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デジキャラット・シンフォニー

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「昔はどこでもあった売り方だったのだが・・・」
すると叩き売りのおじさんがやってきた。
「懐かしかったねえ、あの頃は」
「昔からやっていたんですか?」
「うん、今からおよそ100年前、台湾から大量のバナナがこの門司の港に陸揚げされたが、当時は輸送中にバナナが蒸れて熟れてしまって売り物にならないものも多かったんだ。そこで門司の商人たちが考え出したのが「バナナの叩き売り」だったんだ。
船から降ろしたバナナをその場で売りさばいてしまおうというわけだ。栄養満点のバナナを安く大量に買えるから叩き売りは大繁盛したんだ。」
「あのころの門司港はそりゃ活気があってにぎやかだったねえ」
「アキハバラの空襲に始まり、今は日本もこの有様だ」
「なんとかならんのかねえ・・・」
その時筋の通った声が響いた。
「こら!平田!」
聞き覚えのある声である、南風泊市場の尾崎先生である。
「わしはお前に教えたこと忘れているわけじゃないだろう!35年前、東京湾に浮かぶ船の上でわしはなんと言ったか覚えているか?」
そういうと尾崎先生は一枚の旗を取り出した。
「これを忘れたとは言わせん!」

昭和34年9月26日、相模湾で訓練をする一隻の船があった。
「尾崎教授!大変です!」
「どうした、平田君!」
「台風15号が日本に接近しつつあります!すぐ訓練を中止して港に入りましょう!」
「それでは晴海へ戻るとしよう」
「ちょっと待ってください!江ノ島へ一時寄港するとかの対策は取れないのですか?」
「晴海へ帰る」
「しかし、ここからでは3時間かかります。台風15号は既に潮岬の南に迫っています。
すでに外海はしけになっています。それでも帰れというのですか?」
しかし尾崎教授は晴海行きを命じた。
「台風だけはなんともならないが、尾崎教授はそれ以上だ」
やがて海は大嵐になり船は大きく揺れたが、尾崎教授は晴海へ戻れとしか言わなかった。船員たちはみな「なんとかならないのか」とつぶやくばかりだった。
「よく聞け!負けたらいかんのは逆境にではなく自分にだ!何とかならないかとつぶやくよりも何とかしようという気持ちが明日を作るんだ!」
平田は思い出した。東大に入ったとき最初に受けた授業に路面電車の事故で遅刻したときのことだった。事故で遅刻したというと尾崎先生からこっぴどくしかられた。