デジキャラット・シンフォニー
「総参謀東京大学教授平田道明」
「おかしい、静か過ぎる」
やがて尾崎先生がやってきた。
「おい、平田」
「尾崎先生、ちと町が静か過ぎやしませんか」
「あれを見てみろ」
見ると、軍の兵士たちが全員刀や銃器を地面に突き刺し、黙って立っている。
「奴ら、戦う気はないということだ」
「まさか、作戦ではないでしょう?」
「それにしては黙って市内あちこち通す」
「申し上げます!ナムポ守備隊の隊長を捕らえました」
「尾崎先生、隊長の取調べは終わりました?」
「ああ」
「どうしたんですか?えらい浮かない顔をして?」
「聞いてみると語るも涙、聞くも涙の話でな」
「えっ?」
「国民が飢餓で苦しんでいるのに自分ひとりだけ酒と女に入り浸っている独裁者にはとてもついていけない。兵士たちは世の中が変わるほうがいいからナムポを私らに差し出して町の平和を保つほうがいいという意見が大勢だった。自分も思ったのだが、今になって独裁者のために命をかけて戦えといわれても誰もその気にならないだろう、
だとさ」
「来るべきところまで来ていたんですね」
「部下の中にはアキハバラを襲うのに加担した兵士もいたそうだ。なんでもアキハバラは日本で一番豊かな街だからそこを襲って食料を調達しようとしたらしい」
「そいつらバカにょ、アキハバラでおいしいお店なんかあるわけないにょ」
「スーパーも倉庫もない町を襲って、どうやって食べ物を手に入れるつもりぴょ!」
「そいつら電子部品でも食べるのかにゅ?」
「人間追い詰められると何をするか分からないからね。食料調達だったら飛行機より
船に乗って横浜、名古屋、門司などで同時多発テロを仕掛けたほうが早い!」
「もはやお金では食べ物を買えないほど、この国では食べ物がないからね」
「ぴよこたちのごはんはどうするのかぴょ?」
「心配ない、船は大きいぞ!」
「私たちの乗ってきた船には全員の3か月分の食料が積んである。それに名古屋から大量のお菓子を積んでおいた。しばらくはこれで何とかする」
次の日、平田先生は車に乗って市内をあちこち巡りながらお菓子を投げていた。
「名古屋の習慣だ」
それに群がる子供たちを見て、でじこはつぶやいた。
「父さま母さま・・・」
「でじこちゃん、遠く離れてさびしいのね」
作品名:デジキャラット・シンフォニー 作家名:細川智仁