Memories of CGf
#6 「勇者じゃなかった?!」
アーメイ「よくここまでたどり着いた勇者候補ッ! まずはほめてやる。試練の最後の相手はこのワシだ! 手加減はせぬから、覚悟してかかって来いッ!!」
相変わらずやかましいじいさんである。
いい年齢なのだから少し落ち着かないものか。
とはいえ侮ることは出来ない。
目の光には衰えたものは感じられなかったし
大剣を軽々と振り回す様に、全く老いはない。
よし、
アベル「トカマク、最後の試練だ、いく-」
よ、と、振り向いた先にトカマクはいない。
いや、いた。後方30メートル先。
トカマク「私、あの人が苦手なんです。ここで失礼します!!」
そういう彼女は、すでに涙声だ。
言うが早いか踵を返して走り去ってゆく。
アーメイ「カッカッカ! フラれてしまったな!」
余計なお世話である。
アーメイ「このワシ相手にひとりでは心もとなかろう。これをやる。使うがよい」
そういってアーメイが投げてよこしたのは両手におさまるくらいの青い卵だ。
手にした途端、卵にはひびが入り、中から青い肌をした小悪魔のようなものが飛び出した。
結構かわいい。
アーメイ「使い魔じゃ。おぬしを主と思って守ってくれよう。では行くぞ!」
アベル「ちょっと待てええ、まだ心の準備が!」
アーメイ「問答無用!!」
アーメイは一気呵成に襲い掛かってきた。
* * *
戦いはすぐに終わった。
自分でも何が起こったのかよく分からない。
ただ僕は不思議な力の高まりをそっと解放しただけだ。
ファンブルグに飛ばされてから、力がどんどんあふれてくるように感じていた。
力も、俊敏さも、魔力も、じわじわと高まっているのがわかる。
これが、勇者の力というやつなのだろうか。
気がつけば、アーメイは膝をついてあえいでいた。
アーメイ「さすがだな勇者候補。
……この先には王がおられる。そそうのないようにな」
アベル「今のは・・・いったい・・・?」
アーメイ「今の力はこの回廊をると使えなくなるじゃろう。
異世界より呼ばれしものは、かつていた世界の力をその身に宿してやってくるという・・・・・・ほんのわずかではあるがな。この回廊はその力を、さまざまな形に変えることができるのだ。それが先程の力の正体であろう。しかし、この回廊を出れば、その力を使うことはできなくなる。どのみち先程の戦いで、使い果たしてしまったろうがな」
アーメイ「能書きはいいから、さっさと王の下へ行くがよい。さあ行け、今行け、とっとと行け!!」
アーメイに追い立てられるように回廊を抜けると謁見の間だった。
王「勇者候補よ、よくぞ試練を終え、ここにたどり着いた。
その力、勇者のものかどうかためさせてもらいたい
王は言うが早いか、目を閉じて念じ始めた。
王の持つ錫がかすかに光り始める。
身体の内側を探られるような感覚・・・
王「!!!」
王の目が見開かれる
王「これは・・・・・・そなたは・・・
一瞬の緊張の後、そうつぶやいた王は、落胆の表情を浮かべた。
王「勇者ではないようじゃ」
な、なんだってえええええ!!
王「残念じゃ。そちにはすまぬが、元の世界に戻してやるすべもない。ファンブルグの市民権を授けるゆえ、そこにおるオスカーに詳しく聞くがよい」
王は、話はこれで終わりだという風に玉座に深く腰掛けた。
・・・・・・こうして、僕の異世界での暮らしが始まったのだった。
作品名:Memories of CGf 作家名:イハティーサ