そらにはしる
しかしブライトのやつ、お持ち帰りされるなよとか、何のことだよ。
敵を欺くためにはまず味方から。仕事もたまっていたので一週間ほど艦にこもりきりですごした。OSも組み立て始めないといけないし。
それでもまだ、狙われているのが判る。元気だな〜。人手余っているんだろうか、羨ましい。
も少し人手と予算がほしいぞ。できれば時間も。
ドックでブライトに書類を手渡しながら明日の予定を打ち合わせる。
「で?アナハイムで組み立て中のガンダムを見せればいいんだな?説明も必要なのか?ファンネルは?」
「だから!お前が行かなくても、誰か他のものを行かせるといっているだろうが!」
声をひそめてブライトが怒鳴る。
「どのみち調整が必要だから俺が行かなきゃしょうがないだろう?俺の機体だし。」
「まだいるんだろう!危険なことはやめろ!チエーンで充分だ!実際お前が説明するより彼女にしてもらった方が余計な警戒をもたれないはずだ。」
「相手は俺を名指ししているんじゃないのか?伝説のNTをみたいんだろう?」
「なにやら怪しげな噂がでているらしいな。ファンネルの出力がどうだとか…ああ?お前まさか!」
「俺がやったのは最初の噂だけだぞ?連邦のMSの性能で敵にかなうのかどうかと、データを正確な数値で出してシミュレーションも加えてみた。」
「どのデータだ?軍事機密に触れないんだろうな。」
「一年戦争のころの俺の数値と予想されているガンダムの性能で、シュミレーションしただけ。マニアな連中が予想しているνガンダムの性能って面白いよ?皆夢見ているよな〜。」にっこり。
「怖いから笑いながら怒るのやめろ…。わかった、行ってこい。頼むから無茶するなよ。」
「ありがと 艦長。」にっこり。
「だからやめろって…。」はあ〜と溜息を吐く。
なにもそんなに溜息つかなくてもいいじゃないか。と言うと、お前はほんとわがままだよと笑われた。
結局チエーンをつれてアナハイムへ向かった。
アナハイムエレクトロニクスは巨大軍需産業だ。もちろんどこにでも売る。商人の鑑だね。ま俺が直接会うのは、技術者だから気にしても仕方ない。
技術者との打ち合わせを終えて、工場に向かう。
それにしてもどちらかと言えば軍よりこっちに勤めたかったかな。研究できるし、お金ありそうだし…何か俺最近お金のことばかり考えているかも…MSは金食い虫だからな〜。
組み立て現場は研究施設とは別ブロックだが入り口からは遠い。足場を組んだなかにνガンダムのシルエットが浮かぶ。まだ骨組みだけだな。
「アムロこっちです。」コクピットの高さからチエーンが声をかけてきた。
「ああ。」
「外はほぼできています。組み立てるだけで。肝心のコクピットがまだ、」
「見せてくれる?」
「はい。どうぞ。」
丸い外枠とシートが組み込まれているだけかと思ったが、一応モニターもついている。
シートに着いてみる。
「いい感じだ。で、どこの部分の材料が問題なんだい?」
「ファンネルのためのサイコミュシステムです。期待した反応が得られなくて。」
「それはもう少し様子を見よう。動かしてみればもっと違う反応が出るかも知れないし。要は機能すればいいんだ。後はどうにかするよ。ものは使いようだからね。それよりお偉いさんに説明は全部任せていいかな。ちょっと頭痛がして。」
「大丈夫ですか?医務室いきますか?それともお薬もらってきましょうか?」
チエーンが心配そうに覗き込む。
「大丈夫、査察が終わったら医務室行くよ。システムのデータみせてくれる?」
「はい、ここのところの数値が上がらないんです、原因がわからなくて。」
「う〜ん、根本的に考え直したほうがいいのかな〜。」
設計しなおし?時間無いのに嫌かも…う〜ん。
「アムロ大尉、査察官がお見えになりました。」
「ああ 降りよう。」アナハイムの幹部と護衛をつれって入ってくるのが見える。
内心面倒くさいと思いながら挨拶をしようと近づくと、ぞわっと空気の動きを感じる。
「チエーン!伏せろ!」入り口から銃口が覗いている。
とっさに一行から離れて物陰にむかって走ると案の定こっちをねらって撃ってきた。動くものを撃ったのかとも思うが査察官もチエーン無事だ。
いるのは判っていたが、こんな時に撃ってくるとは…。?二人?いや三人か…。
「チエーン、保安部に連絡、査察官をお守りしろ。」
「アムロ大尉!無茶はやめてください!」
無茶と言われても狙われているのは多分俺だから、離れないと。
「大丈夫だ、反対側に行くだけだから後頼む。」
こっちは拳銃ぐらいしか持ってないし。警報が鳴り響き、ライトが割れて、降ってくる。直にアナハイムの保安部の連中が来るだろうがこんなところでマシンガンなんて兆弾が…。げ!やっぱり爆弾取り付ける気だな…撃つしかないか…。
一人…、二人…手や足にあたったようだが…遮蔽物が多すぎるし爆弾に当たっても困る。
あ!逃げた。
「まて!」と言いながら、ドアから外の様子をうかがう。どうやら保安部が来たようだ。
「ご無事ですか。」
「とりあえず査察官を保護してください。チエーン、君も行って、俺は爆弾取り付けられていないかチエックするから。」
「でも大尉。お怪我を。」
とハンカチをあててくる。
「?ああ 気がつかなかった、兆弾が掠ったんだろう。」
あごのところを拭う。
「ともかく行って。とりあえずこのブロックはしばらく閉鎖を。逃げ残っているのは任せます。」
手分けして爆弾のチエックをしてもらうと5・6個出てきた。あの時間でよくそんなに付けたな…。プロか…。
処理と分析を頼む。大したものは出てこないだろう。みたところ普通の爆弾だ。
あ〜疲れた…お偉いさんの相手をしなくて済むのは嬉しいけど、生身のアクションは苦手だ。なんか飲み物さがしてこ。
通路をうろうろしていると、足音が近づいてくる。あ〜もう動くの面倒…黒ずくめで派手だな〜。とぼんやり見てしまう。がしっと腕をとられる。
腰の拳銃を取られたが、どのみち弾は補充してない。しかしさすがに手の早い。
「…のど渇いているんだけど、何か飲ませてくれるのか?」
豪勢な金髪だ。なんでこんな目立つやつが見つからないのかね〜。
ふっと笑ってひっぱられる
「こちらに。飲み物を用意させよう。」
手近な部屋に連れて行かれる。高そうな装飾だ。こんな部屋もあつたんだな。疲れているので好きに座らせてもらう。
「で?なに?忙しいんだけど。あなたのおかげで。」
「アムロ。」
「なに。」
「飲み物は何が良いのだ?」
「日本茶にして。」
ぼーっと座ってしまう。
「疲れているようだな。」
誰のせいだと思っている…。じろっと見てしまう。
「…おかげさまで夜中にたたき起こされたり、狙撃されたり、刺激的な毎日を過ごさせて頂いています。なんかお礼しようか?」
につこり。
苦笑いを浮かべながら
「久しぶりにあつたのだから、そう突っかかるな。」
とか言う。ムカっとしたが、ブライトとの話しを思い出して振ってみた。
「あ、そうだこないだブライトとの話題に出たんだけど、俺たちってまともに話したことあったっけ?」
「…話し合いぐらいしただろう。」