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銀新/気まずい二人乗り/銀魂

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 手を洗って縁側に置かれた座布団に並んで腰をかける。部屋の時計を見るともう一時を過ぎていた。
「これ自由に使ってください」
 そう言っておさとは魔法瓶を急須の隣に置いた。
 盆の上には、受け皿にのせられた白い湯飲みに濃い緑茶がいれられている。新八と銀時がその湯飲みに手を伸ばすのを見ると、おさとはぺこりと頭をさげて奥に逃げるように入っていった。
「この部屋で夜は金持ちが庭見ながら宴会でもすんのかね」
 銀時が首を伸ばして後ろの和室を眺める。つられて新八も振り返った。
 八畳の部屋には床の間もあり鯉の掛軸がかけられている。その下の畳床には青磁の香炉と飾り皿がおかれ、違い棚には花の活けられた花瓶や壷が並んでいる。新八にはその良さはよくわからなかったが、きっと高価なものなのだろう。
「こんなすごい部屋の縁側で、僕ら…」
 持ってきた風呂敷から豆パンを取り出す。労働して疲れているというのに、わびしい食事だ。
「いや、この豆パンも結構いけるじゃねーか」
「あはは、そうですね」
 二人から乾いた笑いがこぼれた。
「あっ、あのっ、万事屋さんっ」
 奥へさがったかと思っていたおさとの声が後ろからかかる。
「あ……あの、も、もし、よかったら…カッカレー食べませんか。わ、私が作ったんです……っ」
「え……」
「あのっ、持ってきます!」
 振り返ったふたりに視線も合わせないまま、おさとは再び奥へ走っていく。その後ろ姿を見送りながら、新八はふっと微笑んだ。
「あー、こりゃ、確実だな」
「え?」
「ありゃもうお登勢だよ。だってカレーだもん。お登勢決定」
「なんでカレーでお登勢さんなんですかっ。ありがたいじゃないですか。僕たちこのところずっと豆パンですよ」
 銀時は豆パンにかじりついて、口をもぐもぐしながら音を立てて茶をすする。
「カレーはお登勢の得意料理だからな。今ごろ奥でプハーだよ」
「あんたどんだけお登勢さんのこと好きなんですか」
「好きなのは、おま…えーっと…お登勢のカレーだから。つーかよ、さっきお前に気ぃあるんじゃねぇかとか言ったけど、あれはやっぱり俺に気があるんだわ」
「うわ、出た。都合のいい方向転換」
「いや、だって。一度も目が合わねぇんだもん。あれは俺の大人の魅力に恥ずかしがってだな」
「でも中身お登勢さんなんでしょ」
「………」
 カレーが運ばれてきた。
 久しぶりのちゃんと料理に二人はうまいうまいと食べた。麦茶をコップにそそぎながら、おさとは恥ずかしそうに笑っていた。



 時間が過ぎると、庭に差し込む陽光の角度も違ってくる。今までずっと日陰ばかりだった作業する庭に日の当たるところが出てきた。
 背中に流れ込んでくる日差しのあたたかさを新八は感じていた。影に行くと、まだそこにうずくまっている冬の気配が肌を刺してくるが、季節が春に移ったことは疑いようがなかった。ひたすらに草を抜きながら、手をのばしたついでに見上げた新八の目に青い空がうつった。
 昼飯がすみ、仕事を再開してからもうどれくらい時間がたったのだろう。新八は息をつきながら立ち上がり、ずっと座りっぱなしで固まった体をのばす。両手をあげて背伸びをしながら、自分たちが草取りをしてきた背後を振り返る。
 お、と思った。作業をしているときは気づかなかったが、これから作業するところと、草取りが終わったところでは見栄えがまったく違った。作業に入る前から充分綺麗だと思っていた庭だったが、ちょっと岩の下の草を取るだけでこんなにも違うのかと新八は思う。
 その庭の草取りももう半分以上が終わっている。新八より少し先の岩をいじっている銀時に目を移す。ときどき無駄話をしながらも草取りを続けた。この様子だと予定通りに終わるだろう。
 もう一度、美しくなった苔庭を振り返って自分の仕事を実感すると、新八は作業に戻った。
 昼飯をもらった縁側の奥の部屋におさとの姿がみえる。新八の胸がどきりとはねた。
 おさとはどういうつもりなのか、気がつくとこっそり隠れるように自分たちを見ていた。声をかけるでもなく、恥ずかしげに、きらきらとした目で自分たちを見ているのだ。
 気があるのではないかと銀時に言われてから、新八もおさとが気になって仕方がない。おさとの視線に気づくたびやる気になって、銀時にからかわれ、弾む胸を沈めるようなことを言われる。
 自分で言い出したくせに、銀時は新八の恋路を邪魔したくてならないようだった。新八は少し残念に思う。自分が女にもてないからって僕まで付き合わせないで欲しいなと、新八は勝手に緩んでしまう頬を直しながらそう思った。
 全作業が終わったのは、傾いた太陽が朱をおびはじめた頃だった。
 草抜きをすべて終え、踏んでしまった苔を手で直した後、主人に確認させた。主人は仕事の丁寧さを喜んで、問題なく終わったことに笑顔になりながら、少し厚い封筒を差し出した。
「ご苦労様でした。私は店の準備がありますのでこれで失礼させていただきます。おさと、後はたのんだよ」
 主人は目を細めて頭を下げると店の奥に入っていく。
 その封筒を懐に入れて、おさとがすすめる縁側に二人は座った。