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【動き出す時間】

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「火神くんと闘って欲しいんです。火神くんの夢は古代竜を倒すことで、ボクじゃ役者不足で、
黄瀬くんとは戦える状況ではなく、他の三人は戦えないので……」

「……コイツとか?」

「いきなり何、言ってるの!」

不躾な申し出に高尾は怒るが緑間は動じない。火神を品定めするように眼鏡越しに眺める。

「俺が相手をするのが一番というならばやってやろう。他の二人が動くのもそれはそれで騒がしい……お前のドラグーンが
強ければ良いが……」

「上等だ。何度も言うが俺は黒子のドラグーンじゃねえよ」

負けないという自信があるのか、緑間は勝負を簡単に受けた。火神は黒子のドラグーンであることを否定しているが、
本人が知らないだけなのでこのまま押し通す。古代竜の一人は動けないし残りの二人の居所は知れない。
緑間が相手をするのが一番手頃なのだ。

「ありがとうございます」

「準備が出来たら王城前に来い。先に行っている……母親に参っておけ」

「真ちゃん!!」

緑間は王城の方へと行く。王城は古都の最奥にあった。高尾が後を追う。
黒子は緑間と高尾を見送ると神殿の中へと入っていった。神殿の中には七大神の像と今は名を聞かない小神、動物王や
精霊王の像やレリーフがある。

「大きな国にある神殿よりも豪華だな。聖都には叶わないだろうが」

「曲がりなりともここは神聖王国です」

聖都は今の世界にある全ての神殿を統一する都市だ。
どの国にも属していないが重要度は高い。火神は聖都には訪れたことはないが、神殿の豪華さについては聞いたことがある。
厳かな雰囲気に包まれていた。黒子は飾られている竜の像の前に立つと目を閉じた。

「……母親って、竜王のことか」

「ボク達は竜王から産まれましたから」

信仰心が薄い火神でも動物王や七大神のことは知っている。動物の王は全ての動物の元になったとされている七柱だった。

「この都、お前の古里なんだよな」

「そうです」

「廃墟になったのは何でだ」

火神は黒子に都の話を教えて貰っていない。
居所の分かる古代竜が一人だけ居るとは言っていたが、都が黒子の故郷であることは黒子と緑間の会話で始めて知ったのだ。
今は人はほぼ居ないようなものだが、遙か昔に繁栄を極めていたことぐらい火神にも解る。
昔のことを記憶から呼び起こし彼は眼を細めた。

「……大戦争が起きたんです。神々も、動物の王も、精霊王も……ボク達も闘いました……都は戦いで滅びたんです」

「戦争か……何と闘ったんだ」

「邪神と人間です……詳しいことは緑間くんと戦い終わってから話しますので、これだけで」

邪神は火神も噂には聞いたことがある。この世界に災いを起こした神々だ。
黒子が神殿を出たので火神も出る。黒子は城に向かって歩き出す。火神が古代竜と闘うために黒子に案内を頼んだが、
主導権は黒子が持っていた。

「奥が城なんだな」

火神が黒子に話しかけるが黒子は無言のままただ城に向かっている。城門も白い。
くぐると、城の前に竜の姿となった緑間が待っていた。白い世界の中で緑色が栄える。黒子という古代竜を知る火神だが
緑間に圧倒されていた。すぐに気持ちを振り払い、倒すことに気持ちを向ける。

「……高尾くんは……」

「─────騒がしいので城の部屋に閉じ込めておいた。アイツは心配性なのだよ」

「自分が死ぬとか想ってねえのか」

「─────火神、と言ったな。その実力、試してやろう」

「偉そうだな」

緑間は自分が死ぬとは想っていないようだ。
上から見ている緑間に火神は憤慨すると背中の大剣を構える。黒子は戦いの影響がない場所まで離れる。
黒子は空を見上げる。

「七大神、神竜王……暇ならこの戦、見ていてください」

黒子の呟きが試合開始の合図となった。
動く気配を見せない緑間に火神は距離を詰めると、大剣を振り下ろす。緑間の鱗が切り裂かれたが傷一つ着いていない。
ダメージは当たっているように想われた。

「硬い……」

「─────こちらから行くぞ」

緑間が息を吸う。
火神は離れた。本来の姿となっている緑間は口から風を放つ。竜の吐息は剣を前に掲げて防御の構えを取っていた火神を吹き飛ばす。
黒子からしてみれば緑間は力をほんの少ししか出していなかった。古代竜は神々によって力を制限されているが、
その制限された力の中でも一端だけだ。

「甘く見てるんじゃねえぞ……」

火神は人間の姿の黄瀬と闘ったことがあるが、それと同じような感覚を緑間から得ている。
再び攻撃をしようとする火神だが緑間がまたブレスを吐いた。火神にブレスが当たり、再度、吹き飛ばされるが火神は風を
緑間に押し返すように大剣を横薙ぎに振るった。緑間が放った風が全て押し返される。
自分が放った風に緑間は身体を切り裂かれていた。

「─────力馬鹿であると思っていたが……力馬鹿だな」

「俺のスタイルなんでな!」

呆れるような緑間の声が掻き消される。火神が大剣で緑間の胴体を傷つけていた。鱗に大剣の刃が食い込む。
着けられた傷口に火神は先ほどよりも強く斬りつけた。
緑間が僅かに動く。

「─────様子見は終わりだ。出せる分の力を出してやる」

緑間は火神の力を認めた。攻撃に転じようとする火神に右手の爪を叩きつける。火神の身体に爪が食い込み、傷つけた。
そのまま火神を放り投げ、空に向かい、咆吼した。
咆吼は城を揺らす。火神が着けたはずの傷は癒えていた。

「そうじゃねえと面白くねえ……」

火神は持っている薬を飲む。傷が癒えたが気休めだ。黒子は黙って二人の戦いを眺める。僅かに竪琴の弦を弾いた。



高尾は城の扉を何度も叩く。
古都の王城は誰も掃除をしていないのもあってか埃だらけである。叫んでみても扉は開かない。
『ロンゴミアンコ』の刃を扉に叩きつけても扉に傷をつけられなかった。
緑間の魔力で施錠されている。
閉じ込められている部屋は城で客室として使われている部屋だ。

「……真ちゃんが啼いてる」

部屋の中にいても緑間の咆吼が聞こえた。
こうしてはいられない。古代竜は強いと言うことを高尾は知っているが不安なのだ。緑間が傷つくところは見たくない。
窓から逃げようにも城の三階部分に閉じ込められたので飛び降りたりすることは高尾には出来なかったし、
戦いの様子は見られない。
緑間を止めようとしたが彼は高尾を部屋に押し込んで戦いに行った。
部屋から出たい。

「部屋からオレは出たいんだ─────!」

─────────そうか?なら出してやる。

「誰……?」

聞いたことのない声が聞こえた。カチンッ、と言う音がする。高尾が扉の前に行き、ドアノブを捻ると扉は開いた。
開かなかった扉が開いた疑問はあったが高尾は『ロンゴミアンコ』を持つと扉から出て階段を下りて城の外へと行く。
城の前では血まみれの火神と四枚の翼のうち、一枚が折れ、下に垂れ下がっている緑間が居た。緑色の鱗は血に染まっている。
火神が斬りつけるが、緑間は避けもせずにわざと当たり、火神に風を撃ち込むが、火神は倒れない。
作品名:【動き出す時間】 作家名:高月翡翠