【完全読み切り】夓
「…言えたら私は楽ですよって言ってみるテスト」
「馬鹿かお前」
「馬鹿じゃなきゃ今頃言ってるよ」
「お前なあ…」
「ところでユウキくんはどうするつもりなの?」
「ああ、あいつは俺たちに好きなことをして来いって」
「自分は何もしないのかなあ?」
「そりゃあデートくらいしたいからそんなこと言ってるんだろうが。現にそれ(空気)を読んだジュドさん(ユウキくんの相棒のラグラージの長老)は、どこにも行かないって言ってたし。まあ俺はリリー(私のキルリア)と出かけてくるから、留守は任せとくぞ」
「えー」
「大体出かけたきゃ自分から言いやがれ!俺に頼るな!」
「できないから苦労してんでしょうに」
「たく…あの男が恥ずかしがりやなの知っててやってんのか」
「そんなの私だって恥ずかしいもん」
「くっそー、人間って訳わかんねえ!!」
とりあえずシャモルドくんに口をきいてもらって、夏の間のお出かけは決まった。…何処かって言うと、それはカントー地方である。ハナダのデートスポットの北の岬とか、クチバ港とか、タマムシのレジャー施設とか。
ただ…何でか知らないけど、ユウキくんの気分が悪そうだ。体調的なものではないようだから、心なんだろうけど。もしかして、修行に行きたかったのかな…。
「って、顔青ざめてない!?」
「ああ…平気だよ」
「…ちょっと話があるんだけど」
「…何?」
「キミは、またなんか隠し事してない?」
「…してないって」
「してるでしょその返答」
「してないってば…」
「ふーん…ならいいけど」
そういいながら、彼の顔は懐疑的にもほどがあった。
彼は、私と完全にデートするわけじゃあない。やっぱり修行の日もあるし、あと、自分の友人に会ったりするらしい。…正直、それが女の子でもいいなと思った。自分が彼のガールフレンドに向いてないと言う気持ちは、だんだん強くなるばかりだ。
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正直、あの子が何も隠してないとか、あの顔でよく言うな、と思う。
僕はあのコと何年付き合っているんだと思っているんだ。全部お見通しなんだよ。
…ハルカちゃんはもしかして僕を完全に信用できないんだろうか。