Memories of CGf
#3 「勇者への試練」
トカマク、と名乗った少女は、不安げにこちらを見ている。
長い亜麻色の髪を二つに分け、ゆったりとした服を着ている。
小柄で華奢なすがたはずいぶんと儚く見える。
アベル「この回廊の先に、王様という人がいるらしい。ここにいても仕方ないし、とにかく先に進もう」
お互いのことは、歩きながら話そう、と付け加えて彼女を促す。
彼女はこくりとうなずいて、歩き出した。
そうはいったものの、お互いに話せることはそう多くはなかった。
トカマクは、呼び出される前のことをよく覚えていないのだ、といった。
覚えているのは、自分の名前だけ。
言われてみれば、僕も自分のことはよく覚えていない。
おぼえているのは自分の名前だけ。
お互いに覚えていないのだから、何も話しようなんてなかった。
僕は、どこで、いったい、どんな人生を送っていたのだろう。
こんな見知らぬ異世界に呼び出されるようなことをしていたのだろうか。
わからない。
--と、ふわふわした人影のようなものが前に立ちはだかる。
アベル「ゲイツ卿の言っていたやつか!」
トカマク「きますよ!」
わからないことは悪いことばかりじゃない。
少なくとも今はあれこれ考えてどうにかなるものでもなさそうだし。
だったら、思い煩わなくていい分、楽というものだ。
僕は、影に向かって走り出した。
作品名:Memories of CGf 作家名:イハティーサ