か言いたいことあれば言えば。」と言うと
「凄いな…。」何だよ。それ。

ナナイさんに向かって
「写真沢山撮っておいてくれ。」
とか言ってる…。

花婿は総帥の正装で真っ赤。こっちは真っ白。う〜ん。
「お饅頭…。」昔ミライさんのところで紅白の饅頭を見たような…。
お祝い事に出すとか言っていたな。中身なんだったっけ…。

「お腹空いたのか?」
「食事抜き…。」
終わって帰ると食べられる。早く終わらないかな…。

花婿は先に行って祭壇で司祭と一緒に待つ。化粧直して介添人に連れられてしずしず進む。足痛い…。

転ばないように歩くのに集中してるので周りは目に入ってない。ベール越しだし…。祭壇に着き式は滞りなく進む。
上の空で聞いていると誓いの台詞になった。

形だけとは言え誓うのは抵抗があるので一瞬間が空いてしまった。しぶしぶ小さな声で
「誓います。」
作品名:トッカータとフーガ 作家名:ぼの